青の嬢王と勿忘草

咲月檸檬

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碧を愛した恋人達

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3)碧を愛した恋人達。



  あの話し合いから数日後。

私達は碧の恋人達と会う約束を取り付けた。

1日で3人に会う事にこだわっていた淏さんにその理由を聞いてみた、そしたら淏さんは言った。

《時間を開けずに会った方が、ちょっとした変化に気付けるかもしれないだろ》

あまり変わらないのでは…

でもまぁやってみよう‼︎

「3人に会う前に言わなきゃならない事があるんだ。」

淏さんは車を止めて深刻そうに言った。

「俺も咲乃と同じで、碧のしていた事は分からなかった。だから3人もどんな奴か分からない。もし危険な奴らだったら…」

淏さんは本当に心配性なんだな…

そして碧と一緒でとても、不器用な優しさ。

『淏さんが言いたいことは分かりますが、私はスバルくんとは会った事があります。』

「そうなのか俺はこれから会う、キョウ君にしか会った事がないな。」

『じゃ少なくとも2人は安心出来るんですね。』

「…そうだな。」

すると安心したのか淏さんは車を進ませた。



  私達は1人目のIT社長の【キョウさん】に会った。

キョウさんと碧はお互いの、家族に紹介し婚約までしていた。

「キョウさん!お待たせさせてしまい、すみません。」

見た目は不健康そうな、インドア男性って感じ。

なんか碧の好きなタイプでは無さそう…

「淏さん、ご無沙汰してます。今日はどのような要件ですか?」

「少し話を聞きたくて。あっ、紹介しますね。この子は碧の高校時代からの親友の咲乃ちゃんです。」

ちゃん?!

初対面から馴れ馴れしく呼び捨てだったから違和感が…

あっ!

挨拶しないと。

『初めまして。松岡咲乃です。今日はお会いできて光栄です。』

「初めまして。そんなに改まらなくていいですよ。」

意外と人当たりがいいのかも、見た目に似合わず。

「キョウさん、本題に入りますが私達は碧の事を調べてます。

「調べる?碧さんを殺した犯人は、捕まりましたはずでは?」

「はい、ただ俺は真犯人がいると思っています。」

淏さんがそう言うとキョウさんは真剣な表情になり私達に話してくれた。

「そうですか。淏さんは刑事ですから、そう言う感は正しいでしょう。私が碧さんと最後に会ったのは失踪する3ヶ月前で、

私はその後直ぐ仕事でLAに行きました。」

『3ヶ月前に会った時は見送りですか?』

「そうです。大学の授業があったのにわざわざ来てくれました。」

「そうなんですか。碧に変わった様子はありませんでしたか?」

すると少し困った顔をして話し始めた。

「前から淏さんに話そうか迷っていましたが、碧さんはお金に困っている様子でした。」

「と言うとそれはどう言う事ですか?」

「私にお金を3回ほど借りに来た事がありまして。」

「お金ですか…総額いくらになりますか?」

「えーっと…確か1回目が1年ほど前に30万で、2回目が7ヶ月前に50万、5ヶ月前に50万、総額130万ですね。」

「そんな大金短期間で何に使ったんだ?」

「最初は親御さんに頼れない事情が、あるのだと思っていました。でも金額も金額なので3回目の時に聞いたんですが、何も話してはくれませんでした。」

「そうですか。」

淏さん辛そう…

そりゃそうだよね…

碧の事を知ろうとすればするほど、碧を見失う…。

私は淏さんの手を机の下で握った

すると淏さんは握り返してくれた。

私達が黙っているとキョウさんが言った。

「私も碧さんが分からなくなりました。でも真犯人は知りたいし、許せない。協力出来ることはなんでもします。」

「…ありがとうございます。何か情報がありましたら、知らせて下さい。あと、お金は俺が責任を持って返します。」

「いえ!お金は大丈夫です。借用書などもないので。」

「でも…」

「そのかわり真犯人必ず捕まえて下さい。」

「もちろんです。ありがとうございます。」

『最後に1ついいですか?』

私が急に声をかけたので、2人は少し驚いていました。

「なんですか?」

『碧の好きな花を知ってますか?』

「花ですか?あまり送った事が無いのでわかりませんが初対面の時シダレザクラが好きと言っていたような…」

『そうですか、ありがとうございます』

シダレザクラか…

確か花言葉は《ごまかし》

そして私達はキョウさんと別れ次の待ち合わせ場所に向かった。

「どうして花を聞いたの?」

『碧は花が好きでその中でも1番好きなのが遺体の周りにもあった勿忘草。でも碧は初対面の人を、花で表す癖がある。しか

もそれを自分の好きな花として、伝える事が多いんだ。だから最後にみんなに聞いて行こうかと…』

「そういえばそんな変な癖があったな。」

『ちなみに私は白い薔薇でした。』

「白い薔薇の花言葉は?」

『《私はあなたにふさわしい•深い尊敬》。淏さんは?』

「なるほど。俺はカモミール。花言葉は《逆境に耐える》だったかな?」

『そうなんだ』

淏さんにはふさわしいかも…。



  私達は2人目の【スバルくん】に会いに行った。

スバルくんは人当たりの良い、サッカーが出来る人気者ってイメージだが女にダラがない、と有名だった。

碧がなんでそんな人と付き合っているのか、私は理解出来なかったがスバルくんは碧にメロメロだったからかもしれない
と、自分を納得させていた。

待ちあわせ時間から30分遅れで、スバルくんは私達が待つカフェに現れた。

淏さんは警戒している様子だった。

「咲乃!遅れてごめんな!あれ?そちらは?」

スバルくんは淏さんを見て言った。

『こちらは碧のお兄さんの淏さんだよ!碧の話を淏さんも聞きたいみたい。』

「そうなんだ、初めまして。碧とお付き合いさせていただいていた、スバルです。時間に遅れてすみません。サークルが長引
いてしまって。」

「初めまして。」

淏さん機嫌が悪い。

時間に遅れたからかもしれないなぁ。

『私と淏さんは真犯人を探してるんだ。』

「真犯人?捕まった奴は違うのか?』

「碧と最後に会ったのはいつだ?」

「え?俺を疑ってる?」

『違うの!これはみんなに聞いてるんだ!』

「…そうか。俺はあの日サークルの飲み会で朝まで飲んでた。」

『そうなんだ。最後に碧に会ったのはいつ?』

「失踪する、昼を一緒に食べてた。本当は飲み会も誘ったんだけど、咲乃と会うって言ってたよ」

え?

私と?

そんな約束した覚え無いのに。

私が驚いていると、スバルくんは続けた。

「本当に怪しいのはお前だろ?」

『私はそんな約束してない。 』

「そんなの誰が信じるんだよ。俺と俺の友達が碧の口から聞いてるんだよ」

『でも!』

「いい加減にしろよ?」

淏さんはスバルくんを睨みつけた。

「俺は本当のことを…」

「だったらなんでその事を警察に言わないんだよ?本当は分かってるんだろ?ただの言い訳
だったって!」

淏さんはスバルくんに、摑みかかる勢いで怒鳴った。

「…。」

『最後に聞きたい事がある。碧の好きな花知ってる?』

「花…確かオダマキだったかな?」

オダマキの花言葉は《愚か》。

ある意味スバルくんにぴったりだ。

『そう!ありがとう。』

私達はそそくさと退散した。

スバルくんから離れると私は不安に駆られた。

碧は死ぬ日私に会うと言っていたし。

もしその話を警察が信じたら…

私が考えていると淏さんが、私を優しく抱きしめた。

「お前には俺がいる、俺がお前を守る。だから安心しろ。」

淏さんの胸の中は暖かく、安心できた。

大丈夫。

私にはこの人が居る。

側に居るだけで強くなれる、安心出来る場所。

『ありがとう。淏さんがいれば何も怖くない。』

そして私達は3人目の恋人ミドリ先生の元へ。



  3人目の【ミドリさん】会いに大学の美術室へ。

ミドリ先生は私は好きだが、何故か評判は悪い。

今でも信じられない。

碧と付き合っていたなんて…。

『ミドリ先生?』

「あら、松岡さん?今日はどうしたの?」

『先生に聞きたい事があって、こちらは碧のお兄さんの淏さんです。』

「初めまして、碧がお世話になりました。」

「碧さんの?初めまして、私は碧さんの美術の教師をしております、この度はお悔やみ申し上げます。」

「ありがとうございます。」

『先生、私達は碧との事を聞きたくて。』

私がこの話を始めると先生の顔が曇った。

碧と先生の秘密…

言いたくないのは当たり前だ。

「俺たちは碧を殺した真犯人を探してます。そのために碧のスマホを見て、碧と先生の関係を知りました。」

先生は呆然としていましたが、震えるような声で私達に話してくれた。

「私と碧さんの交際を始めたのは、碧さんがミスコン優勝の少し前の事だった。私が同性愛者だとどこからか知った碧さん
が私に言い寄ってきたの。最初は興味本意だけだったようだけど、何回か私と体を重ねるにあたって変わったようだった。
いつしか私達は本気で愛し合う恋人同士になったの。」

「でも碧には、」

「知ってます。それでも良かった。私は彼女が欲しかったから。でも辛かった、碧が死んで私は何回も考えていたの。私が碧を愛した事は間違っていたのかな?」

そして彼女は、泣き崩れた。

大粒の涙が木星の床に水玉模様を作っていた。

私はそんな先生に駆け寄った。

『先生の愛は間違ってないんです。もっと自身を持って下さい‼︎先生はそんなにも純粋に人を愛せるじゃないですか。』

「ありがとう。」

「ミドリ先生、碧はあなたに好きな花を教えましたか?」

「花…月下美人をよく買って来てくれたわ。」

『そうなんですか。』

月下美人の花言葉は《はかない美•はかない恋》碧はどんな想いを込めて先生に伝えたのだろう。

先生が落ち着いたので、私達は帰る事にした。



  今日は色々分かった事がある。

碧はお金に困っていた。

碧は失踪する前、私に会うと言っていた。

碧は同性愛者かもしれない。

「送るよ。もう暗いし。」

『ありがとうございます。今日は色々ありましたね。』

「少し疲れたろ?」

『うん、でも分かったこともたくさんあります。』

「そうだな。次は友人グループだな。」

『そうですね。少し気が重いです。』

「関わりはあったのか?」

『あまり…あの3人は私を良くは思ってないというのは、噂で聞いたことはありました。』

「なるほど、女の友情は分からないもんだな」

『そうですね…』

「行かなくてもいいんだぞ?」

『いえ、直接聞きたい事もありますから。』

「そうか…。」

    



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