転生チートで英雄になったんですが、スローライフしたいです(切実)

みなかみしょう

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「そう。昔なじみの冒険者が保護した子を引き取ったの……」

「この辺りは治安も良くて安全ですから。相手は恩人でもあるんで、断れなかったというわけです」

 フレナさんを落ち着かせるために、俺は三回ほど同じ説明を繰り返した。
 最初は興奮状態で話を聞いてくれなかったのだ。ユニアにも協力してもらい、どうにかなだめすかして、彼女はようやく事情を飲み込んでくれた。
 危うかった、俺の近所の評判が。

「でも本当に? ……ユニアちゃん大丈夫? 男の人と二人暮らしよ? しかもこの人、小さいエルフが頻繁に通ってるっていう噂まであるんだから。危険よ?」

「なにが危険なんですか」

 これだけ説明しても納得してくれないのか。というか、ハスティさん、あの姿のままこの辺をうろついてるな。魔法で誤魔化すとかいくらでもできるだろうに。

「問題ありません。わたしはこう見えて十七歳です。この辺りでも成人として扱われる年齢ですから」

 ユニアの返答は、フレナさんの期待した答えになってなかった。
 ちなみにこの世界では大体十五歳で成人として扱われる。実際、ユニアはもっと年上だが、見た目は大分若く見えるので、十七歳ということにしておいた。
 最初はもっと低い年齢を提案したんだが、本人が物凄く難色を示したので十七歳だ。

「いや、それはそれで心配なんだけれど。イスト君の好みを考えると……ね」

「あの、この町での俺の評価が気になるんですけど? 誤解してません?」

 いつの間にか近所の評判が大変なことになっている。そういえば、最近は子供から挨拶されることが減ったような気がする。まさか……。

「ご安心を。こう見えて冒険者として一通りの心得はあります。もし店長が襲いかかって来ても返り討ちです」

「ユニアは普通に強いですよ。というか、仲間から預かった子に手出しするわけないじゃないですか」

 なんで俺が襲いかかる前提なんだ。これで会話が円滑に進むと思っているのだろうか、このワルキューレ。

「……とりあえず、納得しておくわ。それとは別に仕事よ」

 とりあえずこの問題は保留。表情でそれだけ語ると、フレナさんはメモ書きを俺に渡してきた。
 読むととこには複数の酒の名前が並んでいた。それも高級酒だ。なければ近いもので良いとの但し書きもある。

「なにかあったんですか?」

 どの酒も、この地方じゃまず扱わないものだ。

「なんかね、町長さんのところに偉い人が来るんで慌てて用意してるんだってさ。それのお出迎え用だって。うちの店に持って来てくれれば、まとめて納品しておくわ」

 これは相当な貴族か商人がやって来ているな。店に持って来てくれというのも、俺が直接納品に行って余計なトラブルを防止するためだろう。面倒な相手なのかもしれない。

「助かります。さすがに全部はないからそれっぽいのを見繕って持っていきますよ」

 これは良い売り上げになりそうだ。依頼料も入るし、少し贅沢してもいいかな。
 そんなことを考えたとき、フレナさんの視線がおかしいことに気づいた。
 町の雑貨屋の看板娘さんは熱心にユニアを凝視していた。

「? いかがしましたか?」

「ユニアちゃん、服はある?」

「今のところ、これ一着だけです」

 ユニアの服は、ドワーフ用のもので、たまたま在庫にあったのを無理矢理着ている。昨夜、ハスティさんが見事な手さばきで仕立てた一品である。

「私のお古でよければあげるわよ? 子供の頃のとかまだあるから。よければ今からでも見に来ない?」

 なんだか珍しいことを言いだした。これは予想外の展開だ。

「あの、フレナさん?」

「イスト君、可愛い女の子には可愛い服を着せてあげるべきなのよ。せっかくこんなに可愛いんだし。どう、ユニアちゃん?」

 可愛いを連呼しながら俺ではなくユニア本人に確認をとるフレナさん。もう止めづらい雰囲気だ。

「大変興味深い話です。店長の許しさえあれば行きたいところですが」

 ユニアの方も乗り気だった。そういえば、情報収集用の個体だった。好奇心が強いのかもしれない。

「わかった。大量注文のお得意様でご近所さんだしな。俺は後で酒持っていきますから、お願いします。本当にいいんですか?」

 機械工業が発展していないこの世界では服は結構高い。その点を踏まえてもありがたい申し出だ。それにこれは近所づきあいの一環だ。

「いいのよ。なんだか楽しいしね。それじゃ、先にいくわね」

「行ってきます、店長」

 話がまとまるなり、二人はあっという間にドアの向こうに消えていった。判断が速い。
 一人だけの静かな店内に残された俺は、頼まれた酒を見繕うため、倉庫に向かいつつ、呟く。

「なんか、変わったワルキューレだなぁ」

 ユニアの存在は思った以上に俺の生活に影響があるかもしれない。そんな予感がちょっとだけあった。
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