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理来と付き合ってから、俺の毎日は非常に充実していた。
しつこかった誘いもめっきり減り、能面女が遠巻きにしていることも俺にとっては夢のような毎日だと言える。
…しかも可愛い彼女がいつも職場にいるんだから、幸せじゃない方がおかしいだろう?…あとは、理来が俺を好きになるだけ…だが、それが意外に難航していた。
理来の親友だという税務課の春原に『理来といつも仲良くしてくれているんだってね。あいつ恥ずかしがって昼休みはいつもどこかへ行っちゃうから、二人で出かける時は俺のスマホに連絡貰えるかな?』と連絡先を聞き出し、今 もいそいそと呼ばれたコーヒーショップへと向かう。
コーヒーショップへ入り、彼女らを探すと奥から理来の声が聞こえてきた。
「はるかちゃん‼ぜひ、私にその男性を紹介して頂戴‼」
…一瞬、意味が分からず固まってしまった。…どうしてこいつはそんなに俺から逃げたいのだろうか?
「理~来‼…浮気の相談かな?まったく…彼氏の前でそれはないんじゃない?」
そう言いながら、無理やり理来の隣に腰かける。…まさか聞かれると思っていなかったんだろうな…こいつ。
慌てているのが判る。
「あ、先輩早かったですね~‼ここ直ぐに分かりましたか?」
以外にも春原はいいやつで、ちゃんと俺に連絡してくれたし、俺に興味が無さそうなところも好印象だ。
「うん、連絡を貰って直ぐに出たから。場所は知らなかったけどスマホで調べたら分かった。へぇ…けっこういい店だね」
コーヒーを注文し改めて、先ほどの理来の叫びについて問い詰める。
「それで、さっき男性を紹介してなんて理来が叫んでたみたいだけど、春原さんどういうことか教えてくれる?」
大抵の女なら、こう言ってほほ笑めば何でもしゃべる。きっと春原も簡単に話すだろうとたかをくくっていた。
「うん…じゃあ言いますけれど、北条さん、今のままだと理来ちゃん絶対に浮気すると思いますよ?」
付き合いたての彼女が絶対に浮気すると言われて気にしない男は居るのだろうか…?
否、俺は完全に動揺していた。
「春原さん、それはどういう事かな?俺と理来は付き合っているのに、彼女の気持ちが他の男に向いているってこと?」
必死に平静を装いながら聞くと、更に辛辣なことを言われる。
「でも、理来は先輩の気持ちを信じていませんよ?愛されていないと思わせているのは先輩の態度とか、彼女への接し方に問題があるからじゃないんですか?」
さすがの俺も言葉を失う…確かに彼女に無理強いしている自覚はある。
「女はイケメンだったら誰でもホイホイ言いなりになる訳じゃないんです。理来は特に見た目に惑わされないで内面で人を好きになる娘だから。北条さんが理来の浮気を疑うってことは自分の魅力が内面に無いって言っているも同然ですよね?」
…たしかに自分に自信なんかない。あるのは彼女を取られたくないっていう不安だけだから。
「税務課の佐々木圭太さんが理来のことを可愛いって言っていた時に北条さん、牽制にいったって聞きました。確かに彼じゃあ理来ちゃんには似合わないとは思いますけれど、それを決めるのは北条さんじゃなく、理来ちゃんですよね?心が狭い男は浮気されても仕方ないと思います」
そう言い切り春原は席を立った。
「もう昼休みが終わるので、続きはまた今度。でも今のままじゃ本気で好きになってもらうのは遠いですよ?…案外、トンビに油揚げ攫われちゃうかもしれませんからね」
春原と理来はさっさと仕事に帰っていったが、俺はその場から動くことが出来なかった。
…確かにあいつが言ったことは真実で、俺じゃ理来には選んでもらえないのかも…。
心の中は嵐が吹き荒れて、俺はどうしようもなく苦しかった。
気持ちを切り替えて、仕事に向かったけれど、さっきの言葉が頭から離れない。
どうしたら良いのかも判らないまま、時間だけが過ぎていった。
そんな中、『皆さん、お仕事お疲れ様です』と【狭間田葬儀社】の春原が顔を見せた。
俺のせいでピリピリしていたことに不安だったのか、あからさまにホッとした顔で理来が挨拶に行くのもムカついた。
「この間の【天竺市】では犯人探しありがとうございます。おかげさまで、無事にあの悪霊の魂は【閻魔庁】へ引き渡しを完了することができました。」
「結局、最後に悪霊が言っていたアイツラって言うのは誰だか分かったんですか?」
「…それに関しても、既に悪霊の自我が崩壊していて何を言っているのか分からない状態だったので、結局焼却処分となりましたし…」
二人の会話に耳を澄ませるが、結局あの悪霊だけが処分されて終わったのか…という感想しか出てこない。
さっさと用件を済ませて帰れと念を送るも、今度は無駄話を始めやがった。
「やっぱり東雲さんは面白い人ですね。妹から聞いていた通りだ」
「わわわ!いつもはるかちゃんには仲良くしてもらっています。」
理来が、顔を赤らめて春原を見つめる。
…お前、俺の前でそんな女の顔見せたことないくせに…そいつには簡単に赤くなるのかよ…ついカッとなって怒鳴ると『北条先輩、お客様に対してちょっと失礼だと思いますけれど』と理来にまでムッとしたように返される。
失敗した…そうは思っても後の祭りで二人は応接室へ移動してしまった。
「…北条君…君、少し落ち着きなさいね…」
田中課長の言葉に、俺はただ頷くことしかできなかった。
しつこかった誘いもめっきり減り、能面女が遠巻きにしていることも俺にとっては夢のような毎日だと言える。
…しかも可愛い彼女がいつも職場にいるんだから、幸せじゃない方がおかしいだろう?…あとは、理来が俺を好きになるだけ…だが、それが意外に難航していた。
理来の親友だという税務課の春原に『理来といつも仲良くしてくれているんだってね。あいつ恥ずかしがって昼休みはいつもどこかへ行っちゃうから、二人で出かける時は俺のスマホに連絡貰えるかな?』と連絡先を聞き出し、今 もいそいそと呼ばれたコーヒーショップへと向かう。
コーヒーショップへ入り、彼女らを探すと奥から理来の声が聞こえてきた。
「はるかちゃん‼ぜひ、私にその男性を紹介して頂戴‼」
…一瞬、意味が分からず固まってしまった。…どうしてこいつはそんなに俺から逃げたいのだろうか?
「理~来‼…浮気の相談かな?まったく…彼氏の前でそれはないんじゃない?」
そう言いながら、無理やり理来の隣に腰かける。…まさか聞かれると思っていなかったんだろうな…こいつ。
慌てているのが判る。
「あ、先輩早かったですね~‼ここ直ぐに分かりましたか?」
以外にも春原はいいやつで、ちゃんと俺に連絡してくれたし、俺に興味が無さそうなところも好印象だ。
「うん、連絡を貰って直ぐに出たから。場所は知らなかったけどスマホで調べたら分かった。へぇ…けっこういい店だね」
コーヒーを注文し改めて、先ほどの理来の叫びについて問い詰める。
「それで、さっき男性を紹介してなんて理来が叫んでたみたいだけど、春原さんどういうことか教えてくれる?」
大抵の女なら、こう言ってほほ笑めば何でもしゃべる。きっと春原も簡単に話すだろうとたかをくくっていた。
「うん…じゃあ言いますけれど、北条さん、今のままだと理来ちゃん絶対に浮気すると思いますよ?」
付き合いたての彼女が絶対に浮気すると言われて気にしない男は居るのだろうか…?
否、俺は完全に動揺していた。
「春原さん、それはどういう事かな?俺と理来は付き合っているのに、彼女の気持ちが他の男に向いているってこと?」
必死に平静を装いながら聞くと、更に辛辣なことを言われる。
「でも、理来は先輩の気持ちを信じていませんよ?愛されていないと思わせているのは先輩の態度とか、彼女への接し方に問題があるからじゃないんですか?」
さすがの俺も言葉を失う…確かに彼女に無理強いしている自覚はある。
「女はイケメンだったら誰でもホイホイ言いなりになる訳じゃないんです。理来は特に見た目に惑わされないで内面で人を好きになる娘だから。北条さんが理来の浮気を疑うってことは自分の魅力が内面に無いって言っているも同然ですよね?」
…たしかに自分に自信なんかない。あるのは彼女を取られたくないっていう不安だけだから。
「税務課の佐々木圭太さんが理来のことを可愛いって言っていた時に北条さん、牽制にいったって聞きました。確かに彼じゃあ理来ちゃんには似合わないとは思いますけれど、それを決めるのは北条さんじゃなく、理来ちゃんですよね?心が狭い男は浮気されても仕方ないと思います」
そう言い切り春原は席を立った。
「もう昼休みが終わるので、続きはまた今度。でも今のままじゃ本気で好きになってもらうのは遠いですよ?…案外、トンビに油揚げ攫われちゃうかもしれませんからね」
春原と理来はさっさと仕事に帰っていったが、俺はその場から動くことが出来なかった。
…確かにあいつが言ったことは真実で、俺じゃ理来には選んでもらえないのかも…。
心の中は嵐が吹き荒れて、俺はどうしようもなく苦しかった。
気持ちを切り替えて、仕事に向かったけれど、さっきの言葉が頭から離れない。
どうしたら良いのかも判らないまま、時間だけが過ぎていった。
そんな中、『皆さん、お仕事お疲れ様です』と【狭間田葬儀社】の春原が顔を見せた。
俺のせいでピリピリしていたことに不安だったのか、あからさまにホッとした顔で理来が挨拶に行くのもムカついた。
「この間の【天竺市】では犯人探しありがとうございます。おかげさまで、無事にあの悪霊の魂は【閻魔庁】へ引き渡しを完了することができました。」
「結局、最後に悪霊が言っていたアイツラって言うのは誰だか分かったんですか?」
「…それに関しても、既に悪霊の自我が崩壊していて何を言っているのか分からない状態だったので、結局焼却処分となりましたし…」
二人の会話に耳を澄ませるが、結局あの悪霊だけが処分されて終わったのか…という感想しか出てこない。
さっさと用件を済ませて帰れと念を送るも、今度は無駄話を始めやがった。
「やっぱり東雲さんは面白い人ですね。妹から聞いていた通りだ」
「わわわ!いつもはるかちゃんには仲良くしてもらっています。」
理来が、顔を赤らめて春原を見つめる。
…お前、俺の前でそんな女の顔見せたことないくせに…そいつには簡単に赤くなるのかよ…ついカッとなって怒鳴ると『北条先輩、お客様に対してちょっと失礼だと思いますけれど』と理来にまでムッとしたように返される。
失敗した…そうは思っても後の祭りで二人は応接室へ移動してしまった。
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田中課長の言葉に、俺はただ頷くことしかできなかった。
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