43 / 58
43.
しおりを挟む
港町フルム。辺境大陸の入り口にして最大の町だ。
その大通りに俺とユニアはいた。
ハスティさんの指示を受けて店はフレナさんに任せての任務開始である。
事前に情報を得ているとはいえ、現地でしか見えないものもある。
情報収集を兼ねての上陸だ。転移魔法で来たため、風情も何もないが。楽で良い。
「賑やかな町です。それと、道行く人々にも活力があります。ビフロ王国とは違いますね」
「辺境大陸は再開拓のまっただ中だからな。元気のいい人達が集まってるんだ」
そんな港町のそこそこ良い宿の一室で、俺達は話し合いをしていた。
露店で買った串焼きや飲み物を口にしながらそんな話をする。
好奇心旺盛なユニアは興味津々という様子で周囲に目を配っていた。
フルムの町は雑多だ。建物の形も大きさも統一されていないし、通りだって整備されていない。だけど、人は多く、元気に溢れている。
これから成長する場所特有の活気がここにはあった。
「再開拓ですか。話には聞いていますが」
「『魔王戦役』で大分やられたからな、この辺は。これでも大分綺麗になったんだよ」
「詳しいのですね」
「前に来たことあるし。そもそも生まれはこの大陸だからな」
俺のこの世界での生まれ故郷は辺境大陸の内陸側の町だ。残念ながら、魔物の軍勢によって滅ぼされて、今だ再建がなっていない。というか、辺境大陸は東側以外はほぼ荒野になっている。
「店長は、ここの再開拓を……いえ、やめておきます」
「悪いな。気を使わせて」
フィル・グランデのままなら、今頃ここの開拓団を重要人物となって、活躍していたのだろうとか。なんでそうしないのかとか、色々な質問をユニアは飲み込んでくれた。
俺なりに理由があって話したくないと察してくれたのだろう。ありがたいことだ。
「先に現状を確認しましょう。情報通り、クリスさんという方は出払っているようですね」
「あいつは『魔王戦役』で傷ついた土地を見回ったり、開拓村の支援をするのが役目だからな。その通りにやってるんだ。それを後方に配置された信頼できる人材が支える方針だったんだが……」
「そこを利用されたわけですね。少々、時期が早いと思うのですが」
「そうだな。権力争いでクリスを追い落とすにしても、もっと開拓の目処がついてからにすべきだ」
魔王が倒されて二年。辺境大陸に復興の兆しはようやく差し始めたばかり。
もっと落ち着いて地盤を固めてからやった方が利益が大きそうな話だ。
クリスは魔王を倒した英雄で、人々に人気もあるんで、下手に手出しすると痛い目を見る。
その点でも、今回の流れはちょっと性急すぎて怪しいと言える。
「ビフロ王国の役人にも、噂の傭兵隊長にも会えそうにありませんでしたね」
「気になるのは傭兵隊長だな。聞いた感じ手際が良すぎる。名の知れた騎士とか冒険者でもなかったみたいなのに」
傭兵隊長の名前はボルグ。凄腕としてこの町で突如頭角を現したらしい。
辺境大陸に来る以前の経歴は不明だ。『魔王戦役』中は世界が混乱していたので珍しい話ではないが、ハスティさんでも尻尾の先すら掴めなかったのはちょっとおかしい。
クリスがいない間に町の防衛のため組織された傭兵団。
その傭兵隊長が防衛のみならず、近場の魔物退治でまで華々しく活躍。
今ではクリスもかくやという名声を得ている。そして、それを支えるのはビフロ王国から派遣された役人。
もちろん、彼もまた傭兵隊長を見出したことで世間からの評判が大変良い。
「では、まずはボルグという傭兵隊長の偵察からですね」
「ああ、直接見定めよう。実物を見れば何かわかるはずだ」
俺もユニアも普通ではない目を持っている。本人のいるところにいけば、なんらかの新情報を得られるはずだ。
「ところで、潜入した時のために、ハスティ様から地味なデザインの魔法の仮面を頂いたのですが」
言いながら、ユニアが見覚えのある魔法の仮面を取り出した。大きさを彼女向きに調整され、若干だが装飾が増えてデザイン性が増している。でも、地味だ。
「その仮面、ハスティさん自身のデザインでな。結構、地味って言われるのを気にしているんだ」
「よく見れば使いやすくて飽きの来ない良いデザインだと判断します」
今日もユニアは高性能なワルキューレとしての能力を発揮してくれた。
ともあれ、まずは本人を偵察だ。
その大通りに俺とユニアはいた。
ハスティさんの指示を受けて店はフレナさんに任せての任務開始である。
事前に情報を得ているとはいえ、現地でしか見えないものもある。
情報収集を兼ねての上陸だ。転移魔法で来たため、風情も何もないが。楽で良い。
「賑やかな町です。それと、道行く人々にも活力があります。ビフロ王国とは違いますね」
「辺境大陸は再開拓のまっただ中だからな。元気のいい人達が集まってるんだ」
そんな港町のそこそこ良い宿の一室で、俺達は話し合いをしていた。
露店で買った串焼きや飲み物を口にしながらそんな話をする。
好奇心旺盛なユニアは興味津々という様子で周囲に目を配っていた。
フルムの町は雑多だ。建物の形も大きさも統一されていないし、通りだって整備されていない。だけど、人は多く、元気に溢れている。
これから成長する場所特有の活気がここにはあった。
「再開拓ですか。話には聞いていますが」
「『魔王戦役』で大分やられたからな、この辺は。これでも大分綺麗になったんだよ」
「詳しいのですね」
「前に来たことあるし。そもそも生まれはこの大陸だからな」
俺のこの世界での生まれ故郷は辺境大陸の内陸側の町だ。残念ながら、魔物の軍勢によって滅ぼされて、今だ再建がなっていない。というか、辺境大陸は東側以外はほぼ荒野になっている。
「店長は、ここの再開拓を……いえ、やめておきます」
「悪いな。気を使わせて」
フィル・グランデのままなら、今頃ここの開拓団を重要人物となって、活躍していたのだろうとか。なんでそうしないのかとか、色々な質問をユニアは飲み込んでくれた。
俺なりに理由があって話したくないと察してくれたのだろう。ありがたいことだ。
「先に現状を確認しましょう。情報通り、クリスさんという方は出払っているようですね」
「あいつは『魔王戦役』で傷ついた土地を見回ったり、開拓村の支援をするのが役目だからな。その通りにやってるんだ。それを後方に配置された信頼できる人材が支える方針だったんだが……」
「そこを利用されたわけですね。少々、時期が早いと思うのですが」
「そうだな。権力争いでクリスを追い落とすにしても、もっと開拓の目処がついてからにすべきだ」
魔王が倒されて二年。辺境大陸に復興の兆しはようやく差し始めたばかり。
もっと落ち着いて地盤を固めてからやった方が利益が大きそうな話だ。
クリスは魔王を倒した英雄で、人々に人気もあるんで、下手に手出しすると痛い目を見る。
その点でも、今回の流れはちょっと性急すぎて怪しいと言える。
「ビフロ王国の役人にも、噂の傭兵隊長にも会えそうにありませんでしたね」
「気になるのは傭兵隊長だな。聞いた感じ手際が良すぎる。名の知れた騎士とか冒険者でもなかったみたいなのに」
傭兵隊長の名前はボルグ。凄腕としてこの町で突如頭角を現したらしい。
辺境大陸に来る以前の経歴は不明だ。『魔王戦役』中は世界が混乱していたので珍しい話ではないが、ハスティさんでも尻尾の先すら掴めなかったのはちょっとおかしい。
クリスがいない間に町の防衛のため組織された傭兵団。
その傭兵隊長が防衛のみならず、近場の魔物退治でまで華々しく活躍。
今ではクリスもかくやという名声を得ている。そして、それを支えるのはビフロ王国から派遣された役人。
もちろん、彼もまた傭兵隊長を見出したことで世間からの評判が大変良い。
「では、まずはボルグという傭兵隊長の偵察からですね」
「ああ、直接見定めよう。実物を見れば何かわかるはずだ」
俺もユニアも普通ではない目を持っている。本人のいるところにいけば、なんらかの新情報を得られるはずだ。
「ところで、潜入した時のために、ハスティ様から地味なデザインの魔法の仮面を頂いたのですが」
言いながら、ユニアが見覚えのある魔法の仮面を取り出した。大きさを彼女向きに調整され、若干だが装飾が増えてデザイン性が増している。でも、地味だ。
「その仮面、ハスティさん自身のデザインでな。結構、地味って言われるのを気にしているんだ」
「よく見れば使いやすくて飽きの来ない良いデザインだと判断します」
今日もユニアは高性能なワルキューレとしての能力を発揮してくれた。
ともあれ、まずは本人を偵察だ。
0
あなたにおすすめの小説
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件
エース皇命
ファンタジー
前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。
しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。
悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。
ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる