一緒に召喚された私のお母さんは異世界で「女」になりました。

白滝春菊

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 目が覚めると私は元の世界の見覚えのある道に立っていた。

 私だけ、元の世界に戻って来たようだ。

 お母さんはまだあっちの世界にいるようね……お腹の中の赤ちゃんとエリオットさんと一緒に幸せな家庭を築いていて、きっと幸せになれるはずだから

 私はもう疲れた。危険と隣り合わせの堅苦しい生活はこりこりだ。平穏に暮らせるだけで十分。

 家の鍵はお母さんから貰ったからとりあえず家に帰れるはずだ。私は歩きなれた懐かしい道を進む。

 どうやら私はあの日からは二年ぐらい失踪していたことになっていた。
 それからは本当に大変。警察に行って今までの空白の時間は何があったのかとか、何処に拉致されたとか、お母さんはどうした?とか聞かれて正直に全部話したらお医者さんまで呼ばれていろいろ調べられた。

 友達から親戚まで巻き込んで大騒ぎになったのは申し訳ないと思うけど、私だって好きで異世界に行ったんじゃないから許してほしい。

 証拠があるわけでもないから私はショックで精神が病んでしまった扱いになっていて、合格した大学には行ってない。
 今はバイトをしながらアパートでお父さんとお母さんの貯金を大事に使って一人で暮らしている。

 一人暮らしは寂しくて不便だ。お母さんがいた頃は二人でも淋しくなかったし、美味しいご飯も綺麗な洗濯物もある。
 お母さんがいないだけで異世界より元の世界の方が辛い……あの世界は大変だったけど優しい人もいたし、何よりもお母さんがいてくれた……やっぱりあっちの世界のがいいな。

 私は戻ってきた世界に失望しながらまた新しい生活を始めるしかなかった。

 

 お母さんは行方不明扱いで今でもずっと警察は探してくれているらしいがお母さんの捜索は難航しているようで見つからないまま三年も経ってしまった。

 異世界にいるから帰って来ないとか言えば私が殺したのではないか?と冤罪をかけられて捕まってしまうかもしれないから言い出せないな。

 でも二度と会えないならお母さんは死んでしまったようなものだ。あっちの世界で新しい家族と楽しく暮らして。きっとエリオットさんの子供なら私と違って素直ないい子なんだろうね。

 ……異世界に帰っても、私の幸せな家族を奪ったあの新しい家族が幸せでいるのが許せないと思ってしまっている。

 私はお母さんには私だけのお母さんでいてほしかった。
 お母さんはお父さんだけの奥さんでいてほしかった。
 ずっと、ずっと、お母さんでいてほしいと思うのは私のエゴだけど、私以外のお母さんにはなってほしくなかった。
 私は大人になっても、死ぬまでお母さんと一緒にいて、お母さんを独り占めしたかった。

 だから時々思う、私は無理矢理お母さんをこの世界に連れていけばよかったのかな?と……
 そうしたらお母さんはずっと私だけのものだったのに。

 それが無理ならせめて向こうの世界に残ればよかったのに馬鹿なことをしたんだと後悔をすることがある。

 何もかもが遅い。だから前に進むために新しい「好き」を探すことにした。

 ゲームでもアニメでも漫画でもアイドルでも何でもいい。新しい恋をしてみるのも悪くないのかもしれない。
 エリオットさんよりも素敵な人を見つけるんだ。ハードルが高すぎるけどね。

 そうしたら私が結婚してお母さんになったらさ、お母さんの気持ちを理解できるのかもって前向きに考えながらお母さんがくれたハンカチを眺めていた。

 完
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