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第二部
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「それで、和樹くんは、太一と直接話すことができたの? 事前に連絡が取れなかったって、太一に何か事情があったかのかな?」
「かずくんと太一は卒業後一度も連絡を取り合ってなかったからね。その間、太一がスマホの番号を変更しただけで、別に、かずくんのことを避けてるとかそういうことじゃなかったんだって。もともと、太一って社交的な性格じゃなかったから、新しい番号を学生時代の友達に知らせることもしなかったみたいだし、SNSもやってないって」
「でもさ、社交的じゃない太一が、なんで、同窓会に出席しようと思ったんだろうね? 謎なんだけど」
「うーん……なんかね、太一の家、家庭崩壊してるみたいで。たぶん、誰かに愚痴聞いてほしくて出席したんじゃないかなって、かずくんが言ってた」
「家庭崩壊? 太一は和樹くんに具体的な話をしたのかな?」
「うん……太一と洋子は別居中なんだって」
「子どももいるんだよね? 洋子が面倒を見てるの?」
「それがさ、子どもの面倒は太一が見ているんだって」
「それって、家庭崩壊の原因が洋子の方にあるってことなのかな?」
「うん、そう。洋子の家庭内暴力が原因らしいよ」
「まじでっ? 驚きなんだけどっ!」
「今、子ども中一なんだけど、不登校らしいよ。名前は、確か美鈴っていってたな。美鈴が小学校に上がる前まで洋子は専業主婦してて、家事も子育てもちゃんとやってて、絵に描いたような幸せな家族だったらしいんだけど、洋子が中途採用で扇重工に入社してから、いつも苛々してて、太一に暴力を振るうようになったんだって。まあ、太一は、我慢強い性格らしいから耐えていたらしいんだけど、洋子の怒りの矛先が美鈴に向いてきたのを見て、洋子との別居を決意したらしいよ」
「それって、仕事と家庭の両立が辛くて、洋子が家族に八つ当たりしたってことなのかなあ?」
「もちろん、それもあるだろうけど、太一は、その理由について知っていながら隠してる感じだったって、かずくん言ってた」
「……そうなんだ」
唯香の脳裏に、仲睦まじそうに話をしている山崎洋子と一条蘭の姿が過った。洋子は扇重工に入社してから家族に対して暴力を振るうようになった。蘭と洋子は柊花大学在学中に接点があった可能性がある。そして、扇重工に入社してからはプライベートでも親しかったという高部の証言がある。そして、ほぼ同時期に、二人は、業界最大手の扇重工を退職して八角工業に転職した。一条蘭が唯香のことを嫌っているのは知っている。だとしたら、山崎洋子も同様に唯香のことを個人的に嫌っているのは間違いないだろう。ただ、唯香が山崎洋子に恨まれる理由が皆目見当がつかない。
(これは、直接、本人に訊くしかないな)
「ねえ、栞」
「ん? どうした?」
「何とかして、山崎太一と私が直接話せる機会を設けてもらえるよう、和樹くんにお願いできないかな? 面倒臭いこと頼んじゃって、本当に申し訳ないんだけど」
栞は、少し心配そうな顔をして、
「わかった。私にできることなら何でも協力するけどさ……無茶なことだけはしないでね」
と言った。
「かずくんと太一は卒業後一度も連絡を取り合ってなかったからね。その間、太一がスマホの番号を変更しただけで、別に、かずくんのことを避けてるとかそういうことじゃなかったんだって。もともと、太一って社交的な性格じゃなかったから、新しい番号を学生時代の友達に知らせることもしなかったみたいだし、SNSもやってないって」
「でもさ、社交的じゃない太一が、なんで、同窓会に出席しようと思ったんだろうね? 謎なんだけど」
「うーん……なんかね、太一の家、家庭崩壊してるみたいで。たぶん、誰かに愚痴聞いてほしくて出席したんじゃないかなって、かずくんが言ってた」
「家庭崩壊? 太一は和樹くんに具体的な話をしたのかな?」
「うん……太一と洋子は別居中なんだって」
「子どももいるんだよね? 洋子が面倒を見てるの?」
「それがさ、子どもの面倒は太一が見ているんだって」
「それって、家庭崩壊の原因が洋子の方にあるってことなのかな?」
「うん、そう。洋子の家庭内暴力が原因らしいよ」
「まじでっ? 驚きなんだけどっ!」
「今、子ども中一なんだけど、不登校らしいよ。名前は、確か美鈴っていってたな。美鈴が小学校に上がる前まで洋子は専業主婦してて、家事も子育てもちゃんとやってて、絵に描いたような幸せな家族だったらしいんだけど、洋子が中途採用で扇重工に入社してから、いつも苛々してて、太一に暴力を振るうようになったんだって。まあ、太一は、我慢強い性格らしいから耐えていたらしいんだけど、洋子の怒りの矛先が美鈴に向いてきたのを見て、洋子との別居を決意したらしいよ」
「それって、仕事と家庭の両立が辛くて、洋子が家族に八つ当たりしたってことなのかなあ?」
「もちろん、それもあるだろうけど、太一は、その理由について知っていながら隠してる感じだったって、かずくん言ってた」
「……そうなんだ」
唯香の脳裏に、仲睦まじそうに話をしている山崎洋子と一条蘭の姿が過った。洋子は扇重工に入社してから家族に対して暴力を振るうようになった。蘭と洋子は柊花大学在学中に接点があった可能性がある。そして、扇重工に入社してからはプライベートでも親しかったという高部の証言がある。そして、ほぼ同時期に、二人は、業界最大手の扇重工を退職して八角工業に転職した。一条蘭が唯香のことを嫌っているのは知っている。だとしたら、山崎洋子も同様に唯香のことを個人的に嫌っているのは間違いないだろう。ただ、唯香が山崎洋子に恨まれる理由が皆目見当がつかない。
(これは、直接、本人に訊くしかないな)
「ねえ、栞」
「ん? どうした?」
「何とかして、山崎太一と私が直接話せる機会を設けてもらえるよう、和樹くんにお願いできないかな? 面倒臭いこと頼んじゃって、本当に申し訳ないんだけど」
栞は、少し心配そうな顔をして、
「わかった。私にできることなら何でも協力するけどさ……無茶なことだけはしないでね」
と言った。
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