成瀬さんは世渡りが下手すぎる

喜島 塔

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第三部

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「そうだったんだあ。ああ! それで、あの時、唯香ちゃん、せいらちゃんが語学堪能な理由なんて俺に尋いてきたんだね。唯香ちゃんの方から、せいらちゃんの話題を切り出すなんて珍しいって思ったから、憶えてるよ」

「あ? 何その言い方? まるで、私が、アンタに未練たらたらみたいじゃないのよ? この自意識過剰のアホ男っ!」

 唯香に気圧されたタケルが、子犬のように瞳をうるうるさせながら、

「えっ? 違うの? だって……唯香ちゃん、せいらちゃんの話すると、いつも不機嫌になるじゃん」

「思い上がるんじゃないわよ! 私が嫉妬してるのは……紀伊せいらの才能と家柄よっ!」

 思わず、タケルが吹き出した。唯香もつられて笑った。

「ほんと、そういうところ、変わらないよねえ。まあ、俺は、唯香ちゃんのそういうバカ正直なところも好きだけどねっ」

「アンタにだから本音を言ったのよっ。他の人の前じゃ“余裕のある女”を演じきってやるわよっ!」

「で……できるかなあ?」

 タケルが唯香を冷やかすように言った。

「やってやるわよっ! 私は『スナック美沙』で世渡り上手になるための修行をしてきたんだからっ」

「う、うん……そうだよね……ていうか、唯香ちゃん、向こうで通う学校とか住む家とか決まってるの?」

 タケルが心配そうに唯香に尋いてきた。

「決まってるわよ。このために、英語の勉強もしていたし……岡崎さんにプロポーズされたときは舞い上がっていたから、彼と近い将来、海外移住するために始めたことなんだけどね。少し予定は変わっちゃったけど、まあ、結果オーライって感じよね」

「唯香ちゃんって、そういうところは本当しっかりしてるよねえ。俺が言える立場じゃないことは分かってるけどさ……向こうに行っても、たまには連絡してよ?」

「そうね……最高にいい男捕獲して、ラブラブな写真送りつけてあげるわ」

「うん! 楽しみに待ってるからねっ!」

 安心したタケルは、無垢な少年みたいに、ニカっと笑った。
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