片翼を失ったピアニスト

喜島 塔

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第六章

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「丁度、松田さんが手空いたから、検品と品出し、谷村くんとチェンジしてもらっても大丈夫?」
「大丈夫っす!」
 川島と俺の返事がハモった。二人の承諾を得た店長が、松田美波を呼びに行っている間に、
「いやあ……いつ見ても、店長、お美しいっすよねー。俺、店長になら弄ばれてもいいっすわー」
 と、川島直輝が鼻の下を伸ばしながら言った。
「何言ってるんだ、アホかっ! 手を動かせ、手を!」
 副店長という立場上、表面上そう言ってはみたものの、俺も、高嶺アリサに興味がないか? と問われれば、大嘘になる。

 三年前、前任の渡部店長が問題を起こし左遷された。その後任として店長に配属されたのが彼女だ。イギリス人と日本人のハーフである彼女は、アナウンサーの滝川クリステル似の美女で、その上聡明だ。誰もが羨む小さな顔には端正なパーツがバランス良く配置されており、ナチュラルなショートカットヘアが彼女の美しさをより際立たせている。これだけの恵まれた容姿と頭脳に恵まれながらも、驕ることなく、媚びることなく、真摯に仕事に取り組む様は、いつも自信に満ち溢れ、さながら、一輪の大輪の薔薇の花のように凜とした雰囲気を放出していた。美しい容姿を持ちながらも、いつも何かに怯え続け、今にも崩れ落ちてしまいそうな俺の母とは真逆の美しさを持った彼女に俺は、強く惹かれ、人生初の告白をし玉砕した。そのことを、腐れ縁の友人である、佐藤スバルは、
「イケメンモテモテ男のオマエでも女にフラれることなんてあるんだなあ。ていうか、オマエから女に告って、しかも玉砕するとか人生お初じゃね?」
 と言って、下卑た笑いを浮かべた。玉砕した俺は、退職するつもりでいたのだが、彼女は、
「今、あなたが私に対して言ったことは、なかったことにしましょう。私は、谷村副店長の仕事を大いに評価しています。あなたの替わりになるような人はそうそういないでしょう。あなたと私なら“ビジネス上の最高のパートナー”となることが可能でしょう。 これって、単なる、恋人同士よりも、もっと高尚で素晴らしい関係だと思いませんか?」
 彼女の言葉に巧いこと乗せられた俺は“彼女の最高のビジネスパートナー”を目指して、日々勤しんでいる。
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