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第二部
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唯香は、職務質問をするかのように畳み掛けてくる洋子の態度に苛々し始めた。洋子は少し間をおいて、虚空を見つめながら、
「私ね、タケルさんのことが好きだったの。一目惚れだった。だから、タケルさんと同じゼミに入ったのよ」
と言った。
「へえー。意外ね。真面目で優秀なあなたのことだから、タケルみたいなチャラい男が好みだなんて想定外だったわ。もしかして、それが原因なわけ?」
(なんだよ、逆恨みかよ?)
「私みたいなデブでブスが、女子生徒に大人気のタケルさんを好きになるなんて、分不相応だと思ってるでしょう?」
「べつに。誰が誰を好きになろうと自由なんじゃないの?」
「そんなの、容姿に恵まれて生まれてきた人のきれいごとでしょう?」
「何それ? 卑屈ぅ!」
唯香が吐き出したため息が綿菓子みたいにふわふわと宙に浮いた。
「女は顔じゃない! 世の中にはイケメンとブスのカップルだっているし! って、自分に言い聞かせて、タケルさんに告白したのよ! ここで!」
洋子は、ベンチを拳で叩きながら声を荒げて言った。
「ああ、思い出の場所ってわけね」
唯香は生欠伸をしながら言った。
「そうよ。私にとって最悪の思い出の場所。人気者のタケルさんのまわりには、いつも友達がいて、彼がひとりになるチャンスなんてなかったわ……だから、私、ずっと、彼の行動を監視して、彼がひとりになったら怯まずに告白に行くって決めてたの……そして、とうとう、チャンスが訪れたのよ!」
「へえ……」
まるで、タケルのストーカーみたいだわ、という言葉を唯香は呑み込んだ。
「結果は言わなくてもわかるでしょうけど、玉砕したわ……『ごめんね。俺、好きな女がいるんだ』って言われたわ。でも、彼が私なんか選ぶわけないってことは初めからわかっていたことだし、私は、彼に想いを伝えたことを後悔しなかった。きっぱり諦めようとしたの……それでも、タケルさんへの想いを吹っ切ることはできなくて、もやもやした大学生活を送っていた。しかも、未練がましく、タケルさんと同じゼミに入って、アンタに出会ってしまったのよ! 成瀬唯香っ! アンタ、ゼミの顔合わせの日のこと憶えてる?」
洋子の目は、怒りで充血していた。
「さっきから言ってるけど、私、そんな昔のこと、詳しく憶えていないのよ。ねえ、なんなの? 要するに、あなたが恋焦がれていたタケルと私が付き合っていたことが許せなくて、卒業して十数年もの間ずっと恨み続けて、今になって私に嫌がらせをしているってわけ? だとしたら、あなたって、ちょっと異常だわ。大切な人を私に殺されたとかいう事情があるなら話は別だけど」
唯香は、洋子の話に辟易していた。
「私ね、タケルさんのことが好きだったの。一目惚れだった。だから、タケルさんと同じゼミに入ったのよ」
と言った。
「へえー。意外ね。真面目で優秀なあなたのことだから、タケルみたいなチャラい男が好みだなんて想定外だったわ。もしかして、それが原因なわけ?」
(なんだよ、逆恨みかよ?)
「私みたいなデブでブスが、女子生徒に大人気のタケルさんを好きになるなんて、分不相応だと思ってるでしょう?」
「べつに。誰が誰を好きになろうと自由なんじゃないの?」
「そんなの、容姿に恵まれて生まれてきた人のきれいごとでしょう?」
「何それ? 卑屈ぅ!」
唯香が吐き出したため息が綿菓子みたいにふわふわと宙に浮いた。
「女は顔じゃない! 世の中にはイケメンとブスのカップルだっているし! って、自分に言い聞かせて、タケルさんに告白したのよ! ここで!」
洋子は、ベンチを拳で叩きながら声を荒げて言った。
「ああ、思い出の場所ってわけね」
唯香は生欠伸をしながら言った。
「そうよ。私にとって最悪の思い出の場所。人気者のタケルさんのまわりには、いつも友達がいて、彼がひとりになるチャンスなんてなかったわ……だから、私、ずっと、彼の行動を監視して、彼がひとりになったら怯まずに告白に行くって決めてたの……そして、とうとう、チャンスが訪れたのよ!」
「へえ……」
まるで、タケルのストーカーみたいだわ、という言葉を唯香は呑み込んだ。
「結果は言わなくてもわかるでしょうけど、玉砕したわ……『ごめんね。俺、好きな女がいるんだ』って言われたわ。でも、彼が私なんか選ぶわけないってことは初めからわかっていたことだし、私は、彼に想いを伝えたことを後悔しなかった。きっぱり諦めようとしたの……それでも、タケルさんへの想いを吹っ切ることはできなくて、もやもやした大学生活を送っていた。しかも、未練がましく、タケルさんと同じゼミに入って、アンタに出会ってしまったのよ! 成瀬唯香っ! アンタ、ゼミの顔合わせの日のこと憶えてる?」
洋子の目は、怒りで充血していた。
「さっきから言ってるけど、私、そんな昔のこと、詳しく憶えていないのよ。ねえ、なんなの? 要するに、あなたが恋焦がれていたタケルと私が付き合っていたことが許せなくて、卒業して十数年もの間ずっと恨み続けて、今になって私に嫌がらせをしているってわけ? だとしたら、あなたって、ちょっと異常だわ。大切な人を私に殺されたとかいう事情があるなら話は別だけど」
唯香は、洋子の話に辟易していた。
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