White cat in Wonderland~その白い猫はイケメンに溺愛される~

ハルカ

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Little Visitor~大切なもの~【スピンオフ】

第22話

「せっかくなので、にゃんくんを出してあげませんか?」

 ルイの提案に、グスターヴァルは驚きを隠せなかった。
「にゃんを出す? いや、それは――」
「大丈夫ですよ、グスターヴァル。扉には“来客中”と表示しておきましょう。そうすれば誰も開けません。念のため、鍵も閉めておけば問題ありません。どうです? それなら安心でしょう?」
 慌てて反論しようとしたグスターヴァルに、ルイはにこりと微笑みながら重ねた。
「いや、しかし……」

「まぁ、いいんじゃないか?」

 困った顔のグスターヴァルに被せるように、セバスチャンが口を挟んだ。

「セバスチャン……」
 そもそも、にゃんをケージに入れるよう指示したのはセバスチャンだ。その本人が許可するのであれば、とグスターヴァルはぼそりと声を漏らし、ちらりとにゃんを見る。
 にゃんは相変わらずケージの隙間から前足を伸ばし、「にゃー」と鳴いていた。

(自分が気を付けていれば大丈夫かもしれない……)

「そうだな……」
 ふぅっと息を吐き、グスターヴァルはケージへ歩み寄る。
「にゃー、にゃーっ」
 すぐ目の前まで来ると、にゃんは何かを察したのか、ただ嬉しいだけなのか、必死に鳴きながら見上げてくる。
「にゃん、暴れるな。ちょっと待て」
 扉に手を掛けた途端、にゃんはステップを上り下りして落ち着きなく動き回った。声をかけても猫が言うことを聞くはずもない。
「困ったな……」
 扉を開けた瞬間に飛び出しそうで、タイミングが掴めず頭を抱える。
 魔法で落ち着かせることもできるが、動物に魔法を使うのは危険だと昨日聞いたばかりだ。


「グスターヴァル、注意を別に向けさせればいい」

 声をかけてきたのはセバスチャンだった。困っている様子に気づいたのだろう。

「なるほど」
 グスターヴァルはすぐに頷き、先ほど精霊と遊んでいたにゃんの姿を思い出す。魔法で白い鳥の羽根を一枚出し、ケージの中へ移動させた。
 動き回っていたにゃんの耳がぴくりと動き、次の瞬間にはじっと羽根を見上げて止まった。
 ふわふわと舞う羽根に、にゃんの瞳がわずかに大きくなる。先ほど見た“ハンターの目”だ。

(よし、注意が逸れた)

 その瞬間を逃さず、グスターヴァルはそっと扉を開け、2段目のステップに座っているにゃんを両手で掴んだ。
「にゃっ」
 小さく鳴いたが、そのまま外へ取り出す。腕に抱くと、にゃんは羽根が気になるのかじたばたと暴れた。
「お前は本当に羽根が好きなんだな……」
 ぼそりと呟き、羽根をにゃんの目の前へ移動させる。にゃんは嬉しそうに手を伸ばし、必死に掴もうとする。

「さて、グスターヴァル。どの味にしますか?」

 にこやかに眺めていたルイが、猫用おやつの袋を見せてきた。

「あぁ……そうだな。ささみは好きなようだったから、最初は“チキン味”にしてみるか」
 にゃんを落とさないよう抱いたまま、袋を見つめながら答える。
「そうですね。それがいいですね。では、お皿を……」
 柔らかく笑い、ルイは魔法で小さな平皿を出した。屈んで床に置き、袋の中身を入れる。
 カラカラッという軽い音と、ふわっと強い匂いが漂う。
 その瞬間、にゃんは羽根を離し、今度は降りようと暴れ始めた。
「待て、にゃん」
 落とさないよう掴み直し、ゆっくりと屈んで皿の前へ置く。
 にゃんは少し匂いを嗅いだあと、すぐにカリッカリッと軽快な音を立てて食べ始めた。
「すごいな……これが、おやつか」
 しゃがみ込み、にゃんの横でじっと見つめる。茶色い小さなクッキーのようだ。チキン味かどうかは分からないが、それらしい匂いはする。
 一粒つまんでみる。軽くて硬い、自分の指先より小さな物。見た目と匂いだけでは原材料は分からない。
「美味しそうに食べていますね」
 近くで眺めていたルイが、先ほどよりも柔らかい表情で言った。
「これは、一体何でできているんだ? 問題ないとは思っているが……」
 把握できないものをにゃんが食べるのは、やはり少し不安だ。

「心配ない。原材料は肉や魚、穀物だ。それに猫に必要な栄養成分も入っている。おやつは味重視で、栄養面はそこまで細かく設定されていないことが多い。猫は好んで食べるが、あげすぎると肥満のもとになる。1日に1、2回、少しずつがいいだろう」

 セバスチャンが書類に何か記しながら答えた。集中しているように見えて、こちらを気にしていたらしい。

「なるほど……」
 顎に手を当て、にゃんを見下ろす。
「あ……この袋、全部入れちゃいましたね」
 ルイがふと気づいたように呟いた。小さな袋なので多くはないが、1回分としてはどうなのだろう。
「……今日は仕方ないだろう。明日からは半分ずつ、2回に分けるのがいいかもな」
 ペンを止め、セバスチャンが溜め息まじりに言った。
 やはり量としては多かったようだ。

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