転生チートで英雄になったんですが、スローライフしたいです(切実)

みなかみしょう

文字の大きさ
18 / 58

18.

しおりを挟む
 屋敷の地下で、俺とハスティさんは呆然としていた。
 世界中を旅して様々なものを見てきた俺達がここまで驚くのはなかなか珍しい。
 魔法使いの屋敷とはいえ、非常に珍しい者が前にあったためだ。

「……思った以上にとんでもないものがありましたね」

『うむ。まさかワルキューレとはのう』

 地下に結界と共に封印されていたのは、一人の少女だった。
 机と魔法陣のみの狭い工房。そこの中央に鎮座する巨大な水晶塊。
 その中に、鎧姿のワルキューレがいた。
 間違いない。一見すると、小柄な体格に背中まで流れる銀髪を持った女の子だが、その身に宿る魔力や着ている鎧に見覚えがあった。 

 この世界においてのワルキューレは神々の創造する使い魔のような存在だ。それぞれの個体が使命を持たされ、北欧神話のように優秀な戦士を選ぶ役割の者もいれば、偵察やメッセンジャー、遺跡の管理など、色々な種類がいる。
 実際、俺も何度か遭遇したことがあり、戦う姿も見たことがある。ぶっちゃけかなり強い。神から持たされた使命によっては暴れるドラゴンより危険である。

「あの息子さん。これの判断を委ねるとか結構豪快ですね」

『裏にいるワシへの手土産のつもりもあったんじゃろうが。持て余してもいたんじゃろうな』

 当の息子はというと荷物をいくつかまとめて、すでに魔法で転送済みである。
 思ったより疲弊していて、少し動いたら顔色が悪くなって真っ白になっていた。とりつかれたことで、魂が相当疲弊したようだ。俺の回復魔法では、そこまでは癒やせない。

『さてイスト、このワルキューレ、どう見る?』

 仮面を通してハスティさんもこの光景を見ている。動いている時に使うと画面酔いするということで、今まで起動していなかった機能だ。

「見たことないタイプなんですよね。身長もハスティさんと同じくらいですし」

『そうじゃのう。……しかし、ワシよりスタイルが良いのが気に入らん。この個体を作った神のことが嫌いになりそうじゃ』

 誰だかわからない神へ怒りを燃やし始めた。意外と気にするタイプらしい。たしかに、目の前のワルキューレは小柄なわりに出るところは出ている感じだ。

 ワルキューレはこれまで何人か会ったことがあるが、どれも雰囲気が似ているし外見年齢はもっと上だった。なにか、特殊な役目を持たされた個体なのだろうか。

『なんか手がかりはないかのう』

「そこの机に資料っぽいのがありますね。見てみます」

 室内にある机の上に資料が散らばっていたので素速く目を通していく。

「……どうも、起動しようとしてできなかったみたいです」

 新しいのと古いのをいくつか目を通しただけだが、『今回のアプローチは失敗』みたいな文面がそこら中に載っていたので、状況は簡単に想像がついた。

「もしワルキューレを戦力として運用できたら、とんでもないことになりますね」

『個別の戦力としては相当じゃからのう。場合によっては加護まで受けとるし』

 今回の事件で起動していなくて良かった。うっかりワルキューレが暴れたら、どんな事態になったか想像もつかない。

『なにかぱっと見て他にわかることはないかの? 時間もないし、そろそろ終わりにしたいんじゃが』

 ハスティさんの声が焦りを帯びている。外も防衛魔法が停止したことに気づいたか。

「そうですね……台座の状態なんかから見ると、古くからここに置かれてたのかな……と?」

『どうした。なにかあったか?』

 口調が変わったことに気づき、緊張した様子で聞いてくるハスティが聞いてきた。
 俺は仮面ごしに、じっと水晶を見る。
 一瞬、動いた気がする。気のせいではない。何かに反応したのか?

 そのままワルキューレをじっと見つめていると、ゆっくりとその目が見開かれた。

「……動いた」

『どういうことじゃ? なにかしたかの?』

 覚えはない。上で暴れたくらいだ。
 俺達に構わず、ワルキューレは口を開いた。水晶の中からにも関わらず、声が聞こえてくる。高めだが、どこか心地よい、穏やかな声音が室内に響く。

「カテゴリーCの神格を確認。複数の加護、祝福を確認。神意ある人間と確認……」

「もしかして、俺に反応してる?」

『もしかしなくてもそのようじゃな。神界の気配に反応するようになっとったようじゃ』

 それだとここの魔法使いがどれだけ研究しても起動できなかったのも納得だ。
 感想を抱いている間にも、ワルキューレは話を進める。

「おはようございます。わたしは多目的万能支援ワルキューレ、ユニアです。神意ある人、あなたのために、わたしができることはありますか?」

「…………」

 いきなりそんなことを言われても困る。
 沈黙に不安でも覚えたのか、怪訝な顔でユニアと名乗ったワルキューレは言い直す。

「わたしは貴方の使命をお手伝いできる者です。その神格や祝福から相当な使命を与えられた人だとお見受けしたのですが」

 少しわかりやすくなった説明に、俺は悩む。
 今の俺、あんまり使命とかないんだよな。

「もし、俺が断ったらどうする?」

「通常任務の情報収集に入ります。世界の情報を神界の神々へ送信します」

 どうやら彼女は情報収集を目的としたワルキューレらしい。
 それはわかった。
 さて、どうしたものか。ここで野放しにするわけにもいかないし。
 
 対処について考えていると、ハスティさんが慌てた声が聞こえてきた。

『すまん。考えとる時間はなさそうじゃ。外の者達が突入してきおった。とりあえず、ワルキューレがそこにいるのはまずい!』

 事態の方が早く動いたので、俺は素速く決断した。

「わかった。俺の仕事を手伝ってくれ」

「承知致しました。あなたをマスターと認証します。お名前をうかがっても宜しいでしょうか?」

「イストだ。詳しい話は、ここを移動してからになる」

「承知しました。マスター・イスト。まずはどちらへ?」

 俺は転移魔法を用意しながら応える。

「とりあえず、俺の家だな」

 転移魔法が発動する。目の前に、魔法のゲートが開き、向こうに見慣れた自宅の景色があった。

「では、ご一緒します。宜しくお願いします。マスター・イスト」

 いつの間にか俺の横に立ったワルキューレが一礼してそう言ってきた。見れば、巨大な水晶はもう消えていた。

「よろしく頼むよ。ユニア」

 こうして、なし崩し的にワルキューレを手に入れて、俺は帰還したのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

処理中です...