青の嬢王と勿忘草

咲月檸檬

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碧の日記

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  私と未来は淏の家に行った。

何故か分からないけど、そんな気がしたんだ。

「連絡すれば良かったのに。」

『絶対いる!推理をしたから!』

私が自身に満ち溢れたかのように言うと、未来は呆れたように言った。

「推理なんて辞めとけ、どうせ当たらない。」

『え?それがこれから一緒に探偵事務所を開く人に言う言葉?』

「なんていうか咲乃の推理とかじゃなくて、行動力に私は期待している。」

『行動力?』

ふふと少し笑うと未来は淏の家のインターホンを鳴らした。

中から樹さんが白いフリルの付いたエプロンをして出てきた。

私と未来の口は空いてしまったが、なんと言葉を発したらいいのか分からず、ただ樹さんを見つめていると中から淏が出て来た。

「樹!そんな変な格好で出るなよ。近所の人に見られたらどうするんだ?おお!2人とも上がっていいよ!こいつはほっとけ、バカに構ってる暇はない。」

えーこのギャグの様な格好をほっとくんですか?

「そうですね。バカにつける薬はないですし。」

そんな…まぁしょうがないかな…。

『樹さん似合ってますよ。さぁそんな恥ずかしい姿誰かに見られたら大変です。中に入りましょう。』

「それは褒めてるの?それとも貶してるの?」

みんなが中に入ると樹さんが複雑な顔をしながらドアを閉めた。

『お二人とも今回の父のことありがとうございます。私達父に言われた通り幸せになります。』

2人は《頑張れ》と応援してくれた。

「それで碧の日記は読んだんですか?」

「それがまだ俺たちも読んでないんだ。ダイスケっていただろ?そいつを殺した犯人が自首したらしくて今まで警察にいた。樹はフラワークラブの2人にパソコンが見つかった事を知らせて来た。今から調べるとこだったんだが、未来ちゃんと樹に任せてもいいか?」

「分かりました。パソコンの為に私がいます。任せて下さい。」

こうして二手に別れた。

『ダイスケさんを殺した犯人って?』

「ダイスケと個人的に金銭トラブルがあった高校の頃の先輩らしい。」

『碧とは関係ないんですね。』

「まぁ重要なのはダイスケが碧を殺したかもってことなんだ。」

『そうですね。』

なんか淏痩せた気がする。

「それよりもう本当に大丈夫か?」

『はい。未来とこれからの話もしましたし、心配かけてごめんなさい。』

「それはいいんだけど…。碧の日記を読もうか。」

私と淏は1冊目の日記を手に取り、ページをめくった。




  10月18日

今日私は両親の秘密を知ってしまった。

お母さんの悲鳴が聞こえて私は深夜に目を覚ました。

私は悲鳴が聞こえたリビングに行くと、お母さんとお父さんと知らない女の人がいた。

知らない女の人は血を流して倒れていて、意識がない感じだった。

私が2人に声をかけるとお母さんとお父さんは驚いていた

その後お母さんが私を部屋に連れて行き、この事を忘れて誰にも言わないでと言われた。

でもそんな事出来ないから、日記に残しておくことにする。

いつかお母さんとお父さんに罪を償ってもらう為に。

私のお父さんとお母さんは人殺しだ。

10月19日

朝になったら何事もなかった様にいつもの朝だった。

お兄ちゃんは何も知らない…

言いたいけどお兄ちゃんも私がうけたショックをうけると思うと何も出来なかった。

私はなにからすればいいのか分からない。

とりあえず昨日の女の人の顔を忘れない様に似顔絵を描くことにする。



  2日間の日記を読んだだけで淏の顔色は青ざめていた。

「もしこれが事実なら父さんと母さんは誰をなんで…。」

『続きを読んで見ましょう。』

私達は碧が書いた似顔絵を見た。

そこには私のお母さんが描かれていた。

『これ…私のお母さんに似てる…。』

「え?」

私は固まった…

私のお母さんは亡くなる前に顔に火傷をしていた。

その火傷まできちんと描かれていた。

『この火傷が証拠です。私のお母さんにもこの火傷が…』

「じゃ父さんと母さんが殺した人って…。」

『犯罪者に殺されてと聞いていたのに…とにかく続きを読みましょう。』

私たちはまたページをめくった。




4月6日

あれからいつもの日常が‘続いている。

せめてあの女の人の手がかりがあれば…。

何も見つからないまま私も高校生か。

4月7日

友達が出来た。

咲乃は正義感が強くて優しい子。

私も咲乃の様な正義感が欲しい。

4月14日

今日咲乃の家に遊びに行った。

咲乃のお母さんの遺影を見て驚いた。

あの日殺されたのは咲乃のお母さんだ。

何で親友になってしまったんだ。

咲乃の大切な人を奪ったのは私の両親なのに。

私は咲乃を支えよう。




  やっぱり…私のお母さんなんだ…

「俺お前に顔向けできねぇな」

『何でですか?』

「は?」

『私のお母さんを殺したのは碧と淏の両親だけど、だからって2人にそんな顔やこんな思いをして欲しくなんてない。』

そう言って碧の日記を淏に叩きつけた。

『碧も碧だよ!何で私に何も言わないのよ。私頼りないけど…碧の事…大好きだから…。力になろうとするのに…。』

泣いてしまった…

子供の様に泣いた。

なんで…言うのは怖いかもしれない、それが残酷な事なら尚更。

「そうだな。碧はそんな強くはなれなかったんだな…。」

それから碧の苦しむ日々が書かれていた。

碧も両親の罪を償わせる事は出来なかったようだ…。

でも最後のページには碧の殺した犯人らしき人物が書かれていた。

《この日記の事を2人にバレてしまった。このままじゃ2人に殺される。お兄ちゃんと逃げなきゃ。》

『そんなことって…』

「俺が家を出た時なんで碧も出たのが理由が分からなかったが…父さんと母さんが怖かったんだな。」

これが真実…。

「父さんなら警察を操れる…咲乃のお母さんの事も碧の事も…」

『どうします?』

「…本来の目的通り碧を殺した犯人には罪を償ってもらう。証拠を探そう。」

『はい。』

私達が未来と樹さんのいる部屋に報告に行くと2人は抱き合って眠っていた。

「これはそう言う事なのか?」

『え?付き合ってるんですか?』

でも未来からそんなふうな事は…。

「とりあえず起こさないで行くか…。」

『起こさなくていいんですか?』

「置き手紙だけ書いて母さんに2人で会いに行こう。」

『分かりました。』

私達はおばさんの所に向かった。

私にこの日記を見せてくたと言う事は罪を償いたいと言うこと…。

私達は今度こそ真実に近づける。



  私達が淏達の実家に行くと家の前に車が止まっていた。

「父さん!」

淏が呼ぶと車は私達のほうに来た。

後部座席の窓が空いた。

中にはおじさんがいた。

「淏!それと君は碧の友達かな?」

『お久しぶりです。』

「今から仕事ですか?」

え?

淏ってお父さんに敬語なんだ…いくら有名政治家だからって…。

「ああ。急いでるからそろそろ行くよ。」

「話があるんです。帰って来るまでお待ちしております。」

「遅くなるぞ。」

「構いません。あ!あとこの子の名前は松岡咲乃さんです。」

「松岡?もしかしてお父さんは月夜じゃないか?」

『はい。先日亡くなりましたが…。』

「父さん知ってるんですか?」

「いや。まぁ…。」

「お待ちしております。」

「わかった。」

車はまた走り出した。

『なんであんなこと言ったんですか?』

「咲乃のお父さんが亡くなった理由って…政治家をかばってとか言ってたな。」

『はい。ってもしかしてその政治家って…』

「おそらくお父さんはお母さんの真犯人をわかってたんじゃないかな?そしたら話の筋が通る。」

確かに…。

私達が話しているとおばさんが家から出てきた。

「貴方達!外でそんな話しないで!中に入りなさい。」

私達が家に入りリビングに腰かけた。

「外であんな話をして何を考えているの!もし誰かに聞かれたら…。」

『おばさん!碧の日記に書かれてた事を詳しく教えて下さい。』

「あの女の人は咲乃の母親なんだぞ…。」

おばさんは驚いていた。

その後おばさんはとても悲しい顔をしていた。

『私は真実知りたいだけなんです。教えて下さい。』

「そうね…貴方には真実を知る権利があるわ…あの日貴方のお母さんが夜遅くにこの家を訪ねて来たの…どうやら主人が貴方のお母さんに好意を持っていた様なの…それでもうやめる様に相談に来たのよ…咲乃ちゃんのお父さんには知られたくなかったみたいだしね…。」

おじさんが…お母さんに…。

なんか信じられない…。

「主人は私にも知られたくなかったみたいだった。それで話し合いをしている最中に、主人が怒り出して…咲乃ちゃんのお母さんを刺してしまったの。」

おじさんが…でもだとしたらおばさん凄く辛かったよね…。

「そしたらそこに碧が来て、碧はその現場を見てしまったの…それからは碧のあの日記の通りよ。碧が亡くなってからその日記の存在を知ったわ…。碧はどやら隠れて精神科にも通っていたみたいで…。」

『精神科ですか?』

「それほど苦しめていたのね…。」

「なんで自首しないんだよ。そしたら碧をそんなに苦しめる事も無かったのに…。」

「したかったわよ!でも黙っていないと私も子供達も無事では済まないと言われて。」

そんなやり方…許せない…。

『碧はおじさんが殺したんじゃないですか?』

「私もそう思ったけど碧が殺された日、主人は私といたの。アリバイは完璧よ。」

「アリバイ証明は家族にはできないよ。」

「私と主人はお店で食事をしていた、その店の人に聞いてくれれば分かるわ。」

こんな完璧過ぎるアリバイなんて本来ありえない…。

『私のお父さんの銃撃事件とは関係ないですよね?』

「お父さんは松岡月夜さん?」

『はい。政治家をかばって撃たれたと聞いています。』

「主人が狙われていたこともあった、それは仕事の事だったからそれ以上は分からないわ。」

「父さんは松岡月夜さんの名前を聞いた時動揺していた。聞かなくても分かるよ。」

確かにあの態度はおかしい…。

「私警察に行くわ。もう耐えられない。もし碧にまで手をかけていたらと考えると恐ろしい。」

「それを碧の日記が始まる前に言って欲しかったよ。咲乃や月夜さんの気持ちや殺された人の気持ちは考えた事ないのか?自分の娘が犠牲になったから、自首する気になるなんて咲乃やその家族に、申し訳ないとは思わないのか?」

おばさんは淏の言葉を聞き泣き出した。

その姿に私は同情しかなかった。

子供2人の為だと言い聞かせて今まで生活して来たのに…。

その娘は殺され、息子には軽蔑される。

でもそれがおばさんのして来た事なのだから私は何も言えなかった。

本当に悪いのはおじさんだ。

なんとしてもおじさんと話して罪を償ってもらわないと…。

『おじさんの帰りはいつになるか分からないんですか?』

「今日は沖縄に行ったから今日は戻らないと行っていたけど…。」

「でもさっき会った時は遅くなるとだけ言ってたけど…。」

もうどれが嘘でどれが本当なのか分からなくなって来た。

『じゃここで待っていても無駄なんですかね。』

「呼べよ!ここに!」

淏は冷静さを失っていた。

今はここにいてもしょうがないのかも…淏をこの場から連れ出さないと…。

『じゃ私達は1度帰りましょう?ここにいてもおじさんに会えないのなら仕方ない…』

「そうだな…樹達にも会いたいし。なんでか分からないけど今あの2人に凄く会いたいよ。」

『私も…。だから行きましょう?』

「そうだな。母さん今日は帰るよ。」

「貴方達もしかして付き合ってるの?あの女との子供と…。」

おばさんは目を見開いて同様していた。

なんだかこのままここにいたら命の危険を感じた。

「帰るぞ。」

淏に手を引かれ私達は家を出た。

家を出るとおばさんは追いかけて来て叫んだ。

「淏まで奪わないで!主人まで取られたのにそんなの嫌よ!」

おばさんの手には包丁が見えた。

「走れ!」

淏の言葉に私達は車まで走った。

無事に車に乗り込み後ろを振り向くとおばさんの姿は無かった。

『おばさん大丈夫ですかね?』

「一応父さんにメールで知らせた。取りあえず帰ろう…でもその前に少し抱きしめていいか?」

『え?』

淏に引っ張られて抱きしめられた。

「母さんが追いかけて来た時お前に何かあったらと考えると怖かった。お前がいなくなったら…もう俺ダメだと思う。」

『大丈夫ですよ。わたしはここにいます。』

「やっぱりそばにいて。これからはエイジに会わなければ俺は許せる。もう俺を裏切らないで…」  

『はい』

私は淏お共に未来達がいる家に帰った。





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