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第三部
岡崎遼1
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「すごく素敵なご両親ね。お義父さまが大企業の会社役員で、お義母さまが翻訳家だなんていうから、私、すごく緊張して昨日は一睡もできなかったけど、気さくで優しくて、私、安心したわ」
真っ赤な高級外車をスマートに運転する岡崎遼の顔色を窺いながら唯香は不安そうに彼に話し掛けた。
「父も母も、唯香のこと、すごく気に入っていたよ」
彼は口元に笑みを浮かべていたが、運転用のサングラスに隠された彼の目が微笑んでいたのかどうかは確認することができなかった。
彼が、唯香の実家がある群馬県に結婚の挨拶に来たとき、唯香の両親は盆と正月とクリスマスと誕生日が一緒にきたかのように、それは、もう、唯香が見ていて恥ずかしくなるような喜びようだった。そんな両親を見て、唯香は嬉しいと思うと同時に不安も感じていた。唯香の父は公務員、母は運送会社で事務の仕事をしている。決して貧しいわけではないが、所謂、中流階級層だ。明らかに家同士の釣り合いがとれていない。
彼の父親は、
「こんなに綺麗なお方が、バツイチの愚息の妻になってくださるなんて!」
と、唯香のことを本当に気に入ってくれたようだが、母親はシビアだった。何歳になっても、息子を持つ母親という生き物は、手塩にかけて育んできた息子をどこの馬の骨ともわからぬ女に盗られることを喜ばしいことだと思わないのかもしれない。自分の子を持たぬ唯香には理解不能な感情ではあるが。
まあ、それでも、息子がバツイチだという引け目があるのか、母親はふたりの結婚に渋々賛成してくれた。一抹の不安はあるものの、事は順調に運んでいる。
(大丈夫! 今度こそ上手くいく!)
唯香は、心の中で、自分を鼓舞した。
真っ赤な高級外車をスマートに運転する岡崎遼の顔色を窺いながら唯香は不安そうに彼に話し掛けた。
「父も母も、唯香のこと、すごく気に入っていたよ」
彼は口元に笑みを浮かべていたが、運転用のサングラスに隠された彼の目が微笑んでいたのかどうかは確認することができなかった。
彼が、唯香の実家がある群馬県に結婚の挨拶に来たとき、唯香の両親は盆と正月とクリスマスと誕生日が一緒にきたかのように、それは、もう、唯香が見ていて恥ずかしくなるような喜びようだった。そんな両親を見て、唯香は嬉しいと思うと同時に不安も感じていた。唯香の父は公務員、母は運送会社で事務の仕事をしている。決して貧しいわけではないが、所謂、中流階級層だ。明らかに家同士の釣り合いがとれていない。
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「こんなに綺麗なお方が、バツイチの愚息の妻になってくださるなんて!」
と、唯香のことを本当に気に入ってくれたようだが、母親はシビアだった。何歳になっても、息子を持つ母親という生き物は、手塩にかけて育んできた息子をどこの馬の骨ともわからぬ女に盗られることを喜ばしいことだと思わないのかもしれない。自分の子を持たぬ唯香には理解不能な感情ではあるが。
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唯香は、心の中で、自分を鼓舞した。
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