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第七章
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渡部店長というのは、高嶺アリサが店長として配属される前まで『ma couleur』で店長をやっていた人だ。俺のショップスタッフの採用面接をしてくれた人で、猫柳アウトレットモールのオープン当初から店長職に就いていた仕事のできる人で、スタッフからも、頼りになる男として信頼されていた。
渡部店長が狂い出したのは、三浦さおり、というハタチにしてバツイチで四歳の男児がいるというアルバイトの女性を雇い入れてからだ。十六歳で子どもを産んだ女、などというと、ヤンキーがギャルか……ともかく、早熟で派手な女をイメージしがちなのだが、この三浦さおりという女のビジュアルは、驚くほど地味で、そして、仕事の飲み込みが早く勤勉だった。そのギャップに惹かれたのか、渡部は、三浦を溺愛し、日に日に仕事が疎かになっていった。二人が付き合っているということは、あっという間にスタッフ全員に知れ渡り、三浦以外疎かに扱われたスタッフ全員と渡部との信頼関係はあっという間に崩壊。密かに渡部に想いを寄せていた他の女性スタッフが本社にこのことを密告し、本社の上層部にこのことを知られた渡部は、地方(僻地)にある配送センターに左遷され、三浦さおりは解雇された。あれだけ、スタッフから信頼されていた男が、たかが、女ひとりに人生を狂わされた。俺は、寂しくショップを後にする渡部店長の後ろ姿と亡き双子の兄“泉”を重ね合わせずにはいられなかった。彼らが選び、愛した女は、本当に彼らが今まで積み上げてきた全てのものを捨て去るに値するほど“価値のあるもの”だったのか? その一件以来、職場恋愛禁止、あるいは、バレないようにやれ、というのが職場内では暗黙の了解となっている。あの事件を目の当たりにした直後に高嶺アリサに告った俺も俺だが、マユリもマユリだ。そして、自暴自棄になっていたとはいえ、マユリとの交際にOKをしてしまった俺も俺だ。人間という生き物は、禁止されると抗いたくなるという面倒な本能を持った生き物のようだ。
「忘れるわけないじゃん!」
「なら、もうこれ以上、俺の前でくだらないことを言うな!」
「くだらない? 何がくだらないって言うの? アンタの心がいつまで経っても、クリステルを忘れないから……だから、私は気を病んでいるのよ! ねえ……本当は、クリステル、舜と付き合いたかったんじゃないの? でも、渡部店長の件を聞かされていたから、渋々断った……ねえ……そうなんじゃない?」
流石に、被害妄想もここまでくると、俺も付き合いきれなくなってくる。こっちまで気がおかしくなりそうだ。
渡部店長が狂い出したのは、三浦さおり、というハタチにしてバツイチで四歳の男児がいるというアルバイトの女性を雇い入れてからだ。十六歳で子どもを産んだ女、などというと、ヤンキーがギャルか……ともかく、早熟で派手な女をイメージしがちなのだが、この三浦さおりという女のビジュアルは、驚くほど地味で、そして、仕事の飲み込みが早く勤勉だった。そのギャップに惹かれたのか、渡部は、三浦を溺愛し、日に日に仕事が疎かになっていった。二人が付き合っているということは、あっという間にスタッフ全員に知れ渡り、三浦以外疎かに扱われたスタッフ全員と渡部との信頼関係はあっという間に崩壊。密かに渡部に想いを寄せていた他の女性スタッフが本社にこのことを密告し、本社の上層部にこのことを知られた渡部は、地方(僻地)にある配送センターに左遷され、三浦さおりは解雇された。あれだけ、スタッフから信頼されていた男が、たかが、女ひとりに人生を狂わされた。俺は、寂しくショップを後にする渡部店長の後ろ姿と亡き双子の兄“泉”を重ね合わせずにはいられなかった。彼らが選び、愛した女は、本当に彼らが今まで積み上げてきた全てのものを捨て去るに値するほど“価値のあるもの”だったのか? その一件以来、職場恋愛禁止、あるいは、バレないようにやれ、というのが職場内では暗黙の了解となっている。あの事件を目の当たりにした直後に高嶺アリサに告った俺も俺だが、マユリもマユリだ。そして、自暴自棄になっていたとはいえ、マユリとの交際にOKをしてしまった俺も俺だ。人間という生き物は、禁止されると抗いたくなるという面倒な本能を持った生き物のようだ。
「忘れるわけないじゃん!」
「なら、もうこれ以上、俺の前でくだらないことを言うな!」
「くだらない? 何がくだらないって言うの? アンタの心がいつまで経っても、クリステルを忘れないから……だから、私は気を病んでいるのよ! ねえ……本当は、クリステル、舜と付き合いたかったんじゃないの? でも、渡部店長の件を聞かされていたから、渋々断った……ねえ……そうなんじゃない?」
流石に、被害妄想もここまでくると、俺も付き合いきれなくなってくる。こっちまで気がおかしくなりそうだ。
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