青の嬢王と勿忘草

咲月檸檬

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真犯人、前に進む私達

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12)真犯人。前を進む私達。



  私達はあの衝撃的な出来事に動揺していたが、家に無事にたどり着いた。

家に着き車を降りると家の中から喧嘩してる声が聞こえた。

未来と樹さんが何か言い合いをしていた。

「なんか俺あの2人の事大好きだ。」

淏は少し笑みを浮かべていたので、私も安心して思わず笑ってしまった。

『なんか安心しました。私達の戦いはまだ終わってないけど今は安心してもいいんですよね?』

「うん。中に入ろう。そろそろ止めないと未来ちゃんの声が潰れそうだ。」

私と淏は手を繋いで家の中に入った。

「私にキスしたわよね?」

「してもいいだろ!付き合ってるんだから。」

え?

いつの間にあの2人は付き合っていたんだ?

淏の方を見ると必死に笑いを堪えていた。

淏が笑ってると安心できる。

こんな風にずっと笑っていてほしい。

「おーい、何揉めてるんだよ!」

淏が止めに入った。

「淏! おかえり。未来と昨日付き合ったから寝起きにキスしたらこんなに怒ってるんだよ!」

『未来は寝起きが悪いんです。起きてから3時間ぐらいは機嫌が悪い。』

「とにかく今あった出来事を聞いてくれ。」

淏は無理やり話を変えておばさんの事を話し始めた。

2人とも最初は理解できない感じだった。

でも最後のおばさんの話しをしたらますます混乱している様子だった。

淏の話が終わるとしばらくして樹さんが言った。

「取りあえず2人が無事で良かったよ。」

「そうだね。でもこれからどうするの?」

『おじさんに会いたい。その方が真実を知れる気がする。』

あの様子のおばさんを信じられない。

「行くなら4人で行こう。じゃないと心配で…また追いかけられたりしたら…。」

ピンポーン

するとインターホンが鳴った。

モニターを見るとそこにはおじさんがいた。

『沖縄にいるはずなのに。』

「取りあえず俺と淏で対応する。2人は寝室で隠れていてくれ。」

「分かった。」

私と未来は寝室に行った。

そして淏と樹さんでおじさんをリビングに招いた。

私達はドアに聞き耳をたてていた。

「母さんから聞いたよ。大丈夫か?」

「大丈夫かって?刺されそうになったんだ!咲乃まで狙われたんだ。」

「淏。少し落ち着けよ。」

「すまない。」

「そんな言葉だけで許せる訳がないだろう!」

「じゃどうすればいいんだ!どうしたら許してくれるんだ?」

「真実を教えてくれ!そしたら許せるかもしれない…。」

「分かった。全て話すよ。私は昔浮気をしたんだ。その相手は松岡さんじゃないんだ、母さんは勝手に勘違いをして家に呼び彼女を刺したんだ。でも私は自首させる気も起きなかった。」

「なんで母さんは勘違いなんてしたんだ。」

「松岡さんは初恋の人なんだ。母さんはそれを知って勘違いしたんだと思う。そして精神的にもたなくなって今は精神科に通ってるよ。」

「おばさんが碧さんも殺したんですか?」

「そうだ。2人で食事をしていたら碧から連絡が来て碧は警察に全て話すと言っていたらしい。それで母さんはまたおかしくなって碧がいる大学に行ったんだ…。」

「それで碧にあんな事を…。」

「本当にすまない。碧にも申し訳ないと思っている。これからはお前達に協力する。母さんに罪を償わせたい。」

「わかった。父さんが警察に自首すれば母さんも逮捕される。」

「分かった。自首するよ。」

私には今の会話を聞いて疑問が1つ出てきた。

なんで碧は私に会いに行くとあの大学にいったのか?

未来にそれを言うと未来は言った。

「それは警察が調べてくれる。もう戦いは終わるよ。」

そしておじさんと淏と樹さんはそのまま警察に行った。

その後おばさんは私の家の前で発見されて、そのまま逮捕された。

どうやら私の事を包丁持って待ち伏せしていた。

その時おばさんはこうつぶやいていた。

《私の愛している男はみんな松岡家の女の虜だ。》

私はそれを聞いた時恐怖に襲われて、倒れそうになると淏と未来と樹さんが支えてくれた。

この3人がいるだけで私は強くなれた。

お父さんの事は警察でおじさんが話してくれた。

お父さんはお母さんの事件の真相にたどり着き自首するように求めたお父さんにおじさんがお父さんの拳銃を奪い撃った事を認めた。

私に脅しの花束などを置いていたのもおじさんが仕組んだ事だった。

事件を調べられて全てが明るみに出るのを恐れての脅迫だったらしい。

お父さんが私に嘘をついたのは真実を話して私に危ない目に合わせない為だろうと私は思った。

私達の戦いは思いがけない真実で終わった。

この事を忘れない、忘れられない。

お母さんやお父さん、それに大親友の碧の事を思うと思い出してしまうんだ。

そのことからは逃れられない。



  あれから7年後。

私と未来とそれから樹さんまでついて来て3人で探偵事務所を始めた。

淏はあれから連絡も取れなくて音信不通だった。

でも私は待ち続けた。

いつかきっと戻ってくる…。

こうして私は自分の道を歩き続ければきっとまた会える。

「咲乃!浮気調査の件無実だった。」

『えー!あの人浮気してないの?!本人はしてるって私に言ったのに…。』

「咲乃ちゃんの事口説いてたんじゃないの?」

「なるほど~それはあるかもね~。」

『からかうのはやめてよ~。』

私達は思った以上にうまくいっている。

毎日がとても楽しい!!

『明日お父さんのお墓参り行くよね?』

「うん。」

「俺は人と会ってから向かうから、現地集合でいいかな?」

『忙しいなら無理しなくてもいいんですよ?』

「代わりに雑用引き受けてもらえるなら。」

「未来…お前なぁ。」

未来と樹さんは凄くうまくいっていて、もうすぐ結婚するそうだ…。

とても嬉しいことばかり。

未来のお腹には樹さんの子供がいる。

嬉しい事や幸せな事があると淏に話したいと思う。

会いたい…早く淏に会いたい…。

今でもこんなにも愛してる。

  『樹さん遅いねぇ~』

私と未来はお墓参りの為に樹さんを待っていた。

毎年3人でお墓参りに行っている。

「あの人は時計を見ないのがポリシーだから。」

『何それ~。』

そんな事話してると樹さんの車が来た。

『あ!来た。』

未来は車を指差した。

「遅い~。アイス奢ってもらおう!」

『賛成!』

車から樹さんが降りて来た。

そしてもう1人タバコをくわえながら降りて来た。

『淏…。』

「どういうこと?淏さんだ!」

すると2人はこっちに向かってくる。

『淏!』

私はこれ以上待っていられなくなって淏に駆け寄り抱きついた。

淏は受け止めてくれて、耳元で言った。

《ずっと会いたかった。》

淏は何も変わってない、もちろん腕の中の温もりや私達の愛も。

未来は涙ぐんでいて、そんな未来を樹さんが肩を抱いて支えていた。

私達はそれからお墓参りに行った。

そこで淏は長く手を合わせていた。

きっとお母さんもお父さんも罪を犯してしまった淏と碧両親を許しているはず…。

『人間は弱い生き物です。弱いからこそ罪を犯すと私は思う。そんな人達もやり直すチャンスを与えてあげればきちんと償える。だから手を差し伸べてあげたいんだ。取締や捕まえることでは無く………。お父さんがお母さんの仏壇の前で毎朝言っていた言葉です。』

「強いおじさんらしいね。」

未来は誇らしい顔で言っていた。

「強い?」

樹さんが私に訪ねた。

『少し…いや、凄く強くないとそんな事は言えないかと思います。少なくとも私はお父さんが死ぬまで私はそんな風には中々思えなかったかもしれません。』

「俺も強くなるよ。少しずつでも許して父さんや母さんに手を差し伸べたいんだ。きっと碧もそれを望んでる。」

私もそう思う…。

碧はきっと望んでます。

太陽の光が眩しい空の下、私達はゆっくり話しをする為に事務所に向かった。

『淏は今まで何してたの?』

私が聞くと、淏は言った。

「母さんと父さんを見守っていたよ。後は警察を辞めてラスベガスに行ってた。碧が行きたがっていた場所だ。」

『なんで私に連絡してくれなかったの?』

「母さん達が捕まって、真実を改めて知って母さん達を許せなかった。碧の事も咲乃の両親の事も。咲乃も俺と同じように思っていたらと考えると怖くて連絡出来なかった。」

『そんな事…』

「分かってる。樹に言われたんだ。《咲乃は俺を信じて待ってる》って。それを聞いたら会いたい気持ちが抑えられなくなって、会いに行く勇気が出たんだ…。自分勝手でごめん。」

淏なりに自分と戦ってたんだ…。

信じて待っていてよかった。

『謝らないで、そしてもう離れないで。ずっとそばにいて下さい。私淏の事凄く…凄く好きみたい。』

私は耐えられず涙が溢れた。

「もう離さない。そばにいる。」

樹さんは淏の背中を叩き。

「良かったな!」

「やっと結ばれたって感じだね。」

未来もそう言って喜んでくれた。

『私の事務所に来てくれますか?』

「いいのか?」

『信頼できる仲間が増えると考えると益々楽しくなりそう。』

こうして私達4人は正式な仲間になった。

きっとまだまだ楽しい事も、辛い事も、幸せな事も、いっぱいあるだろうけど…。

この大きな空の下、胸を張って前を向いて歩いて行こう。

私には素晴らしい仲間がいる。

私達ならきっと大丈夫。

なんかそんな気しかしないんだ。



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