41 / 88
43.どうか再考を
しおりを挟む「裁判長、どうか再考くださいませんか。
この子は前妻のマリアとその娘ナタリアの被害者でしかないのです。そんなこの娘にそんな重すぎる罰は非道です。どうか、どうか再考を」
この母親にしてこの娘あり。蛙の子は蛙とはよく言ったものだ。
娘と同じように涙ながらに裁判長に訴えるその姿は先ほどまでのアルバにしか見えない。
「再考は行わない。再考が必要となるだけの証拠があれば、再考も検討するが、検討するだけの懸念もない。
そして私からの判決はまだ終わっていない。
先ほどの件、両件において、マルク・パレドス、ヨランダ・パレドス、共に共犯とみなし、マルク・パレドスは北の製鉄所にて30年間の無報酬労働を、ヨランダ・パレドスに関しては最北の修道院で、30年間の無報酬労働を言い渡す。
なお、ヨランダ・パレドスに関しては先ほどの発言により追加で5年間、最下層として働くことを言い渡す」
「なっ!!どうしてよ!!共犯ってどういうことよ!!どうして私まで無報酬労働だなんて!しかも最北ですって!!いやよ!撤回して!!いたっ!!!!いたい!!!!」
裁判長の言葉が響き渡ったと思えば、ギャーギャーとヨランダのけたたましい声が響いてくる。
しかし、兵士に腕を捻りあげられたことでその声はようやく収まった。
それにしても北の修道院だけでなく、最北の修道院だなんて……
修道院は王都の中にもあるが、そこは人々の心を清め、神からのお言葉を頂ける場所でもあり、シスターたちが望まれない子たちの世話をしてくれている場でもある。
私もこの1か月アミおば様と何度か足を運ばせてもらったけれど、とても幸せな空気漂う場所だった。貴族の娘でも3女などで嫁ぎ先が見つからない場合、寄付金を出して、そこでお世話になることもある。
そこにあまり厳しい規則などはなく、わりとゆったりと暮らしているのだそう。
しかし、北の修道院といえばその様子は一変する。重罪を犯した人や、再起の見込みなしと考えられた人たちが送られる場所。そこに行くには馬車で10日走った挙句、途中で馬車をおり、歩いて2日かけて到着するのだそう。雪に囲まれた土地にあるそこは、馬車などが行き交う場所でもないため、逃げ出すこともできない。人の往来がない場所だから道もできず、途中からは歩いていくしかないのだそう。しかし、真実か嘘か、2日の道のりが越えられず亡くなる方もいるという。
そしてそこよりも過酷と言われる最北の修道院。それは北の修道院と同じ雪に囲まれた場所。だが、一つ違うのは雪だけでなく海に中にある山の上にあるということ。
そこは灯台の働きも担っている場所で人が行き来することはほとんどない。荷物の運搬さえ3ヶ月に1度という。
しかも重罪を犯したものを収監する場所でもあるため扱いは酷いと聞く。
看守は肉体派で、手をあげることは日常であり、その他凌辱も行われているという噂さえある。
なぜ噂かと言えば、そこから帰ってきた者が誰もいないからである。
そんな場所に35年…想像しただけでも恐ろしい……
354
あなたにおすすめの小説
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!
さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」
「はい、愛しています」
「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」
「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」
「え……?」
「さようなら、どうかお元気で」
愛しているから身を引きます。
*全22話【執筆済み】です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/09/12
※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください!
2021/09/20
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
心配するな、俺の本命は別にいる——冷酷王太子と籠の花嫁
柴田はつみ
恋愛
王国の公爵令嬢セレーネは、家を守るために王太子レオニスとの政略結婚を命じられる。
婚約の儀の日、彼が告げた冷酷な一言——「心配するな。俺の好きな人は別にいる」。
その言葉はセレーネの心を深く傷つけ、王宮での新たな生活は噂と誤解に満ちていく。
好きな人が別にいるはずの彼が、なぜか自分にだけ独占欲を見せる。
嫉妬、疑念、陰謀が渦巻くなかで明らかになる「真実」。
契約から始まった婚約は、やがて運命を変える愛の物語へと変わっていく——。
【完】貴方達が出ていかないと言うのなら、私が出て行きます!その後の事は知りませんからね
さこの
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者は伯爵家の次男、ジェラール様。
私の家は侯爵家で男児がいないから家を継ぐのは私です。お婿さんに来てもらい、侯爵家を未来へ繋いでいく、そう思っていました。
全17話です。
執筆済みなので完結保証( ̇ᵕ ̇ )
ホットランキングに入りました。ありがとうございますペコリ(⋆ᵕᴗᵕ⋆).+*
2021/10/04
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる