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第十一章
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セミファイナル進出の朗報に歓喜した祖母と母が、決戦前日に急遽現地入りした。
「二人とも、まさか、俺がここまで残るとは思ってなかったんでしょう?」
「そ……そんなことないわよ、ねえ? 舜くんなら、きっとファイナルまで残るって思ってたわよ、ね? お母さん?」
「も……もちろんさ!」
嘘が下手なところは、母子そっくりだ。
「まあ、期待され過ぎるのもプレッシャーだし……良い意味で二人の期待を裏切ることができて良かったよ」
そう言って、三人で笑った。
「ところで、予選もギリギリのラインだったみたいだし、俺も、ぶっちゃけここまで残ることができるとは思ってなかったから……二人の分のチケット買ってないんだけど……もう、チケット売り切れてて手に入らないらしいんだ。どうしよう?」
「チケットなら心配ないわよ!」
そう言って、母は、二枚のチケットをしたり顔で見せびらかした。
「ええー? 良く手に入ったねー! 裏の手で高いお金出して手に入れたんじゃないでしょうね?」
「まさか! 一年前からウィーンに住んでいる音大時代のお友達にお願いしておいたのよ!」
「うわあー、プレッシャーなんだけど……」
「大丈夫! 私たちは家族だからね、他の誰よりも舜くんのピアノがいちばんだと思っているけど、メディアや関係者は、この子が優勝候補だと思ってるみたいだね」
そう言って、祖母は『ヴィクトール国際ピアノコンクール』の開催会場である「楽友協会」で配られていたパンフレットを俺に見せた。そのパンフレットには、優勝筆頭候補としてロシアの、アレクセイ=ドミトリエフの名が挙げられていた。その他に、アメリカと、中国、韓国、ドイツのコンテスタントの名前が挙げられており、俺は完全にノーマークのようだ。二つ折りのパンフレットの最後のページの下の方に、見落としてしまうほど小さな文字で「夭逝した日本人ピアニスト 谷村泉の双子の弟、谷村舜 セミファイナル進出への快挙!」と書かれていた。
「あっ! そっか! 誰も、俺がファイナルまで進出するなんて思っていないんだね!」
「そういうことさ! 逆に気楽だろ? のびのびと舜くんのピアノを弾くことができるんだよ!」
そう言われて、俺は気が楽になった。と同時に、ダークホースが優勝したら面白いだろうな、とも思った。
「二人とも、まさか、俺がここまで残るとは思ってなかったんでしょう?」
「そ……そんなことないわよ、ねえ? 舜くんなら、きっとファイナルまで残るって思ってたわよ、ね? お母さん?」
「も……もちろんさ!」
嘘が下手なところは、母子そっくりだ。
「まあ、期待され過ぎるのもプレッシャーだし……良い意味で二人の期待を裏切ることができて良かったよ」
そう言って、三人で笑った。
「ところで、予選もギリギリのラインだったみたいだし、俺も、ぶっちゃけここまで残ることができるとは思ってなかったから……二人の分のチケット買ってないんだけど……もう、チケット売り切れてて手に入らないらしいんだ。どうしよう?」
「チケットなら心配ないわよ!」
そう言って、母は、二枚のチケットをしたり顔で見せびらかした。
「ええー? 良く手に入ったねー! 裏の手で高いお金出して手に入れたんじゃないでしょうね?」
「まさか! 一年前からウィーンに住んでいる音大時代のお友達にお願いしておいたのよ!」
「うわあー、プレッシャーなんだけど……」
「大丈夫! 私たちは家族だからね、他の誰よりも舜くんのピアノがいちばんだと思っているけど、メディアや関係者は、この子が優勝候補だと思ってるみたいだね」
そう言って、祖母は『ヴィクトール国際ピアノコンクール』の開催会場である「楽友協会」で配られていたパンフレットを俺に見せた。そのパンフレットには、優勝筆頭候補としてロシアの、アレクセイ=ドミトリエフの名が挙げられていた。その他に、アメリカと、中国、韓国、ドイツのコンテスタントの名前が挙げられており、俺は完全にノーマークのようだ。二つ折りのパンフレットの最後のページの下の方に、見落としてしまうほど小さな文字で「夭逝した日本人ピアニスト 谷村泉の双子の弟、谷村舜 セミファイナル進出への快挙!」と書かれていた。
「あっ! そっか! 誰も、俺がファイナルまで進出するなんて思っていないんだね!」
「そういうことさ! 逆に気楽だろ? のびのびと舜くんのピアノを弾くことができるんだよ!」
そう言われて、俺は気が楽になった。と同時に、ダークホースが優勝したら面白いだろうな、とも思った。
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