【完】待ち焦がれてラブ・バージン 職なしパテシエールと訳あり御曹司の甘くおかしなプライマリー

国府知里

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# 僕のすべて

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 アンナの家に向かう車の中には、ジェイダンだけがいた。マリヤはベンとあとから一緒に来ることになったので、ジェイダンは一時間前倒しして車を飛ばしている。窓の外では景色が高速でかけ去っていくが、じりじりとした気持ちは収まらなかった。アンナの家を訪ねたが誰もいなかったので、ジェイダンは本宅を訪ねた。すると、久美子が神妙そうな顔でいったん奥へ引き取った。ジェイダンは穴が開くかというほどにドアを見つめ続けた。そして、ドアが開いたとき、そこにようやくアンナが立っていた。

「アンナ……」

 ジェイダンは靴音をじりと鳴らし一歩踏み込んだが、アンナはさっと目を伏せた。

「和泉の家に行きましょう……」

 そういうと、アンナはジェイダンの脇を抜け、自分の車に乗り込むと素早く発車した。ジェイダンはすぐにそれを追った。

 アンナの家に入ると、ほぼ一カ月間なにも焼かれていなかったせいか、甘い匂いが薄れている。アンナは車のキーをテーブルに置くと、背中越しにいった。

「エリナが病気なの。早く戻りたいの」

 ジェイダンは驚きを顔に浮かべたが、まずは先日の誤解を解くのが先だった。

「アンナ、ニュータウン計画と、土地の買収の話だけど……。僕はなにも知らなかったんだ。君のところへきたあのディックという男が騙った嘘なんだよ」
「……」
「アンナ、頼むから、こっちを向いてくれないか」

 アンナはしばらく動かなかったが、ゆっくりとジェイダンのほうを向いた。アンナの頬には生気がなく、顎や首筋は以前より細くなっているように見えた。

「こんなことになって、本当に僕もショックだ。ニュータウン計画をなくせるものならそうしたいけど、僕にはできない。でも、また別の場所で新しい店をつくろう。この家に同じような店を。そっくり移築したっていい」

 アンナは、はっとしたように目を上げた。

「移築……? 考えたこともなかったわ……」
「そうだよ。庭の木々もあの壁の蔦も、全部そっくり持って行って植えよう」

 アンナはしばらく宙を見つめなにかを決心したように、再び車のキーを取った。そして、たった今来たばかりの家を出ていこうとする。

「アンナ!? どこへいくんだ?」

 ジェイダンは慌ててアンナの腕を取った。

「ナオミさんのところへ……!」

 ジェイダンにはアンナが何を考えているかさっぱりわからなかった。だが、アンナの素振りからすれば、アンナにしかわからない事情があるのだろうと思われた。

「僕の車で行こう」

 ナオミの家に着くと、アンナは駆けるようにして車を出ていった。ジェイダンも急いで後を追った。

「ナツキちゃん、ナオミさんは?」

 ドアを開けたナツキはアンナの顔を見て驚き、その後ろにジェイダンがいるのを見て二度驚いた。例によってとっちらかったという表現が似合いすぎるリビングで、アンナとジェイダンはしばらく待たされた。ナオミが姿を見せると、アンナが駆け寄った。

「ナオミさん、あの家を移築したら?」
「アンナ、こんなに痩せちまって。なんてことだい……」

 ナオミが片方の眉をぐいと押し上げた。アンナの頬や肩を触りながらナオミは顔をひどくしかめた。

「食べなきゃだめだよ、アンナ。お茶を飲むんだ、ほれナツキ、準備しな!」
「ナオミさん……」

 アンナはすがるようにナオミを見つめた。ナオミは黙ってアンナを見つめていたが首を横に振った。

「だめだろうね、アンナ。こういうことだよ。あの土地と家とがつながっているからヒューがいるんだよ。家が依り代なのさ」

 それを聞くとアンナはすっかり気が抜けたようになって口をつぐんだ。誰もが沈黙を貫き、ナツキがハーブティーを配り終えたころ、ジェイダンが言った。

「さっきの話、内容から察するに、ヒューとあの家が関わっているということなのかい?」

 ジェイダンの言葉はアンナに向けられていたが、アンナはカップを手にしたまま、じっと山吹色の液体を見つめているだけだった。ナオミはお茶を飲み、ふうとため息をつくと横を向いてしまった。

(この前いってた契約ってそのことなのか……?)
「アンナ……。アンナ、お願いだ、こっちを向いてくれ」

 ジェイダンの言葉にアンナはのろのろと視線を上げた。

「あんな、頼むから、なにがあったのか話してくれ」
「……」
「僕にできることがあるなら言ってくれないか」

 アンナはジェイダンを見てはいるが、まるでその先のなにかを見ているようにぼんやりとしていた。ジェイダンはそれがたまらなかった。ジェイダンはこの一か月ほどアンナの姿、アンナの声を、気が狂いそうなほど夢中になって探し続けていた。それなのに、目の前のアンナは自分のことを見ていない。投げかけた言葉も少しも届いていないようだ。

「アンナ、この数週間、君はどこでなにをしていたの?」
「……」
「僕がその間どんな思いでいたかわかるかい? なんど電話をかけてもつながらないし、君の家を訪ねてもご両親もエリナちゃんも何も教えてくれない。ディックのうそやニュータウン計画のことを説明したくても、君は連絡がつかない。それどころか、なにも言わずに海外へ行っていたなんて、僕がどれだけ心配したか。君は……」
「聞いてりゃ、あんたは自分のことばっかりだね!」

 ナオミが不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「あんたの思いなんか誰が知るか。あんたもアンナの思いがわかるはずないだろうが」



「……だからこうして聞いているんです……! 口を挟まないでもらえますか」 
「だったらよそでやんな。ここはあたしのうちだよ」

 ジェイダンはむっと口を曲げて立ち上がった。

「アンナ、行こう」

 帰り際、ナツキがアンナにハーブティーの入った袋を手渡した。

「エリナちゃんにも飲ませてね、アンナさん。またすぐ作っておくから」
「ありがとう、ナツキちゃん」

 ナツキはふたりが乗った車が見えなくなるまで見送った。
 和泉の家に着くと、ジェイダンはすぐにアンナをそばに座らせ、その手を取った。

「アンナ、君はこれまでどこにいたの?」

 アンナは伏し目がちに小さな声で答えた。

「パリよ……。サロン・ド・ショコラのチケットを波江と悟君にもらったの。それで……」
「どうして僕に何も言わず、なにも聞かずに行ってしまったの?」
「……」

 アンナは沈黙してしまった。

(これじゃあだめだ……)

 ジェイダンは頭を巡らせた。ジェイダンはアンナが答えやすいように、つとめてゆっくりとやわらかい口調を心がけた。

「でも、何週間も連絡が取れないなんてことはないはずだよ。サロン・ド・ショコラの会期はたしか五日間じゃなかった?」
「そうよ……。そのあと、パリのルネシェフの店を訪ねたの。そうしたら、いろいろと面倒を見てくれて、それで……」

 ジェイダンは唐突に出てきたフレンチ料理界の貴公子の名に、とっさにライバル心を燃やした。

(まさか、ルネと……。いや、まさかそんな……)

 ジェイダンのそんな思惑を見透かしたかのように、アンナがぽつりと言った。

「もし……、わたしとルネさんが付きあうことになったとしたら……」

 ジェイダンは動揺に瞳を揺らしてアンナを見つめた。

「あなたはわたしをあきらめてくれる?」
(アンナ……どういう意味なんだ……)
「ルネさんじゃなくても、ほかの誰かとわたしがつきあったら、あなたはもう二度と……」
「なにを言ってるんだ、アンナ……」

 アンナは顔をゆがめ、自分の手で顔を覆った。

「わたし、つらいのジェイダン……。あなたの顔を見ているのがつらい……」
「アンナ……」
「あなたの顔を見たくない。もうここには来ないで……」

 目の前で顔を覆いうずくまるアンナに、ジェイダンは固まった。

(どうして……)

 今までアンナには何度も拒絶されてきたが、こんな態度は初めてだ。ジェイダンにはわからない。

「なにがあったんだ、アンナ……。話してくれ、僕にはわからない。話してくれなきゃわからないよ……」

 そういいながらジェイダンはこれまでのことを頭の中で整理した。ニュータウン計画で取り潰される和泉の家。ナオミが言っていた土地と建物とがつながっていて、家が依り代だという話。

(家がなくなると、……まさかヒューもいなくなるのか?)

 ふとした思い付きだった。ジェイダンはうずくまるアンナを見つめた。

(戸川グループの買収で家がなくなり、ヒューがいなくなってしまうことを嘆いて……。それでアンナは僕のことを避けたがっているのか?)

 自分で思いついたことだったが、にわかには信じられなかった。だが、これまでの話を推測するとそういうふうに思える。

(だが、そうだとしたら……。計画がなくならない限り、ヒューを助けることはできない……)

 ジェイダンはそこまで考えたところでアンナの肩に触れた。

「君はヒューを失うことを嘆いている、そうなの?」

 アンナはゆっくりと顔を上げた。その目には今にもこぼれそうなほどに涙が溢れている。

「戸川グループの買収で、この家とヒューが消えてしまう、だから僕を遠ざけようとしているの?」

 ジェイダンはそらさずにアンナの瞳を見つめた。その仮説はジェイダンにはおそらく正しいように思えた。

「わたしのことは忘れて、ジェイダン……」

 アンナはそういうと、すばやく立ち上がりドアに向かった。

「アンナ……!」

 ジェイダンの呼びかけに振り返りもせず、アンナは家を出て車に乗り込むと、ジェイダンを残して走り去っていってしまった。
 取り残されたジェイダンは呆然とし、しばらくはアンナが戻ってくることを願ってその場にとどまったが、小一時間ほどの後にやはり帰るしかないことを悟った。エリナが病気だといっていたから、アンナはきっと本宅に戻ったのだろう。しかし、今行っても会ってはもらえないだろう。ジェイダンはハイウェイへ向けて走り出したが、ふとハンドルを切りかえし西に向かった。ジェイダンは再びナオミの家に来ていた。ナオミはジェイダンを見るや、けっとつばを吐いたが、ジェイダンはそれにはもう動じなくなっていた。

「教えてください。あの家がなくなると、ヒューがいなくなるんですか?」
「ようやく、ぼんくらが口だけでなく頭を使いだしたようだね」
「しかし、ニュータウン計画は止められません……。かわいそうですが、ヒューは……」
「かわいそうだって?」

 ナオミはくわっと目を開き、再びつばを吐いた。

「あんたはどこまでもぼんくらだよ!」


「……確かにアンナとエリナちゃんにとっては大事な友達でしょうが……、なんというか……、それがいなくても生きていられるものでしょう? 人間の友達や親だっていずれ死にます。確かにつらい別れになるのかもしれませんが……」
「もういいよ! あんたと話していても無駄だ! 帰んな!」

 ナオミは追い払うように手を振った。

「でも、家とヒューとがそういう契約ならば……」
「ばかだねえ! 契約っていうのは……」

 ナオミが口をつぐんだ。そして、ジェイダンをじろりとひとにらみすると、低い声で言った。

「呪いだよ。あんたにも覚えがあるだろう」

 それだけ言うと、ナオミは部屋の奥へ引き込んでいってしまった。
 帰りの車の中で、ジェイダンはひたすら考えていた。ナオミの放った呪いという言葉。やけに重々しくその言葉が耳に残っている。

(呪いだよ。あんたにも覚えがあるだろう)

 古い記憶を見透かされたような気がして、ジェイダンは冷たさを覚えた。

(嫌なことを思い出させる……)

 ジェイダンは振り払うように首をふった。それより、問題はアンナのことだ。あの様子では、明日家に行っても会ってもらえるかわからない。ジェイダンはこめかみを押さえて、車線の先を見つめた。行きつく先が一向に見えてこない。テーブルゲームで、まるでふりだしにもどったような気分だった。

 それからの数日間、ジェイダンの予想通り、アンナはまったくジェイダンに会おうとはしなかった。遅れて現れたマリヤとベンにはあいさつ程度にやりとりを交わしただけで、それ以降のマリヤの連絡をアンナは受け取りはするものの、以前のような親しいやり取りはひかえているようだった。それから、アンナが病気だといっていたエリナだが、久美子によると怪我らしい。転んで頭を打ち、数日寝込んでいたという。病院の検査でも異常はなく、今は元気でいるらしい。アンナから連絡が来たのはそんなある日の午前だった。

「ジェイダン、今から和泉の家に来れない……?」

 ジェイダンはようやくアンナの気持ちが落ち着き、ヒューのことはどうにもならないことなのだと受け入れたのだろうと思った。

「もちろん、いくよ」
「よかった……。あなたに頼まれていたことを思い出したの」
「僕なにか頼んでいたかな……。ああ、お菓子のこと? 僕のために焼いてくれっていう。覚えていてくれたんだね」
「そう。最後に約束を守ろうと思って」
「……最後?」

 ジェイダンの胸が飛び跳ねた。

「最後って、そんな」
「最後にあなたをお茶にお招きするわ。これでほんとうに最後よ」
「アンナ待ってくれ……」
「……」

 ジェイダンは電話を握りしめながら一度呼吸を沈めた。

「それなら僕はいかない」
「……」
「アンナ、ちゃんと話をしよう。前向きな話を」
「来ても来なくても、待ってる……」

 例によって、アンナの決心は固そうだった。ジェイダンは車に乗りながら、アンナをどう説得するかを考えていた。

(君が何度も終わりにしようとするなら、僕は何度でもそのドアをたたくだけだ……)

 ジェイダンがアンナ家の前に立つと、以前は消えかけていた甘い焼き菓子の香りが漂っていた。

「どうぞ」

 アンナはいつものようにコットンのブラウスと細身のジーンズを着ていたが、その上に手首まで隠れる厚手のカーディガンを羽織っている。さむいわね、と言ってアンナはストーブの前をすすめてくれた。アンナは先日に比べればずいぶんと元気に見えた。けれど、顎の細さは以前にも増したように見える。ナオミのいうように、あまり食べていないのかもしれない。テーブルにはプレーンガレットがあった。ジェイダンはアンナから今後も会うという約束を引き出すまで、決して口をつけないつもりでいた。

「君に電話をもらえてうれしかった」

 アンナは紅茶のカップをジェイダンのまえに差し出した。アンナは紅茶をすすりながら、目を伏せた。お茶を飲むときのアンナの上唇が、カップの淵に触れる瞬間、ジェイダンはいつもアンナとのキスを想像する。あのカップになりたいと冗談交じりに考えることもある。

「でも、これが最後というのには賛成できないな。君が撤回するまで、僕は口をつけないよ」

 アンナは困ったように微笑んだ。

「あなたらしいわね」

 ジェイダンはアンナの態度に柔軟なものを見て、少しおどけて見せる。

「そんな僕が好きになったんだろう?」

 アンナは答えなかったが、うつむきながら微笑んだ。

「ニュータウンはいつ完成するの?」
「まだはっきりしたことは決まってないと思う。いずれにしてもリニアが完成する前後だよ」
「そう……」
「工事が始まるまではここで店を続けてもいいよね。改装の予定を早めたらどうかな。資金はマリヤの父親に出させればいい。娘のいうことにはノーと言えない人だから」
「……」
「庭は引き続き僕にやらせてくれないか? あともう少しなんだ。内装はプロにやってもらった方が早いしきっとうまくいくだろう」
「ジェイダン、ここはもう閉めるの」
「え?」



「だから、今日が最後なのよ」

 そういえば、キッチンの道具がほとんどない。それに配置されていた日用品も片付いている。

「別の場所に移るんだね? 引っ越しなら僕も手伝うよ」
「……」

 答えない様子からすると、そうではないらしい。アンナはしばらく黙っていたが、顔を上げた。

「ジェイダン、あなたには感謝してるの。いろいろと腹の立つこともあったけれど、あなたに出会わなければ知らないことも感じないことがたくさんあったわ……」
「アンナ、急になんだい……」

 アンナの語り口はまさに締めくくりを前にしたような雰囲気だった。

「この家の庭をきれいにしてくれたことや、ルネシェフに出会わせてくれたことや、ウェディングケーキを運んでくれたこと。それに……」
「待ってくれ、アンナ」
「今までありがとう、ジェイダン」

 ジェイダンは思わず立ち上がり、そこから二、三歩進んだ。できるだけ落ち着いて話をするべきだ。それはわかっている。だが、アンナはまるで水を掴むようにすり抜けていく。捕まえたと思っても、次の瞬間には羽をはやした妖精のように飛び去って行く。思いは通じ合ったはずなのに、それ以外の何かがふたりの間に立ちはだかっている。ナオミは呪いといっていたが、それがこの見えない壁なのだろうか?

「どうして、君は……!」

 ジェイダンは思わずアンナの前に膝をつき、アンナの腕に手をして見つめた。少しやせたアンナ顔には、憂いをふくんだ瞳が揺れている。

「アンナ……。本当に僕は、君が好きなんだ。君しかいらない。君さえいれば、なにもいらないんだよ」
「あなたには家族がいるでしょ? それからちゃんと治療も受けて……?」
「ほんとうに、君なんだよアンナ!」

 ジェイダンは声を上げた。大きな声を上げたからといってアンナの心に届くわけではない。だがほかにどうすれば、もう一度アンナの心に触れられるのだろう。

「君とヒューは僕の知らないなにを知ってるの?」

 アンナの目がわずかに見開らかれた。

「契約っていってたね……。ナオミさんは契約のことを呪いだといっていたよ。ヒューが君を呪ってるの?」
「違うわ……」
「家がなくなったらヒューの呪いがとけるの? それなら君は呪いから解放されるんじゃないのかい?」
「違うわ、ジェイダン!」
「じゃあなんなんだい? 僕にもわかるように話してくれないか」
「いやよ……」

 アンナは首をふった。ジェイダンはアンナの視界に自らを割り込ませた。

「言ってくれ、アンナ。僕は君が知りたい」
「いいたくない……いえないの……」
「じゃあ、あの言葉を言うよ?」

 ジェイダンの言葉にアンナは驚いたように、目を見開いた。

「このままいけば、家がなくなりヒューも消える。それなら今消えても同じことだ」
「ジェイダン……!」
「それに、ヒューが消えれば、君がヒューから解放されるのは間違いない。僕はいい加減飽き飽きしてる。君とヒューのないしょ話に。ヒューが君を放さないなら、君からヒューを奪い取るまでだ」
「やめて、ジェイダン!」

 アンナはジェイダンの口元を押さえた。だが、アンナのその手首を取ると、ジェイダンはいとも簡単に外してしまう。アンナは泣きそうな顔でジェイダンを見た。

「お願い、やめて……!」
(なんて顔だ……)

 ジェイダンは体の深層部が急激に高ぶった。

(このまま押し倒したい気分だ……)
「ヒューは今もここにいて、僕たちを見ているの?」

 アンナはこくりとうなづいた。アンナの豊かな胸の線が呼吸に沿って、まるでジェイダンを誘うように上下しているのが見える。

(ヒューに見せつけてやりたいよ……、このアンナの唇を、このバストを、全てをむさぼるところを……)

 なんどこんな思いを我慢してきただろうか。今日こそは思いを遂げてもいいのではないか、そんな野蛮な思いがよぎる。アンナがこれが最後だというなら、忘れられないくらい抱き明かしてやりたい。もう一度、その体が自分を求めずにはいられないくらいに。
 アンナは食らいつくようなジェイダンのブルーアイにとらわれ、全身が一気に泡立つのがわかった。どうしていつもこうやすやすととらわれてしまうのだろう。振りほどきたいのに、掴まれた腕がびくともしない。受け入れてはいけないと思っているのに、目をにそらせない。

「アンナ……」

 欲望を押さえたような声で囁かれると、アンナはそれだけで目を閉じたくなる。久しぶりに間近に感じるジェイダンのパフューム。ゆるぎなく立ちはだかる肩の線。その肩にしなだれかかり、ジェイダンの熱い指に指を絡めたい。

「ジェイダン……」

 ジェイダンはアンナが自分の名を呼ぶのと同時に、吸い寄せられるように顔を寄せた。紅潮したアンナの頬は輝くように美しい。ジェイダンはアンナの腕を離し、その頬を両手で包んだ。唇からちらりと覗く赤く潤んだ舌。あの奥に自分の舌を滑り込ませ、思う存分に絡ませたい。このままこの手を下へ滑らせ、そのたわわな丸みに触れ、くびれを通り、そのジーンズで隠された曲線を味わい、ボタンを外しジッパーを降ろす……。ジェイダンは想像をそこで押しとどめた。想像よりも、現実で楽しむほうがはるかにいいからだ。ジェイダンは手始めに、赤い舌が想像通りかを確かめるために口を開けた。そのとき、アンナの瞳から一筋涙がこぼれた。

「……アンナ……?」

 瞬く間にぽろりぽろりとしずくがつづけざまに落ちた。

「わたしをあきらめて、ジェイダン……お願い……」

 ジェイダンは、もう聞くものか、そう思った。だが、アンナの指がジェイダンの髪に触れたのはその時だった。いつかのように、アンナが自分からジェイダンに触れた。アンナの細い指先が、ジェイダンの耳の上の髪をなでるように。


物語上、少々暴力的な表現、トラウマ的表現が含まれます。
苦手な方はスルーしてください


 その瞬間、ジェイダンの胸をたった一つの思いだけがその場所を占領した。

(この人しかいない……)

 まるで砂時計のように、高ぶった気持ちが流れ落ちていく。ジェイダンは冷静さを取り戻すと、肩の力を抜き、アンナを少し距離をとった。そして、アンナの涙を指で拭うと、静かな口調で話し始めた。

「アンナ、君に聞いてほしいことがある」

***

「僕はこどものころ、知らない大人に傷つけられたことがある」

 ジェイダンの突然の告白に、アンナは驚き、涙が止まった。

「イギリスに移る前だ。たぶん八歳くらいのときだ……。そのころはまだ港区のマンション住まいで、僕は友達とサッカーをして、別れて帰ってきたところだった。僕はいつものようにエントランスからエレベーターに乗った。そのとき、知らない人がエレベーターに後から入ってきた。今でははっきりよく思い出せない。顔を帽子で隠していて、男か女なのかもわからない。体形も背も、服装も髪型も中高年の男とも女ともつかないような。後から考えたら、あの異様さはタワーマンションに住むような人間じゃなかったようにも思えるが、今となってははっきりしない。

 その人物とふたりで乗ったエレベーターは上に向かった。三十五階あたりをすぎたとき、エレベーターが故障かなにかで止まった。電気が落ち、緑色の非常灯が付いたが、僕はその人物とふたりで、狭く暗いエレベーターの中に閉じ込められた。しばらくたって、僕はじっと見られているのに気が付いた。はじめはたまたま乗り合わせたこどもの僕を心配してくれているのかと思ったが……違った。その人物が無言で僕を角に追いやるんだ……」
 過去の記憶に脅かされ、ジェイダンは顔をゆがめた。ジェイダンにとってそれは忌まわしい呪いのようなものだった。そのまなざしと頬に走る緊張に、アンナは息が詰まった。
「はじめはなにが起こってるのかわからなくて……、しばらくはむかついて逃げ回っていたけど、薄暗い閉鎖空間の中で、僕は次第にパニックになりかけていった。すぐ開くだろうと思っていたドアは開かず、そいつの吐く息づかいや体温が気味が悪くて……。今までおちいったことのない状況に僕はだんだんと怖くなってきた。エレベーターのドアをたたき、大声をあげたが、助けはこない。内線電話をかけようとしたが、妨害されて、僕は壁に押し飛ばされた。僕は体を打ち付けて転び、擦りむいた膝からは血がにじんでいた。
 僕はすごく腹が立って、そいつをにらみつけた。体当たりして反撃してやろうと構えた。だが、そのときそいつはポケットから、カッターナイフを取り出したんだ……」

 アンナの背中がぞっと震えた。ジェイダンは努めて冷静を保っていたが、その顔からは色が失われていた。

「そいつは、僕の目の前でカチカチと刃を出して、その刃をゆっくり僕に近づけてきた。僕はじりじりと追いやられて、身動きが取れなくなった。殺されるかもしれないと思った。ほんとうに、ここで死ぬのかと思うと、恐怖で身がすくんだ。声も出なかった……」

 ジェイダンは今まさにそのときの恐怖を目の前に感じて、それに抵抗するように深く息を吐いた。

「それで、そいつは僕の髪に手を伸ばし、カッターナイフで髪を切り取ったんだ」

 アンナはジェイダンの青い瞳に映る過去を想像して、声も出せず、ただ身を震わせた。

「その後、偶然かなんなのか、幸いにもエレベーターが復旧して、最寄りの階についてドアが開いた。僕は一目散に駆け出した。そいつが追ってくることはなかったが、僕は必死で走った……」

 ジェイダンはようやく過去から現実へ戻ってきたように瞳をあげた。

「僕に恐怖症が現れたのはそのころからだ」

 アンナは気が付くと指先が冷たくなっていた。

「ジェイダン……」
「その日、僕が自宅へ駆け戻ると、家の中は例によって誰もいなかった。いつもの母の書置き、冷蔵庫の中の冷たい夕食。僕は、病院にいる母に電話したがつながらず、兄の様子がよくないんだろうと思った。父の会社にも電話したが、打合せかなにかでつながらなかった。僕は自分でなんとかするほかないと思い、気を取り直したよ。なんでもないふりをしたんだ。今日あったことは大したことのないことだという風に思い込むんだ。怖くないふり、髪を切られたことなどささいなことだというふり。僕は翌朝、母に髪のことを指摘されたとき、こう言おうと決めた。友達にガムをつけられて、自分で切ったとね……。実際僕はそうした」

 ジェイダンはアンナの手を取り、自分の頬に当てた。

「君だけだ。僕の髪に触れて嫌な気がしないのは。君だけなんだよ、アンナ」
「ジェイダン……」
「君が僕の髪に触れたとき、君にもっと触れてほしいと思った。僕には君しかいないんだよ」
 
 青い瞳が慰めを求めてアンナを見つめていた。

「このことを打ち明けたのは君が初めてだ。後にも先にも、誰にも話すつもりはない。君さえいれば、僕はきっとこの恐怖に立ち向かえる気がする。これが僕のすべてだよ。もう君に隠していることは何もない」

 ジェイダンのまなざしの向こうに、アンナの知るはずのない幼いジェイダンが助けを求めている姿が見えた。

「アンナ、どうか僕のそばにいて」

 ジェイダンがアンナの手にキスをした。アンナの胸に感情が込みあがり、知らず知らず瞳から雫がこぼれた。ジェイダンの恐怖症、それは他人が安易に踏み込める傷ではなかった。なんでもないふりをしながら、傷ついた魂は、いままでずっとジェイダンの心の底で凝っていたのだ。悪いのは明らかにジェイダンを襲おうとした人物だ。だが、現実としてその悪意を日のもとにあぶり出し、罪を裁くことはできなかった。そればかりか、誰にも救い上げてもらえなかった孤独と恐怖は、ジェイダンの心に住み着いてしまった。

 そして、ジェイダンを呪ったのは、ジェイダンが自分を守るためについた嘘そのもののせいだったのだろう。病弱なロビンのために家を留守にする母、仕事で忙しく自分を顧みない父、はたまた体の弱い兄。頼りたい時に、ジェイダンのそばにいてくれる人はいなかった。強がるしかなかった。嫌悪、恐怖、痛み、苦しみ、苛立ち、恥じ、悲しみ。果たして、そこに時間と記憶と感情が積み重なり、ジェイダンの中では転嫁が起こったのだろう。ジェイダンは幼い自分が傷ついたのは誰かのせいだ、と自分に言い聞かせなければならなかった。それが、結果として家族との別離、特に父への不信へと強く表れたのだろう。

 ジェイダンの抱えていたものを受け止め、アンナは心の堰を開くと決めた。この話を聞いてまで、アンナは自分の胸の内をさらさずにはおけなかった。

「ジェイダン、好きよ……。あなたが好き……だけど、だめなの……。わたしはきっとあなたを恨んでしまう……」
「……どういう意味?……」

 ジェイダンはアンナの瞳に答えを探すように見入った。



「ヒューと契約をしているの……。日向君が去った後、母が家に戻ってきた。わたしとエリナは、ヒューが消えてしまいそうで、母にすがったわ。どうしたらいいか、わからなかったの。だけど、母は信じなかった。ヒューを否定した母の一言で、ヒューはわたし達の前から姿を消すところだった。そのとき、エリナが言ったの。なんでもするから、ここにいてって……。わたしも言ったわ、わたしもって。そして、わたしたちは契約したの。ヒューが消えると、わたしたちも消えるの……」

 ジェイダンは耳を疑った。

(……なんだって……?)

 ジェイダンは思わずアンナの頬を両手ですくった。

「そんな……、うそだろう、アンナ……?」
「お願いジェイダン、もうわたしたちの前に現れないで……。エリナが死んだら、わたしきっとあなたを恨むわ。きっと許せなくなる……」

 アンナの左右の目から幾筋もの雫が零れ落ち、ジェイダンの手を濡らした。ジェイダンは次第に動揺を強くし、声をあげた。

「うそだ……! 嘘だといってくれ、アンナ!」

 アンナは瞼を閉じ、首を左右に振った。目に溜まっていた涙がとめどなく頬を流れ落ちる。ジェイダンはアンナを引き寄せ、腕の中に抱きすくめた。強く抱いても、アンナはすすり泣きの声を上げつづけている。

「あなたといるのがつらいの、お願い……。わたしをあきらめて……」
「いやだ!」

 ジェイダンは子どものように叫んでいた。ジェイダンは受け止めきれないまま、ただただアンナを強く抱きしめることしかできなかった。

 泣き疲れたアンナを家に残し、ジェイダンはナオミの家に向かっていた。アンナはもう方法はないといっていたが、ジェイダンは何か手立てを考えるといって聞かなかった。ナオミはちょうど庭の植物をいじっているところだった。ジェイダンは前置きもなくナオミに問いかけた。

「ヒューとの契約を解くにはどうしたらいいんですか!?」
「ようやくわかったのかい。ちょっと、そこを踏むんじゃない!」
「ナオミさんや二場牧師ではどうにかできないんですか?」
「だからいっただろう。契約は呪いだと。簡単に解けるもんならとっくにやってるよ!」
「じゃあ、どうしたらいいんですか……! このままじゃ、まさか本当にアンナとエリナちゃんは……」

 ナオミはぎりっとジェイダンを睨んだ。

「それ以上言うんじゃない。言葉はそれだけで力を持つ。ぼんくらにもわかるように一つ教えてやろう。呪いのことだよ」
「……」

 ナオミは地を踏みしめた。

「あんたは弁護士なんだろ? 人間の決まりごとには詳しいはずだ。そうだろ?」
「はい……」
「じゃあ聞くが、この土地にわたしらは住んでいるが、だれの名義になっているだろうね?」
「……登記簿謄本を調べればわかると思います」
「だれから買ったと思う?」
「契約書を見ればわかるのではないですか?」
「いくらで買ったかわかるかい?」
「わかりません……。当時の地価を調べれば予測もつきますが」
「家はだれが建てたのかね?」
「知りません……」
「以前はここになにがあっただろうね?」
「そんなことはわかりません。それがなにに関係あるんです?」
「今あんたが言っただろ」
「え?」
「そんなことはわからない。それが答えだよ」

 ジェイダンはけむに巻かれたような気がした。

「あんたはなにか思い違いをしているようだがね、人間の契約ひとつにしたって、その本当のところや細かいことはわからないんだよ。当人同士の思惑や時代背景、地理や歴史や関わる者の状況や心情。それらはさまざまだろう。それが人ならざる者だからって、どうして何もかもがわかるんだい? あの子たちの契約については、わたしにもたいしたことはわからないんだよ。あの子たちは幼いころに知らずと結んじまったから、なおのことわからない。アンナは消えてしまうといっているが、それがどう消えるのかははっきりとはわからないんだよ。生気を吸われるだけなのか、体の一部を奪われるか、病を身に受けるか、それともその身をすっかり奪われるか……」

 ジェイダンはぴくりと眉を動かした。

「そういえば、エリナちゃんが怪我をしたといっていましたが、もしかして……」

 ナオミはジェイダンを刺すように見ると、腕を背にやった。

「そういうふうに現れることもあるだろうよ。わたしが見たところ、エリナは外側、アンナは中側に隙を作りやすいね」
「隙……? つまり、どういうことですか?」
「すこしは自分の頭を使いな! ぼんくらと話してるとこっちの頭も悪くなる!」
「……すみません。でもどういう意味なんですか?」
「ごく一般的に言えば、外は怪我、中は病。そういうことだよ」
「……」

 ジェイダンは閉口して老婆の様子を眺め見た。

「じゃあ、あの家がなくなればアンナは病になるというんですか……」
「それですめばいいがね、いっただろ。そんなことはわからないんだよ」


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