惚れ薬を飲ませようとしたら実は媚薬でした!?

田端善治

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3話 魔法薬の効能2

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 担当職員に小言を言われつつも無事任務を遂行し、研究室へ向かう廊下を歩いていると、何やら華やかで香り高い匂いが漂ってきた。はて、このような匂いに嗅ぎ覚えはあっただろうか。
 匂いの元を探るべく急ぎ足で研究室に戻ると、リックがティーポットから茶器を温めるティーコジーを外している姿を発見する。私の帰還に気付いたのか、こちらに振り向いて手招きをした。
 リックの側に駆け寄ると、華やかな香りが強くなっていく。

「間に合ったか?」
「うん。さっきはありがとう。それより今なんの飲み物淹れてるの?」
「昼時にアンが買ってきた聖夜祭限定ブレンドの紅茶。なんか手詰まり状態に見えたから、これ飲んでちょっと休憩しよう。」

 こういう気が利くところに私は惚れたんだなーとしみじみ思いながら、手渡されたティーポットをソファの元へ持っていき、カップへ注いでいく。透き通るようなルビー色の水色に思わず見惚れてしまう。
 リックが用意してくれたお茶菓子を机に並べ、昼間同様に2人で肩を並べてソファに沈み込む。

 激しく湯気の立つ紅茶を一口含むと、想像以上に甘い味が舌に広がる。去年も同じブレンドを購入したが、ここまで甘くなかったような……?彼の紅茶を淹れる腕が上がって、今まで出しきれなかったフレーバーを抽出できるようになったのだろうと解釈し、そのまま飲み進める。
 私が紅茶を飲んだことを確認し、リックが話し始める。

「あの薬ってさ、お前も使う予定なのか?」
「えっ?まあ、合法なものであれば私も使ってみたいな……とは思ってるかも。」
 使う相手がいるのかよ、と彼は面白くなさそうにそっぽ向きながら呟く。

「……友達から薬に関する噂話を聞いたか?」

 口に含んでいた分を吹き出しそうになったのを無理矢理抑え込む。
 待て待て待て待て。惚れ薬の実態に気付いてないか……!?

「リックは知ってるの?」

 勘違いであってくれと願いながら恐る恐る尋ねる。


「そりゃ最近下町で話題になってるからな。魔法薬を研究する者として把握してないはずがない。」


 恋愛関係の魔法薬だから研究バカのリックは興味ないと思い込んでたーー!!まさか恋愛ごとに今まで全く見向きもしなかった彼が、女子の間で話題になってた胡散臭い恋愛グッズを知ってるなんて思ってもみなかった!

 作戦失敗。流石に惚れ薬をしてる相手に飲ませても警戒心が強すぎて本来の効き目が出ないだろう。諦めて研究していた魔法薬について白状する。

「……片想いをしてる相手に飲ませると恋が成就するジュース、だよね?」
「片想い……?」
 眉をピクリと持ち上げ、怪訝な顔をする。何か間違ったことを言っただろうか。彼は手を顎に当てて考える素振りを見せた後、
「詳しい使い方について聞いてないか?」と聞いてきた。
「うーん、使い方についてはあまり聞いてないかも。これって使用相手にそのまま飲ませるんじゃないの?」

 さっきから己のアホさを晒しているように感じ、羞恥によるものなのか知らないが、身体が熱を帯び始める。
 彼は先程の動揺など無かったかのように普段通りのトーンで語り出す。


「この魔法薬は直接接種すると悶絶する程甘いから、大抵飲み物に混ぜて使用するんだ。」

 どっからどう見ても危険そうなピンクだったし、激甘なのも納得がいく。

「溶けやすさとピンク色の隠れやすさから、熱い紅茶に混ぜることがオススメされている。」

 確かに、紅茶なら元々赤みを帯びているから多少ピンクがかっていても、そういうブレンドかな?ってスルーされるね。それにしても、さっきから部屋が熱いような。

「飲んだ後割とすぐに身体が火照り出し、全身が刺激を求め始める。」

 なるほど、即効性の薬だったんだ。……ん?

 ふと自分の身体の様子を確認する。全身が赤みを帯びて汗ばみ、心臓が素早く鼓動を刻む。口から漏れる吐息は熱く、衣類に触れる肌がピリピリと刺激を受ける。

 私は思考能力が奪われていくような感覚に襲われているのにも関わらず、リックは涼しげな表情で紅茶を飲み続けている。
 時間が経過しても身体の火照りが収まる気配がしない。頬の熱さに涙が浮かび、服が擦れる刺激から解放されようと身を控えめにくねらせても、解放される様子はない。胸の先端が尖り始めていることや、下腹部の疼きには知らんふりをする。


「リック、もしかして私の紅茶の中に……入れた?」


 彼は口角を上げてイタズラが成功したことを喜ぶ少年のように悪い笑みを浮かべた。
 頭上から指先まで雷が落ちたような衝撃が走る。

「男子の間では違う内容で噂が広まってるんだ。」
「違う……?両思いになれないの?」
「最終的にはなれるかもな。俺が以前騎士団の連中に聞いた話だと『意中の相手を堕とせる薬』って言われてたな。」
「……?それって女子が噂してる話と一緒じゃない?」
「そっちのは『心を落とす』薬だろ?でも実際は『身体を堕とす』薬なんだ。多分、下世話な話に耐性がなくても惹きつけられるように改変されたんだろうな。」

 つまり、アレは惚れ薬なんかじゃないーー。

 リックは私の異変に気付いているのだろう。よく思い返してみたら、飲み干した直後からずっと私を見つめていたような気がする。
 私の耳元に唇を寄せ、正体を知りたいか、と吐息を多く含んだ声で囁く。
 何か良からぬ事実を突きつけられそうな雰囲気に唾を飲み込む。
 
「あの魔法薬はな、」

ーー強力な催淫魔法を練り込んだ媚薬らしいぞ。
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