かうんと・ゆあ・まーくす!

柿ノ木コジロー

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第四章 9月

前期締め作業と過去の話

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 夏休みの残りは結局、銀色クルクルより大切な仕事に全員で時間を費やすこととなった。

 九月末の締めは、前期半年間の集大成、活動の中でも大きなヤマの一つとなる。
 そこでいったんキリのよいところでひとつにまとめ、ナンバーごとの集計値を書いて、集計表とマーク本体とをそれぞれ、サンマーク財団に送付する。
 数ヶ月後に、財団から正式な集計点数の連絡があり、その値がサンマーク預金の『預入』額として残高に計上されるのだ。

「今回は……八万七千とんで五十六点、ということで」
 委員長の宣言とともに、小包みの封が閉じられた。
 静かな拍手が、まず伊藤から、すぐにミドリコ、そして春日、エミリとそれにつられるように拡がっていく。
 フジコもどこか醒めた目ではあったが、とりあえず手を叩いている。
「まだまだだけどね」
 委員長の笑顔は、やや硬かった。
「後半でどれだけ盛り返せるか、だな」
「盛り返せます、盛り返せますとも。私のフジッピちゃんがまだ山ほどありますし」
「春日さん、フジッピ愛に満ちているわね」
「ミドリコだって自分ちじゃ喰いもしねえ冷凍食品にずいぶん詳しいじゃねえかよ」

 締め後のお祭り気分で皆が浮かれている中、紀美はこっそり、隣のエミリに聞く。
「八万、ってあんまり多くないの?」
「去年は年間で十九万ちょっとだったかな」
 エミリがよどみなく答える。
「その前の年まで、平均二十六万、多い時で三十万近くあったから、確かに少ないっちゃ、少ない」
「えっ」
 紀美の叫びが大きかったようだ、委員長が「なにか?」と顔を向けたので、急いで
「いえ何も」
 というふうに首を横に振る。
 
 年間二十六万点……俗っぽく言えば、この活動は毎年二十六万円分稼いでいたということなのだ。
 少ないとは言え去年だって一年で十九万だし、それなりに学校に貢献したことになるだろう。
 あの紙ごみが、金に。
 くるりと丸まったビニル片も、ささやかなボール紙も、豆粒ほどの四角も、すべてが集まって万単位の価値となる。
 まさに、『塵も積もれば』を地でいっている。

 それでも、全盛期から比べれば確かによい数字とは言えない。
 今年の前期のペースから言えば、更に記録は下回りそうだ。

 活動終了後、紀美は鍵を返しに行きながら、なぜかついてきたエミリに更に詳しく聞く。
 エミリも、誰かに自分の話を聞いてもらえるのがうれしいようだ。
 それでわざわざついて来たのだろうか? 
 まあ、紀美も近頃では、自分でも少しは要領よくなってきた気がしていた。
 この機に情報を仕入れようと、エミリの話に耳を傾ける。

「六合委員長時代はメンバーが二〇人近くいたこともあったけど、辞める人も多くて、結局六合さんたちの世代が卒業した時には、四人にまで減って」
「極端ですねぇ」

 第三次六合時代には委員長と反りが合わない人たちがひとり、また一人と減っていき、その中で成島も六合と激しく衝突して、いったんメンバーから抜けたのだそうだ。
 それに伴い、入ったばかりのフジコもロクに顔を見せなくなってしまった。
 それでもまだメンバー数は一〇名を割っていなかったのだが、極めつけは、前委員長が卒業したと同時にやはり卒業を迎えた人と、在校生保護者合わせて八人も、同時にサンマークボランティアから抜けていったのだそうだ。

 春日とミドリコの説得でどうにか復帰した成島は、辛うじて残ったミドリコ、春日、エミリとともに、そしてようやく呼びもどしたフジコと、必死で活動の立て直しをはかった。
 娘が入学してきたばかりの伊藤を勧誘し、お調子者の優香を誘い、そこでどうにか、七名のメンバーという態勢になった。

「なかなか、なり手がいないんですね……」
「お試しに一日二日、ってママさんはそれなりにいるんだけど、みんな、最終的にはパートやお仕事に行っちゃうしね」
 優香はそれでも、一年近く活動に参加していたし、身代わりの紀美を連れてきただけマシだったかも、とエミリが言う。

 いや、身代わりは大いに迷惑なんですが、と恨みがましい目をつい、エミリに向けてしまう紀美であった。

 エミリはそんな視線にも動じず、淡々とコメント。
「今どきのママさんってさ、やっぱ金になる仕事優先なんだよね」
「ですよねー」
 紀美はつい、伊藤みたいな返事をしてしまう。

 鍵を返して職員室から出てから、すぐ脇の小会議の前を通りかかった時、中から聞きなれた声が漏れてきた。
「どういうことですか」
 委員長だ。紀美とエミリはぴたりと足を止めた。
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