選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由

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59.調子に乗ってんじゃないわよ

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「なっ!!!
なんて無礼なの!???くそ裁判長!!!
こんな裁判長の裁判なんて無効よ!!!
やり直しを請求するわ!!!」

「はははっ!
そんなやり直しが効くなら罪人など出ないですよ。
馬鹿ですねぇ。

よしっ!再度の裁判冒涜行為により3年間のアルジラ服毒に加え、植物研究家の要望によってはほかの植物の服毒を認めることにします」

裁判長はどうもアルバとのやり取りを楽しんでるみたい。
にこにこと笑いながら都度都度刑を上乗せしていっている。それなのにどうしてアルバはさらに言葉を重ねるのか、私には理解もできないけれど。

そしてようやく思いとどまったか、アルバが裁判長を睨みつけながら言葉を発するのをやめた。

「おや、もういいのですか?
それは残念。もっと上乗せしてもよかったのですが、これ以上続ければほかの方の迷惑ですからね。

それでは今日の判決は以上とし、読み上げられなかった者たちの判決に関しては掲示板に張り出しているので確認してくださいね。
それではこれにて閉廷」

その言葉とともに裁判職員たちは立ち上がり、ドアの奥に消えていった。

なんとも………不思議な裁判長だった気がする。
不自然な程ににこにことしたうさんくさい笑顔、でもアルバとのやりとりの時は本当に楽しそうにしていた。

裁判職員が出て行ったのを確認して、私たちも席を立った。

「ナタリア!!!あんた調子に乗ってんじゃないわよ!!
死にぞこないの愛されない子のくせに!!
私が可愛くって誰からも愛されているからってねたまないでよね!!!
こんなこと!!!今に後悔させてやるんだから覚えてなさい!!!!」

拘束されているのにアルバは本当によくしゃべる。
こんな状況なのにまだこんなことがいえるだなんて。

でもきっと私も彼女に会うのは最後だろう。
今まで彼女に言い返したことなんてほとんどない。

やり取りが煩わしかったのもあるけれど、それ以上に愛されている彼女がうらやましくて、それと向き合うのが嫌だから逃げていたんだと思う。
だけど今はそんなことないとわかっている。
私は私のそばにいてくれている人たちからこんなにも愛されている。
アルバが私に向けた敵意にこんなにも反応してくれている人たちがいるんだもの。
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