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転生して二十年。色々と疲れた。
どういうわけか、俺は物心ついた時に前世の記憶があった。
地球という惑星の、日本という国で二十一世紀を過ごした記憶だ。
そこでは俺は男性で、普通に会社員として働き、普通に死んだ。
人生に波風が全く無かったわけじゃないが、特筆するような出来事は起きなかった。
とりあえず働き、働き続け、景気はずっと良くなかったけれど、なんとか生き抜いた。
生活が豊かだったわけじゃないが、仕事は勤め上げた。
振り返れば悪くない人生だったと思う。結婚とか家族とかとは無縁だったが、大きなトラブルとも無縁だった、その時代なりに生きたと思える。
ただ、定年退職後、すぐに死んだのは想定外だった。
若い頃から生きるために働いてきて、やりたいことはあれど休日は体力回復に努める日々。定年後の時間で少しは自由を満喫できるかと思った矢先に病でぽっくり逝ってしまった。
転生後、記憶が戻った後とりわけ強く思い出したのは、死ぬ間際のことだ。
『あんなに頑張って働くことなかった』
だから、今度の人生では自分のやりたいことをやろう。できる範囲で。
今度生まれたのは地球ではなかったけれど、悪い立場じゃなかった。
ファンタジー世界の開拓したばかりのそこそこの町の有力者。
そんな家の次男として生まれた俺は、剣と魔法の教育を受けながら育っていた。
今生の親が教育熱心な上、次男に対しては自由を許すタイプだったのも幸いした。
この世界で生きる術を学び、将来は商売なり冒険なりに精を出そう。前世の知識を生かせば上手くいくことだってあるかもしれない。ネットで何度か読んだことがある。
明るい未来を描いて生きる日々は、十歳の時に終わった。
住んでいる町が、地域ごと魔物に襲われて一家離散。
後になってわかったことだが、開拓が進む大陸の奥深くに、魔王と呼ばれる魔物を統率する個体がいたために起きた出来事だった。
そこからは生きるのに必死だ。まるでゲームだと突っ込む余裕もない。
冒険者として各地を旅して、戦って戦って戦い続けた。
行方不明になった家族を探しつつ、俺は生きるために必死に戦い続けた。
前世の知識を生かして新しい武器に魔法、戦術を次々に考案して実行した。上手くいったこともあったし、逆に死にかけたりもした。
そのうち仲間ができて、名前が売れて、おかげで更に激しい戦いに巻き込まれた。
いつの間にか旅の目的は家族の救出から魔王討伐になっていた。
陸に空に海、地底に海中、天高く聳える山を越えて、最終的には神々がいるという神界にまで俺の冒険は到達した。
全てが終わったとき、俺は二十歳になっていた。
血みどろの青春時代と引き替えに手に入れたのは、魔王討伐の英雄の称号。
これからは偉くなった各国の首脳の力を借りて、どこかの国に収まるか、開拓地の新しいリーダーにでもなるか、そんな選択肢が目の前に転がっていた。
俺はその時、ようやく気づいた。
「このままじゃ、今回の人生も働きづめで終わる」
疲れていたというのもある。子供の頃から命のやり取りを続けるのは精神に悪い。多分、前世の何十年という経験がなければ心が壊れていただろう。
休みがほしい。
立場をわきまえないわがままと捉えられても仕方ない俺の要望を、意外にも仲間達は受け入れてくれた。
どうも、戦後の俺の立場が微妙になることを心配していたらしい。コネはあるが経験無しで政治の舞台に躍り出るのはとても危険なのだ。
方針が決まってからは早かった。
俺は最後の戦いで行方不明という扱いになり、顔と名前を変えて遠くの大陸へと旅立った。
行き先は東の大陸の中頃にあるビフロ王国。
そこで新たな人生を歩め。上手くいかなかったらまた相談しろ。
頼もしい仲間達からそんな言葉を受けて、俺は新たな人生を始めたのである。
今の俺の名前はイスト。
ビフロ王国の田舎町で売れない雑貨屋を営む元冒険者。とりあえず、そう落ち着いた。
ぶっちゃけ仕事は暇で、これまでの人生でないくらいの時間がある。
はっきり言おう。
最高だ。
どういうわけか、俺は物心ついた時に前世の記憶があった。
地球という惑星の、日本という国で二十一世紀を過ごした記憶だ。
そこでは俺は男性で、普通に会社員として働き、普通に死んだ。
人生に波風が全く無かったわけじゃないが、特筆するような出来事は起きなかった。
とりあえず働き、働き続け、景気はずっと良くなかったけれど、なんとか生き抜いた。
生活が豊かだったわけじゃないが、仕事は勤め上げた。
振り返れば悪くない人生だったと思う。結婚とか家族とかとは無縁だったが、大きなトラブルとも無縁だった、その時代なりに生きたと思える。
ただ、定年退職後、すぐに死んだのは想定外だった。
若い頃から生きるために働いてきて、やりたいことはあれど休日は体力回復に努める日々。定年後の時間で少しは自由を満喫できるかと思った矢先に病でぽっくり逝ってしまった。
転生後、記憶が戻った後とりわけ強く思い出したのは、死ぬ間際のことだ。
『あんなに頑張って働くことなかった』
だから、今度の人生では自分のやりたいことをやろう。できる範囲で。
今度生まれたのは地球ではなかったけれど、悪い立場じゃなかった。
ファンタジー世界の開拓したばかりのそこそこの町の有力者。
そんな家の次男として生まれた俺は、剣と魔法の教育を受けながら育っていた。
今生の親が教育熱心な上、次男に対しては自由を許すタイプだったのも幸いした。
この世界で生きる術を学び、将来は商売なり冒険なりに精を出そう。前世の知識を生かせば上手くいくことだってあるかもしれない。ネットで何度か読んだことがある。
明るい未来を描いて生きる日々は、十歳の時に終わった。
住んでいる町が、地域ごと魔物に襲われて一家離散。
後になってわかったことだが、開拓が進む大陸の奥深くに、魔王と呼ばれる魔物を統率する個体がいたために起きた出来事だった。
そこからは生きるのに必死だ。まるでゲームだと突っ込む余裕もない。
冒険者として各地を旅して、戦って戦って戦い続けた。
行方不明になった家族を探しつつ、俺は生きるために必死に戦い続けた。
前世の知識を生かして新しい武器に魔法、戦術を次々に考案して実行した。上手くいったこともあったし、逆に死にかけたりもした。
そのうち仲間ができて、名前が売れて、おかげで更に激しい戦いに巻き込まれた。
いつの間にか旅の目的は家族の救出から魔王討伐になっていた。
陸に空に海、地底に海中、天高く聳える山を越えて、最終的には神々がいるという神界にまで俺の冒険は到達した。
全てが終わったとき、俺は二十歳になっていた。
血みどろの青春時代と引き替えに手に入れたのは、魔王討伐の英雄の称号。
これからは偉くなった各国の首脳の力を借りて、どこかの国に収まるか、開拓地の新しいリーダーにでもなるか、そんな選択肢が目の前に転がっていた。
俺はその時、ようやく気づいた。
「このままじゃ、今回の人生も働きづめで終わる」
疲れていたというのもある。子供の頃から命のやり取りを続けるのは精神に悪い。多分、前世の何十年という経験がなければ心が壊れていただろう。
休みがほしい。
立場をわきまえないわがままと捉えられても仕方ない俺の要望を、意外にも仲間達は受け入れてくれた。
どうも、戦後の俺の立場が微妙になることを心配していたらしい。コネはあるが経験無しで政治の舞台に躍り出るのはとても危険なのだ。
方針が決まってからは早かった。
俺は最後の戦いで行方不明という扱いになり、顔と名前を変えて遠くの大陸へと旅立った。
行き先は東の大陸の中頃にあるビフロ王国。
そこで新たな人生を歩め。上手くいかなかったらまた相談しろ。
頼もしい仲間達からそんな言葉を受けて、俺は新たな人生を始めたのである。
今の俺の名前はイスト。
ビフロ王国の田舎町で売れない雑貨屋を営む元冒険者。とりあえず、そう落ち着いた。
ぶっちゃけ仕事は暇で、これまでの人生でないくらいの時間がある。
はっきり言おう。
最高だ。
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