俺の絵が実態化したんだが!?

食害

文字の大きさ
2 / 5

まて、とりあえず座れよ。な?

しおりを挟む
「…………うん?」

「とりあえずさ顔と体、そのペンで描いてくんね?」

「あ、はい」

飛び出した手は徠の腕を離し勢いよく指をさすと紙の方にも指を指し、はやくはやくと急かした。

非現実的なことが起こり何が何だか訳が分からなくなった徠はとりあえず紙から飛び出してきた手とどこからともなく聞こえてきた謎の声の言葉に従った。

といっても、言われなくてもやるのだが……


サラサラ
キュッキュッ

「ほぉ~上手いねぇ」

徠は無言で黙々と描き続けているが、青年は「うまい」とか「おぉ、いい丸みがある」など、自分の体が完成に近づけば近づくほど率直な感想を次々と述べていった。

徠にそんな言葉は無意味でしかないというのに……

「……できたぞ………?」



手直しをしながらかれこれ数十分、
徠は描き上がった紙を指示されたとおりに部屋の中心の床に置いた。

ピカァァァァ

グニャグニャッ

すると、次は紙が発光し、またまたぐにゃりと曲がりはじめた。

紙からは手や体、足が飛び出し最後に頭をグググッと飛び出し、青年がジャーンっと効果音がつくようなポーズで紙の上に具現化して現れた__。

と言っても線しか描いていないから、モノクロである。


「フハハハハ!!!どうだこの俺の姿!!驚いたか!?驚いたな!?」


紙から出てきた青年は徠を指さし、さらにぴょんぴょんと徠の周りを飛び跳ねながら肩をバシバシと叩き始めた。

身長はおよそ170前後といったところだろうか、徠よりは高い。そして殴る力が強すぎて痛い。

「……痛い、おどろいた…驚いたから……!」

「痛い?そうか、わりぃわりぃ」

痛いと徠が言うと一応悪いとは思っているようで徠から一旦離れ、ペコペコと頭を下げていた。

(中指を立てている絵だったよな…?こんなにテンションが高くて人懐っこい奴なのか?)
徠の表情は呆れ顔だ。

そんな中でも徠は心の中で怪しさをMAXに青年へ疑いの目を向けた。

だが、徠のそんな目を見ても何も動じない青年は目を少し細めて口角をあげた。

何かを見透かすような細い目、これを蛇目というのだろうか。

「ところでよ?俺の名前は?」

「名前?………あー……」

(特に名前なんてない)

それもそうだ
徠はただ"己のストレス発散"の為だけに描いただけなのだから、

あるはずがない

「………なんでもいいよ、自分でつけて」

「は?」


真冬


徠が部屋に来て既に2時間は確実に経過している。それなのに、暖房の着いた部屋の空気が急激に冷えた気がした。

目の前にいた青年はいつの間にか姿を消しており、気がついた時には徠の体は斜めに傾きそして重力に逆らうことなく地面にたたきつけられた。

青年はすぐに徠の上に馬乗りの状態になって彼の胸ぐらを掴んだ。

「痛った……っ!」

「名前がねぇ……だと?……笑わせんな」

ギリギリッ

何故、彼はそこにキレたのだろうか

(なんで?自分で名前が好きなように決められるんだぞ?)

叩きつけられた時の背中の痛みと、今日家へ帰る時にできた捻挫の部分を圧迫され苦痛に苦しんでいた徠だが、青年が怒ってしまった理由を考えれば考えるほど顔からまた表情がなくなっていった。

苦痛に耐えるような表情でもなく、ただただ無機物な何かを見るような目へと変化していった。


それが青年にはもっと気に食わなかったのか、はたまたま何も言葉を返さなかったことにムカついたのか手首を握りしめる力をさらに強くしてきた。

「ッッ!!」

「……なぁ、答えろよ」

(前言撤回だ、こいつは全然人懐っこくないやつだ、!!)

徠はキッと青年を睨みつけ、

「………じゃあ答えてやるよ!!俺はな!!!ただ、ストレス発散のためだけに描いてたんだよ!!別に名前をつけようとかそんな気持ちで作ったんじゃねぇ!!お前は」



"俺が作り出したただの絵だ"



頭に血が上りすぎてムキになって返してしまった徠だが、言ってしまった途端に「やばい、こんな言葉最悪だ」と思ったのだろうか顔は青ざめ口をはくはくとさせている。

「……そうかよ、じゃ、、いいわ」

青年はあっけに取られることもなく素直に徠の手首からパッと手を離し、上からも退いた

「ご、ごめ((謝罪とかどーでもいい  ……」

ギスギスとした空気に2人は互いに目も合わせることなく、とてつもなく重たい。

どちらかと言えば青年からは徠に対する殺気がダダ漏れである。

トタトタトタ

「徠ー?なにかすごい音がしたけど大丈夫なの?」

「「!!」」
さっきの音(主に青年が徠を叩きつけた音)が1階のリビングにまで響いてしまったのだろうか、徠の母が心配して2階の部屋の前まで来てしまった。

「だ、大丈夫だから!!」

「ほんと?あのね徠、お母さんちょっと気になってたんだけど、帰ってきた時腕を庇ってなかった?どこか怪我したの?」

とたんに徠の表情が曇る。

「怪我……?」

そして、青年が徠に鋭い視線を向ける。

「け、怪我なんてしてないよ!転けただけ!うるさくしちゃってごめんなさい!!」

と、徠は母親を心配させないように必死に弁解しようとして、声を張り上げるが……

「ダメよ!怪我をしたならちゃんと見せなさい!!」

どうやらなかなかな心配性な母親のようで……このままでは母親が部屋に入ってきてしまう。

たしかに徠は帰ってくる時手首を怪我してきた。
だがもし、
それを母が見たら?
絶対追求してくるだろう。

部屋にいる青年を見てしまったら?
「不審者」あるいは、顔的に「自分の息子を虐める悪ガキ」のようなレッテルを貼られてしまうだろう。

これはまずい、非常にまずい!!
元からあまり顔色が良くなかった徠の顔がもっと悪くなってしまっている。

上手く隠そうにも、自分が創り出した青年は運悪く高身長、隠そうにもこの部屋にそのような場所はない。

つまりThe END………

バンッ!!

部屋のドアが思い切り開いたのと同時に徠は諦めた。
もうどうにでもなれという精神だ、

「あら?」

「な、なに……?」

母は徠の部屋をおもいっきり開けるやいなや徠の横を通り過ぎ、身をかがめた。

徠もその事に驚き母の視線の方に目をやると……

「は!?」

「あらあら、可愛い子ねぇ」

そこには単行本と同じくらいのサイズの"あの青年"がそこにいた。

もっとわかりやすく言うならミニキャラ?デフォルメ?というやつだ。

「おれ!らいとなかいいやつ!あやしいやつじゃない!」

「oh......」
(せめてさ!?ベッドの中に潜り込むとかぬいぐるみのようにするとかにして欲しかったなぁ!?)
 
っていうか、自分でも怪しいヤツって思ってたのかよ、と言った表情である。

「可愛いわねぇ!これ、徠が作ったの?すごいお人形さんねぇ!」

さらにその上徠が手作りしたお人形のようにされてしまっている。
しかも喋るハイテクな。

徠からしてみればこの光景にはカオスだろうか、

簡単に言えば死にかけている。


その後、母の戻りが遅いことに心配した父も来て、母に人形を見せつけられると父もその人形(疑似体)の虜になってしまった。

さらに、あの青年は母に「この子はご飯も食べれるのかしら?」と問われ、徠が「無理」と答えようとした瞬間「たべる!!」と即答し、もっと父親と母親に気にいられた。

徠もうなんでもいいやと投げやりになった徠はささっと階段を降りていった。

徠の母親に抱き上げられた青年は徠のその寂しげな後ろ姿をただじーっと見ていた。


まるで、なにかを見つけようとするかのように……



さぁ、
    

「ご飯」「地獄」の時間だ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...