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出張は地道な作業になった。予想通りではある。
まず俺は、アウスト王国にあるハスティさんの工房を訪れた。その中でも、秘密の部屋だ。 そこでハスティさんに転移魔法で現地に送って貰う。ハイエルフの観測施設は人気のない荒野や密林の中にあるので、俺はそういう場所に送られる。
現地にいったら後は作業だ。金属っぽいが厳密な素材はわからない白いピラミッドみたいな施設の周りを確認し、内部に入ってひたすら探索。
魔法で探知しつつ、念のため目視でも丹念に誰かいないか確認する。
ハイエルフがいれば侵入者に気づいてすぐ出てきそうものだが、案外そうでもない。
地上で整備に当たるハイエルフというのは、変わり者が多い。安全な月からわざわざ出ようというのだから、何かしら訳ありなのだ。整備以外に関心を払わないハイエルフに会ったことがある。
八カ所ほど施設を回ったが、成果はなかった。
自力で転移魔法を使ってアウスト王国に帰ると、ハスティさんがご飯を用意して待ってくれているのがせめてもの救いだ。ちなみにたまにユニアもいる。
そして、外れを引き続けて、十六カ所目。
今回もまた、俺はハスティさんに転移魔法を使ってもらい、現地に到着した。
「……マジかよ」
今回の施設の場所は森。どこか北の地方だろうか。針葉樹が並ぶ深い森の中で。俺は一人呟いていた。
森の切れた先、学校のグラウンドくらいの広さの場所に、もはや見慣れた白いピラミッドがある。
問題はその周辺だ。魔物がいる。それも沢山。施設を囲む形で。
現地に来るなり、やばい気配を感じた俺は素速く身を隠し、魔法で潜伏した。運が良いのか奴らがそれほどでもないのか、見つかってはいない。
これは当たりだ。事態の解決のため、ハイエルフが来る。
ようやく掴んだ手応えに安堵の息を漏らした瞬間、空気が轟音と共に振動した。
見れば、施設の上部で爆発が起きていた。それも連続で。しっかり攻撃されてる。魔法が使える奴がいるのか。
これは、先に遺跡を守った方がいいかもしれない。
そう思った時、目の前が光った。
『やあ! そこにいるのはもしかして、フィル・グランデ君かい? いやあ、随分見た目が変わったねぇ』
「……うおっ」
驚きで声がでかけたが何とか抑えた。大丈夫、魔物には気づかれてない。各種結界を張ってあるし。
問題はそれを無視して話しかけてきた対象だ。
俺の目の前には、青白く光る画面が現れていた。ベタなSFみたいな光景だが、見覚えがある。そして、そこに映っている人物も。
「よりによってアンタか。ファルカイン……」
『久しぶりの再会に悲しい対応だねぇ。僕はこんなに嬉しいというのに』
ハイエルフの特徴である端正な顔つきに長身。美形だが、張り付いた不適な笑みが胡散臭さを醸し出している。茶色主体のガンマンみたいな服装がその印象に拍車をかけていると俺は思う。
ファルカイン。俺にとってかなり縁の深いハイエルフだ。
「俺は複雑な気持ちだよ。ってか、見つけるなよ……」
結構頑張って潜伏してたのに。当たり前のように挨拶されるのは正直傷つく。
『ハハハッ! それはハイエルフの技術の賜物だね! ずっとサーチしてて周辺に魔力反応があったから、すぐ確認できたよ』
「なにしてんだ、アンタ」
俺の問いかけに対して、ファルカインは端的に答える。
『ここで整備点検の仕事をしてたら魔物の群れに襲われた。たすけて』
状況までよく伝わる、素晴らしい返答だった。
「いや、今サーチとかいってたし、施設の制御部分にいるんだろ。自力でなんとかできるだろ。ハイエルフの超技術で」
『それが内部に変なスライムが入ってきて魔力を吸われていてね! 出力が上がらん! ぶっちゃけ君を見つけただけで精一杯だ! かなりの危機だ!』
なんだか楽しそうに言うファルカイン。
ハイエルフは長生きしているせいか変わり者が多い。整備員は特にそうだ。こいつの性格のため危機感は感じられないが、たぶん普通にピンチだ。
『実はかれこれ二日ほど制御室にいてね、正直助かった』
「救援は呼べなかったのか?」
『それは最後の手段だな。月の同胞は応えてくれるだろうが、下手に動いて神々に目を付けられたくない。わかるだろう?』
「わかってはいるけどな……」
星界に住み着いたハイエルフが恐れているのは、神々の気まぐれだ。彼らは神々の庭を間借りしているに過ぎないことに自覚的で、静かに自分達の世界を維持している。
『いや、そろそろハスティちゃんに連絡しようと思っていたんだが、弟子たる君が来てくれて本当に助かった! 日頃の行いだね!』
「……はぁ」
俺は大きくため息をついた。相手にわかるように。
『ため息! なにを落ち込む! やはり美しい女性を助け出す流れでないと盛り上がらないかね! 君も男の子だな! 救出してくれたら女性体になってお礼に来るから安心してくれ!』
「安心できねぇよ……」
月のハイエルフの中には、その技術で見た目や性別をいじることに躊躇がないものがいる。こいつみたいに。
だが、ここで出会ったのはファルカインだったのは幸運だった。
ノリについていけない所があるが、こう見えて結構義理堅いし、人情深いところもある男だ。……そういえば、本来の性別どっちなんだろうな。
「さすがに見捨てないよ。そもそも、月のハイエルフに用件があったんだ。むしろ、この状態は好都合だな」
『うむ。正直で宜しい。ぼくを救出した暁には、君の望みを考えよう。なんなら移住してはどうかね? 皆喜ぶ』
「それは遠慮しておく。助けた後に、この世界の魔物の動向を調べて欲しい」
『なるほど承知した。今まさに異常事態に巻き込まれているところだからね。ぼくも気になる。あ、ちょっと内部のスライムが増殖してる。いけない! いけないぞこれは!』
「落ち着いて状況を説明してくれ。なんとかする方法を考えるから」
軽くため息を吐きながら話を促す。
ファルカイン本人はちょっと面倒なだけだけど、会う時はいつもなんか酷い目にあったりするのが問題なのだ。
まず俺は、アウスト王国にあるハスティさんの工房を訪れた。その中でも、秘密の部屋だ。 そこでハスティさんに転移魔法で現地に送って貰う。ハイエルフの観測施設は人気のない荒野や密林の中にあるので、俺はそういう場所に送られる。
現地にいったら後は作業だ。金属っぽいが厳密な素材はわからない白いピラミッドみたいな施設の周りを確認し、内部に入ってひたすら探索。
魔法で探知しつつ、念のため目視でも丹念に誰かいないか確認する。
ハイエルフがいれば侵入者に気づいてすぐ出てきそうものだが、案外そうでもない。
地上で整備に当たるハイエルフというのは、変わり者が多い。安全な月からわざわざ出ようというのだから、何かしら訳ありなのだ。整備以外に関心を払わないハイエルフに会ったことがある。
八カ所ほど施設を回ったが、成果はなかった。
自力で転移魔法を使ってアウスト王国に帰ると、ハスティさんがご飯を用意して待ってくれているのがせめてもの救いだ。ちなみにたまにユニアもいる。
そして、外れを引き続けて、十六カ所目。
今回もまた、俺はハスティさんに転移魔法を使ってもらい、現地に到着した。
「……マジかよ」
今回の施設の場所は森。どこか北の地方だろうか。針葉樹が並ぶ深い森の中で。俺は一人呟いていた。
森の切れた先、学校のグラウンドくらいの広さの場所に、もはや見慣れた白いピラミッドがある。
問題はその周辺だ。魔物がいる。それも沢山。施設を囲む形で。
現地に来るなり、やばい気配を感じた俺は素速く身を隠し、魔法で潜伏した。運が良いのか奴らがそれほどでもないのか、見つかってはいない。
これは当たりだ。事態の解決のため、ハイエルフが来る。
ようやく掴んだ手応えに安堵の息を漏らした瞬間、空気が轟音と共に振動した。
見れば、施設の上部で爆発が起きていた。それも連続で。しっかり攻撃されてる。魔法が使える奴がいるのか。
これは、先に遺跡を守った方がいいかもしれない。
そう思った時、目の前が光った。
『やあ! そこにいるのはもしかして、フィル・グランデ君かい? いやあ、随分見た目が変わったねぇ』
「……うおっ」
驚きで声がでかけたが何とか抑えた。大丈夫、魔物には気づかれてない。各種結界を張ってあるし。
問題はそれを無視して話しかけてきた対象だ。
俺の目の前には、青白く光る画面が現れていた。ベタなSFみたいな光景だが、見覚えがある。そして、そこに映っている人物も。
「よりによってアンタか。ファルカイン……」
『久しぶりの再会に悲しい対応だねぇ。僕はこんなに嬉しいというのに』
ハイエルフの特徴である端正な顔つきに長身。美形だが、張り付いた不適な笑みが胡散臭さを醸し出している。茶色主体のガンマンみたいな服装がその印象に拍車をかけていると俺は思う。
ファルカイン。俺にとってかなり縁の深いハイエルフだ。
「俺は複雑な気持ちだよ。ってか、見つけるなよ……」
結構頑張って潜伏してたのに。当たり前のように挨拶されるのは正直傷つく。
『ハハハッ! それはハイエルフの技術の賜物だね! ずっとサーチしてて周辺に魔力反応があったから、すぐ確認できたよ』
「なにしてんだ、アンタ」
俺の問いかけに対して、ファルカインは端的に答える。
『ここで整備点検の仕事をしてたら魔物の群れに襲われた。たすけて』
状況までよく伝わる、素晴らしい返答だった。
「いや、今サーチとかいってたし、施設の制御部分にいるんだろ。自力でなんとかできるだろ。ハイエルフの超技術で」
『それが内部に変なスライムが入ってきて魔力を吸われていてね! 出力が上がらん! ぶっちゃけ君を見つけただけで精一杯だ! かなりの危機だ!』
なんだか楽しそうに言うファルカイン。
ハイエルフは長生きしているせいか変わり者が多い。整備員は特にそうだ。こいつの性格のため危機感は感じられないが、たぶん普通にピンチだ。
『実はかれこれ二日ほど制御室にいてね、正直助かった』
「救援は呼べなかったのか?」
『それは最後の手段だな。月の同胞は応えてくれるだろうが、下手に動いて神々に目を付けられたくない。わかるだろう?』
「わかってはいるけどな……」
星界に住み着いたハイエルフが恐れているのは、神々の気まぐれだ。彼らは神々の庭を間借りしているに過ぎないことに自覚的で、静かに自分達の世界を維持している。
『いや、そろそろハスティちゃんに連絡しようと思っていたんだが、弟子たる君が来てくれて本当に助かった! 日頃の行いだね!』
「……はぁ」
俺は大きくため息をついた。相手にわかるように。
『ため息! なにを落ち込む! やはり美しい女性を助け出す流れでないと盛り上がらないかね! 君も男の子だな! 救出してくれたら女性体になってお礼に来るから安心してくれ!』
「安心できねぇよ……」
月のハイエルフの中には、その技術で見た目や性別をいじることに躊躇がないものがいる。こいつみたいに。
だが、ここで出会ったのはファルカインだったのは幸運だった。
ノリについていけない所があるが、こう見えて結構義理堅いし、人情深いところもある男だ。……そういえば、本来の性別どっちなんだろうな。
「さすがに見捨てないよ。そもそも、月のハイエルフに用件があったんだ。むしろ、この状態は好都合だな」
『うむ。正直で宜しい。ぼくを救出した暁には、君の望みを考えよう。なんなら移住してはどうかね? 皆喜ぶ』
「それは遠慮しておく。助けた後に、この世界の魔物の動向を調べて欲しい」
『なるほど承知した。今まさに異常事態に巻き込まれているところだからね。ぼくも気になる。あ、ちょっと内部のスライムが増殖してる。いけない! いけないぞこれは!』
「落ち着いて状況を説明してくれ。なんとかする方法を考えるから」
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