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15.女主人になる
しおりを挟む「カダールはよかったの?」
馬車が進みだすとルドファはリボンに聞いた。
わざとリボンの顔を覗き込むようにして。
「だって、こんなに魅力的なルドファさんに出会ってしまったんですもの。それを遠慮してチャンスをものにしないなんて私には無理ですわ。
…………ルドファさんは………こんな女ははしたなくて嫌ですか?」
「ふふっ、綺麗で積極的な女性は大歓迎ですよ。では私の隠れ家に行きましょうか」
ルドファがリボンの腰を抱いたままの姿勢で馬車に揺られ、しばらくすると馬車はとまった。扉が開くと、そこにはまるでお店のような建物があった。
5階建てくらいありそうな高さの建物だが、店のような華やかな雰囲気でもなく、従業員がいるような雰囲気でもなかった。
だが入り口にはメイドのような女性が立っており、ルドファに「おかえりなさいませ、ご主人様」と言った。
隠れ家と言ったからこじんまりとした建物を想像していた。
それなのに想像よりもかなり大きな建物。
本家はどれだけなのだろう。
いや、本家に行かずともここが自分の家になるのならここだけで十分だ。
ここで女主人になる。
そしたらそれだけで十分贅沢な生活を望める………
家を見た瞬間そんな考えがリボンの頭を駆け巡った。
「ご主人様、こちらの女性は?」
「ああ、ラミー、こちらは今日知り合った女性でね。あちらの貴族部屋で過ごしてもらおうと思ってるんだよ。
リボン、こちらはラミー。この館を取り仕切ってくれているんだ。
ラミー、あそこにあったドレスのサイズは彼女にぴったりだと思うんだよ。どうかな?」
「そうでございますね。サイズも色合いもよくお似合いになるかと思います。
いつまでに仕立て上げればよろしいですか?」
「そうだな。こういうのはあまり急ぎすぎても、余裕を持たせすぎてもよくないからな。
3日後の夕方にしようか。きっととても美しいと思うよ」
「かしこまりました。ではそのように手配致します」
リボンが甘い期待を胸の中いっぱいに広げている中、目の前で広げられるラミーとルドファの会話。
よくわからない内容もあるが、きっとリボンを仕立て上げる算段を話し合っているに違いなかった。3日後の夕方にはきっとリボンに合わせたドレスも仕立て上がるのだろう。
こうしてリボンはラミーに、部屋に案内された。案内された部屋は伯爵家の住んでいた部屋と変わらないほど豪華な部屋だった。
クローゼットにはドレスが何着かかかっている。
ルドファが話していたドレスはきっとこれのことだろう。本当にリボンに合わせたように服のサイズもピッタリだった。
胸元が大きく開いている真っ赤なドレス、誰かの葬儀の時などに着ていきそうな真っ黒のドレスはレースで作られていた。その他、下着が見える位スレスレの大胆なスリットが入っているドレスなど様々な種類のドレスが用意してあった。
確かにこれはリボンの魅力を存分に引き出してくれそうなドレスだ。まるで私がここに来るかのように予測でもしてあったみたいに。
ただ、一つ不満をいうのならその生地。
伯爵家で用意されたものはもっと高級な生地で作られており、その生地だけで高級さが伝わってきた。
それに比べてここのドレスはごわごわしていて、肌触りもあまりよくない。
「ちょっとラミー、今は我慢するけど次に作るドレスは生地に注意して。
これでは私の繊細な肌が傷ついてしまうわ。もっと高級な生地でないとダメよ」
リボンはまるで教えてあげるかのように、ラミーにそう言った。
ラミーはそれを聞き、にこにこしたまま、「さすがルドファ様ですわ。リボン様は貴族部屋の為の方のようですね。これは楽しみです」そういった。
あたりまえじゃない!私はこういう扱いこそが似合う女なの。
落ちぶれたカダールなんて捨てられて当然よ。
それから2日間リボンはまるで伯爵家にいるかのように甲斐甲斐しく世話をされた。
食事は伯爵家ほど豪華ではなかったけれど、それなりに美味しかったし、風呂だって、入れてもらった。少し匂いはきついけれどボディクリームもつけられた。
きっとルドファが好きな匂いなのだろう。だからこれくらい我慢しなければ。
そう思っていた。
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