15 / 31
■6.なんにも考えてないことと同じなんじゃないの? ◆西窪なずな
1
しおりを挟む
「あの団長、まだひとりでやってんの? 今日でもう何日目だっけ?」
「……二週間弱かな。夏服もけっこう着慣れてきたし、だいたいそうなるんじゃない?」
「はあ~、よくやるなぁ~」
感心しているんだか呆れているんだかわからないような相づちをして、なずなと同じ吹奏楽部員の小田島愛がベランダの手すりに頬杖をついて校門前を見下ろした。
彼女は副部長を務めてくれている。打楽器パートのパートリーダーで、先月、楽器の購入リストを作るときも率先して手を貸してくれた。可愛らしくカットされたキノコヘアが今日もシイタケみたいに膨らんでいる。ちょっと美味しそうだ。
数メートル下では、今日も団長がたったひとりでビラを配り続けていた。登下校時に生徒の大多数が通る校門前を攻めることで、吹奏楽応援に賛同する声を集めようとしているらしい。六月も十日を過ぎた今日も、団長は代々受け継がれてきたボロボロの学生服と学生帽に身を包んで下駄を履き、登校する生徒ひとりひとりを捕まえて全部手書きらしいそれを手当たり次第に配っている。スズメも驚く野太い声は、もうガラガラに枯れていた。
それでも、「よろしくおねしゃす!」とか「押忍!」とか、朝夕とわりとうるさい。三年の間では、団長の奇行とも呼べるそれをベランダから眺めるのが最近の日課となっていて、ホームルーム前のこの時間も、なずなや愛のほかに同級生の姿がちらほら見受けられた。
「で? なずなは手伝わないの?」
「なによ、その期待してる目は。ビラ配りがはじまるときに団長から言われたんだよ、吹部や野球部や生徒会、それと自分以外の団員は、サクラだと思われたら困るから俺に近づかないでくれって。それを忠実に守ってるの。別に意地悪したくて傍観してるわけじゃないよ」
ニヤリと笑った愛にそっぽを向いて答える。副部長だから愛もその話は聞いているくせに、彼女はいったい、なずなになにを期待しているというのだろうか。
そうだよ、吹部はあくまで応援団に名前を貸しただけで、どうなろうとあとのことはそっちに任せてある。大会の練習もはじまったし、吹部は吹部のことだけ考えていればいい。
課題曲と自由曲、大会までに二曲、仕上げなければならないのだ。なずなたち三年生にとってはこれが最後の大会になる。あっちにもこっちにも手を出した挙げ句、吹部のほうこそ悲惨な結果で終わりたくはない。団長には悪いけど、ひとりで頑張れ。
「でもさあ、ちょっと青春だよね。あそこまで本気になれるものがあるって、なんかバカだけどバカじゃないっていうかさ。ちょっと胸がキュッってなっちゃわない?」
「えー? なるかな?」
「ならないかな?」
「私は……父親が北高出身だってこともあって、吹奏楽応援には否定的だからなぁ。やっぱり、吹部は名前を貸しただけって気持ちが大きいかもね。よく頑張るなーとは思うけど」
ビラ配りがはじまったことを告げても、父親はやはり否定的だった。全部手書きで、団長が毎日たったひとりで配っていると言っても、困ったように笑って「でもなぁ……」と言葉を濁すだけ。父親自身も応援団だったという話ではないようだが、きっとバンカラ応援にとても思い入れがあるのだろう。ビラ配りがはじまって二週間弱が経った今では、なずなも無理にその話はしなくなった。大会のことだけ気にするようにしている。
「そっかぁ。逆にうちの親はそういうのに乗り気なところがあるから、もし本当にやることになったら球場に見に行くって言ってるよ。親の意見もいろいろなんだね」
「だねー」
とりわけ、西窪家の場合は、長女の鈴菜が生まれてからなずなが生まれるまで、十年の間が空いている。愛とは同級生だが、親同士は、なずなの親のほうが十年ぶん親としても人間としても先輩だ。年代によっても考え方は違う。きっとそういうことなのだろう。どちらがどうということではないが、そのためなずなも、わざわざ伝統を変えてまでやる必要があるのだろうかと、父親の意見に同意を覚えてしまう部分が少なからずあるのである。
「あ、まーた教頭だ。団長も頑張るけど、教頭も頑張るねー」
それから少しして、登校する生徒も途切れはじめた頃、見計らったかのように教頭が団長に近づいていく姿が目に映った。より傍観者らしいのは、むしろ愛のほうなのではないかと思う。彼女の口調は面白そうでいながら冷やかしが含まれている気がする。
とはいえ、そんな彼女と並んで下の様子を見ているだけのなずなも、同じようなものだ。
近づくなとは言われたが、ビラ書きくらいなら手伝えた。やろうと思えば、こっそり差し入れをすることだってできたのだ。胸の奥だって、本当はちょっとキュッとなる。
でも、それをしなかったのは、父親が否定的だからという大義名分があったからだ。手を貸したら厄介なことになることはわかっていた。極力関わりたくない教頭にだって目をつけられてしまうかもしれない。部長という立場もある。人生の平均点を狙って生きようと思っているなずなにとっては、こんなところで変に悪目立ちしたくなかった。
校門前の攻防が聞こえてくる。
「もう十分でしょう、早く校舎に入りなさい」
「いや、でもまだ登校してくる生徒もいますし、もう少し粘らせてくださいよ」
「そういうことを言っているんじゃないんです。学校の品位に関わると言ってます。実際に近所の方や保護者からも、あれはいったいなんだと問い合わせがあるんです。北高の名を汚すような真似は慎みなさい。卒業生や入学してくる生徒の顔に泥を塗るつもりですか」
「まさか。そんなつもりはないですよ。迷惑をかけているのはわかってます。でも、どうか先生、もう少しだけ。もう少しだけ目をつぶってもらえませんか。おねしゃす!」
「頭を下げればいいってもんじゃないんですよ! もう知りません!」
「あざーっす!」
教頭も教頭だが、団長も団長だ。のらりくらりとかわしつつ折り目正しく頭を下げられては、さすがの教頭も〝生徒の自主性〟を重んじる観点から、団長の行動を頭から否定するのは気持ち的に憚られるらしい。決まり文句の「もう知りません!」を校門前に響かせると、教頭はひどく面白くなさそうな顔をして職員玄関のほうへと踵を返していった。
「あはは、なにあの団長の顔。やばいからやめなって」
愛がおかしそうに笑う。なずなもそのとおりだと思う。……見えてるよ、団長。その、したり顔。今教頭に振り向かれたら一巻の終わりだよ、早くしまって、しまって。
「ほんっと、バカ……」
ボロボロの学生帽の下から覗く、したたかにニヤケた顔に嘆息しか出てこない。
「でもなんとなく可愛いかも。私は」
「愛、趣味悪いよ」
「そうかなぁ?」
そうだって。
そう言って、なずなは手すりにかけた腕に顎を乗せる。
ビラ配りがはじまってから毎朝こうだ。ふたりともよくやるなと思う。でも、あそこまでムキになる教頭の気持ちも、なずなにはなんとなくわかってしまうから厄介だ。
もし変に騒ぎが大きくなれば、もっと上――例えば教育委員会なんかに目をつけられてしまうかもしれない。そうなったときに説明に行かなければならないのは、一生徒にすぎない団長ではなく、校長や教頭だ。
そこまで大ごとにはならなくとも、常に付きまとっているのが〝伝統〟の二文字。今まさに創立以来のそれを変えようとしているのだから、一筋縄でいくわけがない。過渡期と言えば聞こえはいいが、渦中にいる自分たちは傍観者を気取りながらも知らず知らずのうちに振り回されている。なずなはそれが面白くない。
実はこれは、思った以上に難しい問題なのだと思う。だからこそ、それに気づきはじめた一般生徒が、上手くいっていないらしいという噂を火種にして、そこここで不安視する声を大きくしたのではないだろうか。総会のときのあの小憎たらしい一年男子あたりは、もしかしたら喜んでいるかもしれない。そういう連中も含めて生徒をひとつにまとめようと団長がひとり頑張っているのだが、果たして六月も十日が経って上手くまとめきれるかどうか。
依然、楽器購入の予算は下りない。生徒の気持ちもバラバラ。そんな中でも日は過ぎ、気づけば野球応援までは一ヵ月。過渡期の真っ只中にいるのも、なかなか楽じゃない。
「よろしくおねしゃす! ひとりひとりの声が力になります!」
残りわずかとなった校門をくぐる生徒に向けて、団長が意気揚々と声を張り上げる。徒歩だったり自転車だったりと登校スタイルは様々だけれど、団長に声をかけられると、みな一様に立ち止まってビクッと肩を震わせてしまうのだから、ここから見ていて傑作だ。
「ま、うちらはただ吹部の名前を貸しただけだしね。高みの見物といこうよ」
「……うん」
可愛らしいシイタケが、最近多くなってきた湿気に負けずにふわっと踊った。愛は過渡期を楽しむ余裕があっていいな。なずなの髪は、簡単に湿気に負けてしまう。
「……二週間弱かな。夏服もけっこう着慣れてきたし、だいたいそうなるんじゃない?」
「はあ~、よくやるなぁ~」
感心しているんだか呆れているんだかわからないような相づちをして、なずなと同じ吹奏楽部員の小田島愛がベランダの手すりに頬杖をついて校門前を見下ろした。
彼女は副部長を務めてくれている。打楽器パートのパートリーダーで、先月、楽器の購入リストを作るときも率先して手を貸してくれた。可愛らしくカットされたキノコヘアが今日もシイタケみたいに膨らんでいる。ちょっと美味しそうだ。
数メートル下では、今日も団長がたったひとりでビラを配り続けていた。登下校時に生徒の大多数が通る校門前を攻めることで、吹奏楽応援に賛同する声を集めようとしているらしい。六月も十日を過ぎた今日も、団長は代々受け継がれてきたボロボロの学生服と学生帽に身を包んで下駄を履き、登校する生徒ひとりひとりを捕まえて全部手書きらしいそれを手当たり次第に配っている。スズメも驚く野太い声は、もうガラガラに枯れていた。
それでも、「よろしくおねしゃす!」とか「押忍!」とか、朝夕とわりとうるさい。三年の間では、団長の奇行とも呼べるそれをベランダから眺めるのが最近の日課となっていて、ホームルーム前のこの時間も、なずなや愛のほかに同級生の姿がちらほら見受けられた。
「で? なずなは手伝わないの?」
「なによ、その期待してる目は。ビラ配りがはじまるときに団長から言われたんだよ、吹部や野球部や生徒会、それと自分以外の団員は、サクラだと思われたら困るから俺に近づかないでくれって。それを忠実に守ってるの。別に意地悪したくて傍観してるわけじゃないよ」
ニヤリと笑った愛にそっぽを向いて答える。副部長だから愛もその話は聞いているくせに、彼女はいったい、なずなになにを期待しているというのだろうか。
そうだよ、吹部はあくまで応援団に名前を貸しただけで、どうなろうとあとのことはそっちに任せてある。大会の練習もはじまったし、吹部は吹部のことだけ考えていればいい。
課題曲と自由曲、大会までに二曲、仕上げなければならないのだ。なずなたち三年生にとってはこれが最後の大会になる。あっちにもこっちにも手を出した挙げ句、吹部のほうこそ悲惨な結果で終わりたくはない。団長には悪いけど、ひとりで頑張れ。
「でもさあ、ちょっと青春だよね。あそこまで本気になれるものがあるって、なんかバカだけどバカじゃないっていうかさ。ちょっと胸がキュッってなっちゃわない?」
「えー? なるかな?」
「ならないかな?」
「私は……父親が北高出身だってこともあって、吹奏楽応援には否定的だからなぁ。やっぱり、吹部は名前を貸しただけって気持ちが大きいかもね。よく頑張るなーとは思うけど」
ビラ配りがはじまったことを告げても、父親はやはり否定的だった。全部手書きで、団長が毎日たったひとりで配っていると言っても、困ったように笑って「でもなぁ……」と言葉を濁すだけ。父親自身も応援団だったという話ではないようだが、きっとバンカラ応援にとても思い入れがあるのだろう。ビラ配りがはじまって二週間弱が経った今では、なずなも無理にその話はしなくなった。大会のことだけ気にするようにしている。
「そっかぁ。逆にうちの親はそういうのに乗り気なところがあるから、もし本当にやることになったら球場に見に行くって言ってるよ。親の意見もいろいろなんだね」
「だねー」
とりわけ、西窪家の場合は、長女の鈴菜が生まれてからなずなが生まれるまで、十年の間が空いている。愛とは同級生だが、親同士は、なずなの親のほうが十年ぶん親としても人間としても先輩だ。年代によっても考え方は違う。きっとそういうことなのだろう。どちらがどうということではないが、そのためなずなも、わざわざ伝統を変えてまでやる必要があるのだろうかと、父親の意見に同意を覚えてしまう部分が少なからずあるのである。
「あ、まーた教頭だ。団長も頑張るけど、教頭も頑張るねー」
それから少しして、登校する生徒も途切れはじめた頃、見計らったかのように教頭が団長に近づいていく姿が目に映った。より傍観者らしいのは、むしろ愛のほうなのではないかと思う。彼女の口調は面白そうでいながら冷やかしが含まれている気がする。
とはいえ、そんな彼女と並んで下の様子を見ているだけのなずなも、同じようなものだ。
近づくなとは言われたが、ビラ書きくらいなら手伝えた。やろうと思えば、こっそり差し入れをすることだってできたのだ。胸の奥だって、本当はちょっとキュッとなる。
でも、それをしなかったのは、父親が否定的だからという大義名分があったからだ。手を貸したら厄介なことになることはわかっていた。極力関わりたくない教頭にだって目をつけられてしまうかもしれない。部長という立場もある。人生の平均点を狙って生きようと思っているなずなにとっては、こんなところで変に悪目立ちしたくなかった。
校門前の攻防が聞こえてくる。
「もう十分でしょう、早く校舎に入りなさい」
「いや、でもまだ登校してくる生徒もいますし、もう少し粘らせてくださいよ」
「そういうことを言っているんじゃないんです。学校の品位に関わると言ってます。実際に近所の方や保護者からも、あれはいったいなんだと問い合わせがあるんです。北高の名を汚すような真似は慎みなさい。卒業生や入学してくる生徒の顔に泥を塗るつもりですか」
「まさか。そんなつもりはないですよ。迷惑をかけているのはわかってます。でも、どうか先生、もう少しだけ。もう少しだけ目をつぶってもらえませんか。おねしゃす!」
「頭を下げればいいってもんじゃないんですよ! もう知りません!」
「あざーっす!」
教頭も教頭だが、団長も団長だ。のらりくらりとかわしつつ折り目正しく頭を下げられては、さすがの教頭も〝生徒の自主性〟を重んじる観点から、団長の行動を頭から否定するのは気持ち的に憚られるらしい。決まり文句の「もう知りません!」を校門前に響かせると、教頭はひどく面白くなさそうな顔をして職員玄関のほうへと踵を返していった。
「あはは、なにあの団長の顔。やばいからやめなって」
愛がおかしそうに笑う。なずなもそのとおりだと思う。……見えてるよ、団長。その、したり顔。今教頭に振り向かれたら一巻の終わりだよ、早くしまって、しまって。
「ほんっと、バカ……」
ボロボロの学生帽の下から覗く、したたかにニヤケた顔に嘆息しか出てこない。
「でもなんとなく可愛いかも。私は」
「愛、趣味悪いよ」
「そうかなぁ?」
そうだって。
そう言って、なずなは手すりにかけた腕に顎を乗せる。
ビラ配りがはじまってから毎朝こうだ。ふたりともよくやるなと思う。でも、あそこまでムキになる教頭の気持ちも、なずなにはなんとなくわかってしまうから厄介だ。
もし変に騒ぎが大きくなれば、もっと上――例えば教育委員会なんかに目をつけられてしまうかもしれない。そうなったときに説明に行かなければならないのは、一生徒にすぎない団長ではなく、校長や教頭だ。
そこまで大ごとにはならなくとも、常に付きまとっているのが〝伝統〟の二文字。今まさに創立以来のそれを変えようとしているのだから、一筋縄でいくわけがない。過渡期と言えば聞こえはいいが、渦中にいる自分たちは傍観者を気取りながらも知らず知らずのうちに振り回されている。なずなはそれが面白くない。
実はこれは、思った以上に難しい問題なのだと思う。だからこそ、それに気づきはじめた一般生徒が、上手くいっていないらしいという噂を火種にして、そこここで不安視する声を大きくしたのではないだろうか。総会のときのあの小憎たらしい一年男子あたりは、もしかしたら喜んでいるかもしれない。そういう連中も含めて生徒をひとつにまとめようと団長がひとり頑張っているのだが、果たして六月も十日が経って上手くまとめきれるかどうか。
依然、楽器購入の予算は下りない。生徒の気持ちもバラバラ。そんな中でも日は過ぎ、気づけば野球応援までは一ヵ月。過渡期の真っ只中にいるのも、なかなか楽じゃない。
「よろしくおねしゃす! ひとりひとりの声が力になります!」
残りわずかとなった校門をくぐる生徒に向けて、団長が意気揚々と声を張り上げる。徒歩だったり自転車だったりと登校スタイルは様々だけれど、団長に声をかけられると、みな一様に立ち止まってビクッと肩を震わせてしまうのだから、ここから見ていて傑作だ。
「ま、うちらはただ吹部の名前を貸しただけだしね。高みの見物といこうよ」
「……うん」
可愛らしいシイタケが、最近多くなってきた湿気に負けずにふわっと踊った。愛は過渡期を楽しむ余裕があっていいな。なずなの髪は、簡単に湿気に負けてしまう。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる