4 / 4
プリンとともに覚醒した“治癒の力”
しおりを挟む視界の片隅に青白い光が浮かび上がった。
――《自動販売機スキルを起動しますか?》
「……え?」
視界に半透明の”画面”が見える。
恐る恐る「はい」と念じると、現れたのは、見覚えのある無機質な商品一覧。
・ジュース
・菓子
その他は鍵がかかった「?」
(やっぱり特別なところもない……)
あるのは右上に小さな数字。
“4”。
(この数字、なに……?まるで入金額みたい…)
でも何はともあれ……せっかく飲めるならやっぱりここは炭酸でしょ!
この世界には存在しない刺激。
それだけで、ほんの少し心が躍った。
「……まずは、サイダー」
ガコン。
透明な液体。中で踊る泡。
ゴクンと口の中に流し込む。
「……ああ、この味」
懐かしさに胸が震える。
その瞬間。
ぽわぁっと身体が熱くなった。
「なにこれ……?」
胸の奥に灯る力。
ステータスが浮かぶ。
魔力:4 → 6
「増えてる……?」
慌てて商品画面を見る。
右上の数字も“6”になっている。
試しにポテトチップスを購入。
袋を開けて食べると、また身体が熱くなる。
魔力:5 → 10
その瞬間、鍵付きだった項目の一つが外れた。
≪軽食≫
「軽食……?」
恐る恐る選択する。
表示されたのは――
・パン
・おにぎり
・おかゆ
・サンドイッチ
(完全にコンビニ……)
だが、胸がざわつく。
これはただの“食べ物”じゃない予感がする。
「……サンドイッチ」
ガコン。
三角にカットされたそれを手に取ると、 ふわりと香る小麦とハムの匂い。
一口。
――じわっ。
今度は炭酸とは違う、内側から染み渡るような熱。
「……っ!」
足元がぐらりと揺れる。
視界に浮かぶ文字。
魔力:9 → 20
「一気に……!?」
胸の奥で、何かが回り始める。
今まで空っぽだったはずの器に、透明な光が注がれていく感覚。
画面が変わる。
新たな項目。
――《デザート》
「……嘘」
指が震える。
・プリン
・ショートケーキ
・アイスクリーム
・チョコレート
(やった!!
この世界では珍しいアイスクリームがある!!
それに高級なチョコレートも!
そしてそしてプリンだなんて!!!!
幸せすぎる!!!)
不思議な確信があった。
これは段階式。
摂取=魔力変換。
食べれば食べるほど、解放される。
「……プリン」
ガコン。
ぷるん、と揺れる黄色。
スプーンを差し込む。
ひと口。
――その瞬間。
ドン、と心臓が打つ。
身体の奥で何かが“繋がった”。
魔力:19 → 32
「……ふァっ!」
空気が震える。
伏せ目がちだった彼女の瞳が、ゆっくりと開く。
淡い灰青の瞳が、鋭く光を帯びる。
視界の中央に、新たな表示。
――《販売商品に“治癒効果”を宿す機能が一部解放されました》
(……治癒、効果……?)
すぐさま別の表示が重なる。
《魔力を消費して、治癒関連の項目を一時展開できます》
私に与えられたスキルの大きな何かが開きかけている――そんな気配。
けれど、その正体を確かめる間もなく、全身がとろけるような眠気に包まれた。
(……治癒のことは、明日でいい……今は……)
思考ごと温い闇に沈み、私は静かに眠りへ落ちていった
11
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く
腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」
――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。
癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。
居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。
しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。
小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
婚約破棄された芋女ですが、北で砂糖を作ったら王国が甘くなりました
ふわふわ
恋愛
「芋女に王妃の座は似合わぬ」
王都の舞踏会でそう告げられ、婚約破棄された公爵令嬢シュガー・ビート。
甘味は南国からの超高級輸入品。蜂蜜も高価。生乳は腐り、硬いパンしかない世界。
王都で“スイーツの出せるカフェ”など不可能――それが常識だった。
傷心のまま北の領地へ戻った彼女は、そこで気づく。
寒冷で乾燥した気候。天然冷蔵庫のような環境。
そして、てんさいという「甘くなる根菜」の可能性。
転生前の化学知識を武器に、てんさい糖の精製に挑むシュガー。
やがて白砂糖の製造に成功し、さらに自作の膨張剤で“ふわふわのパンケーキ”を生み出す。
硬いパンしかなかった世界に、ふわふわ革命。
安価で安定供給できる北糖は王国経済を塗り替え、
かつて彼女を追放した王都は、今やその甘味なしでは立ち行かなくなる。
「王妃にはなりませんわ。私は甘味の設計者ですもの」
王冠よりも自由を選び、
“北のお菓子の国”を築き上げた令嬢の、爽快経済ざまぁ恋愛譚。
甘さは、諦めなかった者の味。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる