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13.見つからないナリッタ
しおりを挟む一方ナリッタが居なくなったことに気づいたリボンとカダールはナリッタを必死に探した。
二人はナリッタが住む家に置いて行かれたのだ。当たり前のように、ナリッタがすべてをやってくれると信じて疑わなかった。
カダールは自分を伯爵籍から抜かせても、自分を欲したのだ。
ナリッタにはそれだけの責任があると考えていた。
それに何よりナリッタは伯爵家の者からプレゼントをもらっていた。あの箱はきっと宝石だ。
あの宝石は自分がもらうべきものだ。それなのにどうしてナリッタなんかに。
だから必死にナリッタを探した。
だが、遠くまで歩いて行ってもナリッタは見つからなかった。
もう家に帰っているかもしれない。そんな淡い期待を胸に家に帰っても、そこにあるのはリボンの姿だけだった。
家の中はまるで賊でも入ったかのように荒らされていた。
だが金目のものはなかったのだろう。きっと金目のものがあったのならリボンはここにいないだろうから。
「あの女はどこ行ったのよ?
ったく、探すこともできないわけ?だから妻にも捨てられるのよ!」
「リボン、あまり調子にのるなよ。
今までさんざん僕のおかげで今までどれほど優遇されてきたか!
それ以上言うとどうなるかわからないぞ」
「はっ!!
どうなるっていうのよ?またぶつっていうの?
あんたなんて金さえなきゃただのさえないくそ男じゃない!
早く今日の夜ご飯をどうするか考えなさいよ!!!」
その言葉にイライラしながらもカダールは家を出た。
悔しいがリボンの言う通り腹は減っている。キュリールに言われた通り来客を待っていて、話が終わったと同時にここへ連れてこられたのだ。今日は1日何も食べていない。それなのに手持ちの金もない。普段だったら伯爵家と言うだけで皆が何を言わずとも物を出してくれる。その後伯爵家に請求が届き、それだけでよかったのだ。
だがいくらなんでも今同じことをやれるはずがない。たとえ情報が行き渡っていないにせよ平民が貴族を詐称すればそれだけで逮捕。
今のカダールの立場ならどんな罰が与えられるかわからない。
そんな罪を犯すだけの度胸はカダールにはないのだ。
どうしたらこの状況を打破し、1発逆転のチャンスを掴むことができるだろうか。
そんなことを必死で考えながら、答えも見つからないまま街についた。
何からすべきなのか……金、飯……先はどっちか。
「お兄さん、こんなところでもしかして女にでも困ってるのかい?あっちでなんだってしてくれる女がいるよ。安くしてやるように口きいてやろうか?」
40代くらいだろうか。
男が寄ってきて、そんなことを言った。
女は好きだが今必要なのは飯か金だ。どちらかというと、いらない女がいるくらいだ。
そう思ってハッとした。
そうだ!僕にはあるじゃないか。
カダールはその男性と言葉を交わした後、1軒の店に立ち寄ると、すぐにリボンのところへ戻った。
「リボン、食事をできるところを見つけた。
早く行こう!!」
そう言って手を引くカダールに嬉しそうに頬を緩めたリボンだったが、外を見てすぐに不機嫌になった。
馬車の用意がないのだ。
これでは歩いていかなければいけない。
「ちょっと、馬車を用意してよ!
歩いて街まで行くなんて最悪。歩いていくのなんて今日だけだからね」
そう言いながらもカダールに手を引かれながらリボンは足を進める。
リボンもカダール同様空腹なのだ。
今まではお腹が空けば誰かを呼び、すぐに何かが出てきた。我慢なんて言葉とかけ離れた場所で生活していたのだ。
家を出ただけでそれが変わるはずがない。
お腹がすいたのだから今食べたい。そのために少し歩くくらいなら、今日だけ我慢してあげよう、そんな風に思っていたのだ。
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