39 / 121
第六章
4
しおりを挟む
驚くくらい早く月日は流れ、気付けば、五年経っていた。
俺は二十六歳に成っていた。
兄を演じ続けてきた結果、皮肉にも俺に対する仕事の評価は上々で、副店長にまで昇格していた。俺は、世話になった祖母の家を出て、再び一人暮らしを始めた。
四月下旬、ゴールデンウィークを目前に控えて 『ma couleur』のショップスタッフたちは慌ただしくその準備に追われていた。この日のシフトは、早番六名、遅番五名の十一人体制。『ma couleur』では、早番は九時三十分から十八時三十分、遅番は十一時三十分から二十時三十分。スタッフは、全員で十五人。内三人は、扶養範囲内でしか働くことができない兼業主婦などのパートタイマーのスタッフだ。繁忙期直前ということもあって、この日は、店長の高嶺アリサと副店長の俺が通しシフトになっていた。通しシフトとは、要するに、朝イチからラストまでぶっ通しで働くということだ。ショップ前には、夥しい量のパッキン(ダンボール箱)が、馴染みの運送会社のスタッフにより次々と積み重ねられていった。中身は、勿論、ゴールデンウィーク用の商品だ。
「全部で五十六箱ですね。こちらにサインをお願いします」
二十代前半くらいに見える見慣れない若い運送スタッフが配送伝票を俺に手渡してきた。格闘技でもやっているのだろうか? ガッチリとしたその身体は良質な筋肉で覆われていた。俺は伝票にサインをしながら、
「今日は山川さんはお休み?」
と、尋ねてみた。山川さんというのは、いつもうちのショップに商品を搬入してくれている四十代の運送スタッフだ。
「山川さんは、ギックリをやってしまいまして、急遽、俺が山川さんの代わりに担当させて頂くことになりました。ぶっちゃけ、山川さん居ないと厳しいっす」
磯田というネームプレートを付けた青年は、そう言ってはにかんだ。そのシャイな笑顔にはまだ十代の少年のあどけなさが残っていた。
「そっかー。この時期に山川さん不在は厳しいだろうね。頑張ってね!」
「はい、ありがとうございます!」
そう言って、磯田くんは、足早に次のショップへと走って行った。店内では、レジ当番の松田美波がレジの釣り銭の準備をしている。北澤沙都と三条マユリは店内の掃除をしている。俺と川島直輝の二人で、五十六パッキンをバックヤードまで運び入れ、次々とパッキンを開封し検品作業をしている最中、高嶺店長が俺たちに声を掛けてきた。
俺は二十六歳に成っていた。
兄を演じ続けてきた結果、皮肉にも俺に対する仕事の評価は上々で、副店長にまで昇格していた。俺は、世話になった祖母の家を出て、再び一人暮らしを始めた。
四月下旬、ゴールデンウィークを目前に控えて 『ma couleur』のショップスタッフたちは慌ただしくその準備に追われていた。この日のシフトは、早番六名、遅番五名の十一人体制。『ma couleur』では、早番は九時三十分から十八時三十分、遅番は十一時三十分から二十時三十分。スタッフは、全員で十五人。内三人は、扶養範囲内でしか働くことができない兼業主婦などのパートタイマーのスタッフだ。繁忙期直前ということもあって、この日は、店長の高嶺アリサと副店長の俺が通しシフトになっていた。通しシフトとは、要するに、朝イチからラストまでぶっ通しで働くということだ。ショップ前には、夥しい量のパッキン(ダンボール箱)が、馴染みの運送会社のスタッフにより次々と積み重ねられていった。中身は、勿論、ゴールデンウィーク用の商品だ。
「全部で五十六箱ですね。こちらにサインをお願いします」
二十代前半くらいに見える見慣れない若い運送スタッフが配送伝票を俺に手渡してきた。格闘技でもやっているのだろうか? ガッチリとしたその身体は良質な筋肉で覆われていた。俺は伝票にサインをしながら、
「今日は山川さんはお休み?」
と、尋ねてみた。山川さんというのは、いつもうちのショップに商品を搬入してくれている四十代の運送スタッフだ。
「山川さんは、ギックリをやってしまいまして、急遽、俺が山川さんの代わりに担当させて頂くことになりました。ぶっちゃけ、山川さん居ないと厳しいっす」
磯田というネームプレートを付けた青年は、そう言ってはにかんだ。そのシャイな笑顔にはまだ十代の少年のあどけなさが残っていた。
「そっかー。この時期に山川さん不在は厳しいだろうね。頑張ってね!」
「はい、ありがとうございます!」
そう言って、磯田くんは、足早に次のショップへと走って行った。店内では、レジ当番の松田美波がレジの釣り銭の準備をしている。北澤沙都と三条マユリは店内の掃除をしている。俺と川島直輝の二人で、五十六パッキンをバックヤードまで運び入れ、次々とパッキンを開封し検品作業をしている最中、高嶺店長が俺たちに声を掛けてきた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
神楽坂gimmick
涼寺みすゞ
恋愛
明治26年、欧州視察を終え帰国した司法官僚 近衛惟前の耳に飛び込んできたのは、学友でもあり親戚にあたる久我侯爵家の跡取り 久我光雅負傷の連絡。
侯爵家のスキャンダルを収めるべく、奔走する羽目になり……
若者が広げた夢の大風呂敷と、初恋の行方は?
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる