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久しぶりに再会したユニアの友人は、静かに眠っていた。
いや、眠っているというか、停止しているように見える。これでは……。
こんな時、どんな言葉を放つべきだろうか……。
俺が何とも言えない気持ちで黙っていたらユニアがすたすたとヒルガルドに歩み寄っていった。
「起きなさい、ヒルガルド。貴方が緊急停止状態なのはわかっています」
そう言いながら、右手でぺちぺちとヒルガルドの頬を叩き始めた。音がここまで聞こえる、ちょっと強めだ。
「お、おい。大丈夫なのか?」
「問題ありません。わたし達はこの程度ではびくともしませんので」
人間だって軽くはたかれたくらいなら大丈夫だけど、ヒルガルドの頭が少し揺れているのが気になる。だんだん込められてる力が強くなってないか?
「う……ん……」
俺の心配をよそにヒルガルドが微妙に色っぽい声をあげて動き出した。凄いな、見た目には完全に死んでると思ったのに。魔力だって殆ど感じられなかった。
「目覚めたようでなによりです」
「久しぶりですね。ユニア。この再会を神に感謝します。……ところで、頭部に複数回の衝撃を感知したのですが」
「久しぶりです、ヒルガルド。友達に再会できたことをわたしも嬉しく思います」
ユニアが食い気味に言葉を重ねた。悪いと思うならしなきゃいいのに。
「そちらのお方。この世界には珍しい神格を感じます。どうやら、わたしの祈りは届いたようですね」
「イストだ。事情があってユニアのマスターになっているらしい」
「それはそれは。はじめまして。私はヒルガルド。この空中庭園の管理者であり、ユニアの友人です。どうか、仲良くしてください」
「こちらこそだ。ところで、あの神託はあなたがやったことなのか?」
「はい。もはや私では対処不能と判断しましたので。神界へ祈りを捧げました。戦神ミストルが聞き届けてくださったのですね」
ワルキューレが神界に祈るなんて初めて聞いた。他にも仲間に連絡する方法がありそうなものだが。
「ワルキューレは基本的に特定の神の管理下にあります。そのため、横の繋がりは弱いのです。特に、神々が神界に住まい、同胞のほとんどいないこの時代では」
「空中庭園の維持管理のためこの世界に留まった私は少々特殊な仕様でして。複数の神との繋がりがあるのです。それを頼ったのですが、まさかユニアが稼働しているとは。幸いです」
見た目通りの穏やかな笑みを浮かべて、本当に嬉しそうに言うヒルガルド。
「この庭園が何でこんなことになったか、教えてもらっていいか?」
問いかけに、小さく頷く、ヒルガルドは目を閉じた。まぶたの裏に過去のできごとを映し見ているかのように、口から言葉が漏れてくる。
「ここ半年ほど、空中庭園は複数のドラゴンに襲われていました。エルダークラスが三、それに伴う下位のドラゴンやワイバーンが数十ほどです」
「…………」
言葉が出なかった。エルダードラゴンを中心とした群れなんて、大国が焼け野原になる。
「まさか半年間、たった一人で戦っていたのですか?」
「はい。彼らが空中庭園を狙っているのは明白でしたので。管理者として、それを許すわけにはいきません。それに、逃げ回って今を生きる人々に迷惑をかけるわけにはいきませんから」
「助けもなく、戦い続けたのか」
「それが役目だと思ったのです。すでに神々が訪れなくなって久しくなったこの庭園の最後の仕事は、世界の脅威と戦うことだと」
「自分で役目を決めたのですね、ヒルガルド」
「はい。神界が出来たときより探し続けた目的を達成しました」
満足げな様子にヒルガルド。
「よく無事だったな。大量のドラゴンを相手にたった一人で倒すなんて」
「いえ、エルダードラゴンを一体、倒しきれませんでした。久しぶりの戦闘行動の相手には荷が重すぎたのかも知れませんね」
そういいながら、ヒルガルドは自嘲するような笑みを浮かべた。ユニアでは見られないくらい表情豊かだ。稼働年数の差からくるものだろうか。
「ヒルガルド、わたしが聞きたいのはあなたの現状です」
「……たび重なるドラゴンとの戦いで、空中庭園は崩壊。損傷は中枢まで及び、機能停止寸前です。当然、中枢を共有する使用である私も、間もなく停止するでしょう」
「やはり。店長、あなたならヒルガルドを癒すことが?」
「わかった。いくつか回復魔法をかけてみよう……
乞われるままに俺は動く。知っている回復魔法を順番にかけてみる、そのたびに観察するが、変化なしだった。
「魔法は無理か。あとは神の加護や権能でどうか、ってとこだけど」
文字通り、神頼み。しかし、ヒルガルドはすでに神に祈って答えを貰っている。こういう時、上手くいくかはわからない。神具を再生なんてやってくれるだろうか。
「いえ、それは不要です。私は役目のために神託を願いました。神々はそれを見届けるだけでしょう」
「そうですか……。では、ヒルガルド、わたし達にできることは一つですね」
「はい。私の願い。この空中庭園を襲ったエルダードラゴンの最後の生き残りの討伐です」
「もちろん、請け負います」
ヒルガルドの覚悟をくみ取ったのか、ユニアはそれ以上彼女の回復について望まなかった。
代わりとばかりに、強い意志の籠もった言葉で友人の頼みを請け負う。
「相手はエルダードラゴンとその下位種の群れか。結構しんどそうだな。悪いが詳しい情報を教えてくれ」
そもそも問題のドラゴン達がどこにいるかもわからない。話はそこからだ。
俺がやる気になっていると、ユニアがこちらを振り返った。
何故か怪訝な顔をしている。俺はそんな変なことを言ったろうか。
「なにを言っているのですか、店長。エルダードラゴン達はわたしが一人で討伐します」
うちのワルキューレが、なんだかとんでもないことを言いだした。
いや、眠っているというか、停止しているように見える。これでは……。
こんな時、どんな言葉を放つべきだろうか……。
俺が何とも言えない気持ちで黙っていたらユニアがすたすたとヒルガルドに歩み寄っていった。
「起きなさい、ヒルガルド。貴方が緊急停止状態なのはわかっています」
そう言いながら、右手でぺちぺちとヒルガルドの頬を叩き始めた。音がここまで聞こえる、ちょっと強めだ。
「お、おい。大丈夫なのか?」
「問題ありません。わたし達はこの程度ではびくともしませんので」
人間だって軽くはたかれたくらいなら大丈夫だけど、ヒルガルドの頭が少し揺れているのが気になる。だんだん込められてる力が強くなってないか?
「う……ん……」
俺の心配をよそにヒルガルドが微妙に色っぽい声をあげて動き出した。凄いな、見た目には完全に死んでると思ったのに。魔力だって殆ど感じられなかった。
「目覚めたようでなによりです」
「久しぶりですね。ユニア。この再会を神に感謝します。……ところで、頭部に複数回の衝撃を感知したのですが」
「久しぶりです、ヒルガルド。友達に再会できたことをわたしも嬉しく思います」
ユニアが食い気味に言葉を重ねた。悪いと思うならしなきゃいいのに。
「そちらのお方。この世界には珍しい神格を感じます。どうやら、わたしの祈りは届いたようですね」
「イストだ。事情があってユニアのマスターになっているらしい」
「それはそれは。はじめまして。私はヒルガルド。この空中庭園の管理者であり、ユニアの友人です。どうか、仲良くしてください」
「こちらこそだ。ところで、あの神託はあなたがやったことなのか?」
「はい。もはや私では対処不能と判断しましたので。神界へ祈りを捧げました。戦神ミストルが聞き届けてくださったのですね」
ワルキューレが神界に祈るなんて初めて聞いた。他にも仲間に連絡する方法がありそうなものだが。
「ワルキューレは基本的に特定の神の管理下にあります。そのため、横の繋がりは弱いのです。特に、神々が神界に住まい、同胞のほとんどいないこの時代では」
「空中庭園の維持管理のためこの世界に留まった私は少々特殊な仕様でして。複数の神との繋がりがあるのです。それを頼ったのですが、まさかユニアが稼働しているとは。幸いです」
見た目通りの穏やかな笑みを浮かべて、本当に嬉しそうに言うヒルガルド。
「この庭園が何でこんなことになったか、教えてもらっていいか?」
問いかけに、小さく頷く、ヒルガルドは目を閉じた。まぶたの裏に過去のできごとを映し見ているかのように、口から言葉が漏れてくる。
「ここ半年ほど、空中庭園は複数のドラゴンに襲われていました。エルダークラスが三、それに伴う下位のドラゴンやワイバーンが数十ほどです」
「…………」
言葉が出なかった。エルダードラゴンを中心とした群れなんて、大国が焼け野原になる。
「まさか半年間、たった一人で戦っていたのですか?」
「はい。彼らが空中庭園を狙っているのは明白でしたので。管理者として、それを許すわけにはいきません。それに、逃げ回って今を生きる人々に迷惑をかけるわけにはいきませんから」
「助けもなく、戦い続けたのか」
「それが役目だと思ったのです。すでに神々が訪れなくなって久しくなったこの庭園の最後の仕事は、世界の脅威と戦うことだと」
「自分で役目を決めたのですね、ヒルガルド」
「はい。神界が出来たときより探し続けた目的を達成しました」
満足げな様子にヒルガルド。
「よく無事だったな。大量のドラゴンを相手にたった一人で倒すなんて」
「いえ、エルダードラゴンを一体、倒しきれませんでした。久しぶりの戦闘行動の相手には荷が重すぎたのかも知れませんね」
そういいながら、ヒルガルドは自嘲するような笑みを浮かべた。ユニアでは見られないくらい表情豊かだ。稼働年数の差からくるものだろうか。
「ヒルガルド、わたしが聞きたいのはあなたの現状です」
「……たび重なるドラゴンとの戦いで、空中庭園は崩壊。損傷は中枢まで及び、機能停止寸前です。当然、中枢を共有する使用である私も、間もなく停止するでしょう」
「やはり。店長、あなたならヒルガルドを癒すことが?」
「わかった。いくつか回復魔法をかけてみよう……
乞われるままに俺は動く。知っている回復魔法を順番にかけてみる、そのたびに観察するが、変化なしだった。
「魔法は無理か。あとは神の加護や権能でどうか、ってとこだけど」
文字通り、神頼み。しかし、ヒルガルドはすでに神に祈って答えを貰っている。こういう時、上手くいくかはわからない。神具を再生なんてやってくれるだろうか。
「いえ、それは不要です。私は役目のために神託を願いました。神々はそれを見届けるだけでしょう」
「そうですか……。では、ヒルガルド、わたし達にできることは一つですね」
「はい。私の願い。この空中庭園を襲ったエルダードラゴンの最後の生き残りの討伐です」
「もちろん、請け負います」
ヒルガルドの覚悟をくみ取ったのか、ユニアはそれ以上彼女の回復について望まなかった。
代わりとばかりに、強い意志の籠もった言葉で友人の頼みを請け負う。
「相手はエルダードラゴンとその下位種の群れか。結構しんどそうだな。悪いが詳しい情報を教えてくれ」
そもそも問題のドラゴン達がどこにいるかもわからない。話はそこからだ。
俺がやる気になっていると、ユニアがこちらを振り返った。
何故か怪訝な顔をしている。俺はそんな変なことを言ったろうか。
「なにを言っているのですか、店長。エルダードラゴン達はわたしが一人で討伐します」
うちのワルキューレが、なんだかとんでもないことを言いだした。
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