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全てが終わったと思った瞬間、電子音が鳴った
しおりを挟む自室の扉を開けると、いつもと変わらないはずの部屋が、なぜか少し広く感じられる。
扉を閉めた瞬間、支えていた力がふっと抜けた。
ベッドの端に腰を下ろし、両手をぎゅっと握りしめる。
(……終わったんだ。婚約も、レオンとの未来も)
言葉にしてしまえば簡単だけれど、その重さは胸の奥に沈殿していくばかりだ。
レオンとの婚約が破棄されたことが悲しかったわけじゃない。
どちらかといえばホッとした気持ちもある。
それでもずっと婚約者として生きてきた。
レオンと結婚して、家族になる。
それが当たり前だと思っていたのに、私はそれをあっさり反故にしてしまえる相手だったのだと思うと胸にぽっかりと穴が空いたような喪失感だった。
悔しさも、悲しさも、怒りも、全部が静かに波のように押し寄せてきて――
ぽたり、と膝に涙が落ちた。
誰にも見られないこの場所で、ようやく私は泣くことができた。
本来なら――今日は、人生で一度きりの祝福の日のはずだった。
18歳。
成人と同時に、正式なスキルを授かる成人の儀。
どんなスキルを得るかで、未来も地位も生き方も、大きく変わる。
神殿の大広間には彩り豊かな絨毯が敷かれ、神官たちの詠唱が響き、同年代の令息令嬢は皆、胸を高鳴らせていた。
――なのに。
(どうして私は……こんなにみじめなんだろう)
胸の奥が冷たく、何ひとつ期待できなかった。
婚約破棄の屈辱と、あの嘲笑がまだ心にこびりついていた。
周りは祝福ムードだというのに、まるで自分だけ色のない世界に取り残されたよう。
(もうすでに魔力を自在に操れる人なんか数えられないほどいるのに私には扱える魔力なんてない…
そんな私なんかに……立派なスキルが授けられるはずなかったのよ)
そんな自嘲が脳裏をよぎった瞬間――
――ピッ。
どこからともなく、場違いな電子音が響いた。
「……なに?」
心臓が跳ねる。
次の瞬間、視界の片隅に青白い光が浮かび上がった。
――《自動販売機スキルを起動しますか?》
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