転生チートで英雄になったんですが、スローライフしたいです(切実)

みなかみしょう

文字の大きさ
2 / 58

2.

しおりを挟む
 ビフロ王国は穏やかな気候と多くの平地のおかげで、農業国として長く栄えている国だ。政治が安定しているのと『飢えることがない』という評判通りの豊かな農産物のおかげで治安も悪くない。
 
 ただ、国土の多くが農地なこともあり、王都周辺以外は結構な田舎である。
 俺が住むプシコラの町も、実質は村に近い。町を囲む石造りの城壁は結構広く、敷地もあるのだが、空き家が多くて活気は今ひとつである。
 
 それというのも二年前まであった『魔王戦役』と呼ばれる大きな戦いのため、冒険者や商売人の多くが戦いの中心である別大陸に行ってしまったのに原因がある。
 
 今、プシコラの町で暮らすのは昔からの商売人や土地に根付いた人々。
 そして、俺のように戦地から帰ってきた者だ。

 雑貨屋の朝は意外と早くない。というか、俺の店の場合は遅めでも問題ない。
 そもそも、ビフロ王国は暖かい気候のおかげかのんびりした気性の人が多く、営業時間や定休日といった概念が曖昧だ。

 この町で商売を初めて一年がたち、俺の店は他より少し遅めの開店で問題ないことを把握している。

 昼より少し早いくらいに店舗兼自宅の店舗部分に行き、入り口の鍵を開ける。
 その際、軒先にぶら下がっている雑貨屋を示す箱や布をあしらった鉄製の看板の下に鈴を吊す。

 音が鳴らないように中身が抜かれている鈴だが、こうしておくことで開店中を示す。この地域のしきたりだ。
 鈍い銀色の鈴を吊すと、俺は店内の掃除を始める。
 
 店舗の広さは前世でいうコンビニくらい。棚に並んでいるのは布とかインクとか農具、ランプや油もある。他の雑貨屋と違うのは奥の方に剣や槍や弓、リュックや袋といった冒険者向きの品が多く並んでいることだろう。

 店舗の隣にある大きな倉庫には魔法がかかったマジックアイテムも多く保管されており、特別な客となら、そちらの商売もする。倉庫自体も魔法で強化されており、泥棒対策も万全だ。

 はたきと箒を使って店内を軽く清掃し、特に問題がないことを確認すると、俺はカウンターの向こうに座る。そして、備え付けられた棚から二枚の紙を取り出す。

 紙は植物で作られたもので、表面にはびっしりと文字が印字されている。
 枚数は少ないが、新聞だ。
 上等とは言えないが、この世界では既に植物由来の紙を量産し、活版印刷の行う技術が存在する。それどころか、こうして情報が印刷されて広い地域でやり取りされている。

 二日前、大きめの町に行った際に入手した新聞を、俺は丁寧に読み進める。

 それから一時間、俺は新聞二枚を十回以上読み返すことに成功した。しかも、途中でお茶を淹れて飲むこともできた。
 その間に客はまったく来ない。
 いつも通りの光景だ。簡単な魔物退治と採取くらいしか依頼がないこの地域はもともと冒険者が少なかった上、『魔王戦役』の影響でほとんどいなくなっている。
 
 小さな町の冒険者向けの雑貨屋など、成り立たない商売なのである。
 それこそが俺の狙いだ。財産は十分ある。マジックアイテムをたまに売れば食べるのに困ることはない。

 おかげで俺は趣味感覚で店を営む、時間が沢山ある店主をやらせてもらっていた。

 透明度の低いガラス越しに外を見てみれば、太陽が高い。昼だ。
 今日もまた、暇そうだ。おかげでゆっくり過ごすことができる。

 看板の下にある鈴を取り外して、町の酒場で昼食でも取ろうかと思った時だった。

 今日は開くことはないと思っていた店の扉が開かれた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

処理中です...