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第17話:限界勇者と偉い人2
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「すみません。お客さんを出迎える用意もない家で」
「構いません。報告は聞いておりますから」
「小生も問題ありません。ここがある日突然現れたという家なんですなぁ」
ヴィフレアとワービンさんを部屋にあげて、とりあえずちゃぶ台を囲む。想定外だ。偉い人と会うことがあるなら、先方の屋敷とかになると思っていた。まさか、ワンルーム一軒家に女王と領主が来るとは思わなかった。しかも、エンネの用意したお茶を貰ってちょっと楽しそうにしている。
「面白い自宅ですね。そこかしこから強力な魔力を感じます」
「やはりですか。報告に来た者も同じようなことを言っておりました」
「この家は、ユーネルマ様が用意してくれましたから」
対面するように座り、事実をそのまま話す。エンネとマイサは俺の後ろだ。
「それで、何用でしょうか。ヴィフレア様」
「様はやめなさい。貴方と私の仲でしょうに。共に戦った日々は今も忘れない……というか、もう良いですね?」
何故か、ヴィフレアは横のワービンさんに確認をとった。ホヨラの領主は笑顔で頷く。
「いきなりこんな手紙を届けて、直接来ないわけないでしょうが! 途中で誰かに覗き見されてたら大変でしょ!」
以前、俺が出した手紙をちゃぶ台の上に置いて、ヴィフレアが吠えた。マイサが一瞬震えたので、エンネが軽く肩に手をやった。
「いや、同居人が増えたし、訳アリだから連絡しなきゃって思って……」
「訳アリにも程があるでしょうがっ。勇者辞めてもトラブル体質はそのままなの?」
女王ヴィフレア。各国から穏やかで美しい、女神のようだとすら言われることもある人物。でも、仲間の前だと割と怒りっぽかったり子供っぽかったりもする。多分、年取ったエルフは大体知ってるけど。
「別に好きでトラブルを呼び込んでるわけじゃないぞ。俺はここで静かに暮らしたいだけだ」
「そう思って十年は見守ってようと思ったら、一月もしないでこれじゃない」
キッと、ヴィフレアがエンネを睨んだ。
「……言いたいことがあるなら言うがよいのじゃ」
「魔王軍元参謀。クウトと子供の前じゃなかったら、家族と森の仇を討っているところだわ」
怒りに燃える目で、殺意を隠さずに話す。激しく動いた感情に合わせて、彼女の周辺が淡く発光すらしていた。溢れ出ようとする魔力によるものだ。
彼女がこれだけ怒る理由はある。あの時代、強力な狩人であり、魔法の使い手でもあるエルフは執拗に攻撃された。エルフの森は殆どが潰えて、人間達と同じように国を成さねばならなくなった程だ。
「ワシはクウト以外に殺されるつもりはない。そう決めたのじゃ」
「……貴方、今度は何をしたの?」
「一緒に暮らしてるだけだけど」
「っ! そこも心配なのです。いくら貴方でも女の子二人と共同生活とは! いつハレンチな行いが……」
そこまで言ってヴィフレアはエンネとマイサを見た。
「……ハレンチの可能性はなさそうですね。どちらにしろ、増築は至急考えた方が良いでしょう」
「おう。今なにを考えたか言ってみるのじゃ」
エンネのドスの効いた声を受け流し、ヴィフレアは微笑む。
「こちらのワービンからも報告を受けました。クウトといる限り、その女は安全だと判断します」
「む……。良いのか? ワシはそれなりに危険な女じゃぞ?」
「本当に危険なら、既にクウトが対処しているでしょう。それとも、私に追放令でも出して欲しいのですか?」
何やら俺は大分信頼されているようだ。案外、こういう時じゃないとわからないものだな。
そんなことを考えていると、今度は俺がヴィフレアに睨まれた。
「ぼーっとしていますが。この女がなにかしでかしたら、責任を取ってもらいますからね」
「わかった。その時は処刑してくれ」
「私に貴方を殺せるわけないでしょう!」
なんてこというんだ、見たいな顔で怒られた。
それからお茶を一気飲みして落ち着かせたヴィフレアは、何とか穏やかな口調で話す。
「そちらの魔族の娘さんには悪いことをしました。エルフにとっては百年も一瞬。女王として、彼らはしっかりと指導するつもりです」
「え、えと。あ、ありがとうございます。で、でもあ、あの……勇者って?」
マイサの疑問に、ヴィフレアは柔らかな笑みを浮かべる。そういや、いきなり俺とエンネの正体をばらしてたな。
「後でこの二人にしっかり話して貰いなさい。……こういうのは先に話しておかないと後で問題になります。二人とも、わかりましたね?」
「はい」
俺もエンネも、そう答えるしかなかった。
「あー、そろそろ小生も話して良いですかな。陛下」
横でうっすら笑みを浮かべていたワービンさんが遠慮がちにそう言った。
「どうぞ。少々、見苦しい姿をお見せしましたね」
「ぐふふ。いえ、陛下もまだまだ若々しい……。さて、クウト殿。小生はこの辺り一帯を治める者です。ご挨拶が遅れて申し訳ない」
「いえ。こちらこそ挨拶にも出向かずに……」
「ぐふふ。冗談です。クウト殿が静かに暮らしたい旨、陛下から聞いておりました。あえて接触を避けていたのです。……一晩で城門の北が耕されていても」
「…………」
「あれ、騒ぎになっとったんじゃな」
「なにかの奇跡じゃないかって神殿に人が集まってたよ」
エンネ達の声が聞こえる。そんな騒ぎになっていたのか。
「手短にお話致しましょう。雑草が生えてしまいましたが、もう一度、耕した状態にして頂けますかな? 他の地域から流れてきた人々に畑仕事をさせたいのです。将来的に、この辺りに村ができる予定でしてな」
「それは、構いませんが。そんなに来る人がいるんですか?」
「ぐふふ。農村にも色々と新技術が入りましてな。人が溢れることがあるのです。もちろん、皆さんに迷惑はおかけしません。当面は彼らは小生の小作人。将来的に独立した村になってもらいます」
俺はエンネの方を見た。これが妥当かどうか、まるでわからない。元魔王はどう思うだろうか。
「ワシらがやるのは耕すだけでいいのかのう? 村長をやれ、とか言われたら困るのじゃが」
そうか。そういう可能性もあるのか。
「ぐっぐっぐ。さすがのご慧眼。村長はお願い致しませぬ。ただ、獣害や魔物対策などをして頂ければ、管理費用をお支払い致します」
そう言ってワービンさんは書類を懐から出した。俺達に頼みたい仕事が羅列されていた。
柵の設置、害獣対策、水路の設置などだ。
「結構大規模な土木工事もあるのう」
「お二人なら可能だと、陛下が仰りましたので」
「魔法でも何でも使ってできるでしょう? 国としてもお願いしたいのです。食糧生産は大切ですから」
これは公共事業ということか。思いがけないところから大きな話が出てきたな。
「どうする? ワシはクウトの判断に任せる」
「じゃ、やってみようか」
「ぐふふ。気軽にお受けしてくださりますな。安心しました」
怪しく笑いながら、ワービンさんは後日資材関係など、詳しい資料を届けると付け加えた。
「用件は以上です。私は明日にも王都に帰りますが、騎士団はしばらく駐在します。何かあったら頼るように」
「はい」
有無を言わさぬ口調だったので、俺は素直に返事をした。そういえば、一緒に戦っている時もこんな感じだったな。
突然の来客は、長居は無用とばかりにすぐに去っていった。
「今後、なにかあったら先に領主に報告でもしといた方がいいかもしれんのう」
「そうだな……。うち、偉い人を迎える準備なんて出来ないしな」
「来ることがわかってるなら、ボクは出かけちゃいたいな……」
本当に怖かったのか、マイサが顔を青くしながら、そう呟いた。
「構いません。報告は聞いておりますから」
「小生も問題ありません。ここがある日突然現れたという家なんですなぁ」
ヴィフレアとワービンさんを部屋にあげて、とりあえずちゃぶ台を囲む。想定外だ。偉い人と会うことがあるなら、先方の屋敷とかになると思っていた。まさか、ワンルーム一軒家に女王と領主が来るとは思わなかった。しかも、エンネの用意したお茶を貰ってちょっと楽しそうにしている。
「面白い自宅ですね。そこかしこから強力な魔力を感じます」
「やはりですか。報告に来た者も同じようなことを言っておりました」
「この家は、ユーネルマ様が用意してくれましたから」
対面するように座り、事実をそのまま話す。エンネとマイサは俺の後ろだ。
「それで、何用でしょうか。ヴィフレア様」
「様はやめなさい。貴方と私の仲でしょうに。共に戦った日々は今も忘れない……というか、もう良いですね?」
何故か、ヴィフレアは横のワービンさんに確認をとった。ホヨラの領主は笑顔で頷く。
「いきなりこんな手紙を届けて、直接来ないわけないでしょうが! 途中で誰かに覗き見されてたら大変でしょ!」
以前、俺が出した手紙をちゃぶ台の上に置いて、ヴィフレアが吠えた。マイサが一瞬震えたので、エンネが軽く肩に手をやった。
「いや、同居人が増えたし、訳アリだから連絡しなきゃって思って……」
「訳アリにも程があるでしょうがっ。勇者辞めてもトラブル体質はそのままなの?」
女王ヴィフレア。各国から穏やかで美しい、女神のようだとすら言われることもある人物。でも、仲間の前だと割と怒りっぽかったり子供っぽかったりもする。多分、年取ったエルフは大体知ってるけど。
「別に好きでトラブルを呼び込んでるわけじゃないぞ。俺はここで静かに暮らしたいだけだ」
「そう思って十年は見守ってようと思ったら、一月もしないでこれじゃない」
キッと、ヴィフレアがエンネを睨んだ。
「……言いたいことがあるなら言うがよいのじゃ」
「魔王軍元参謀。クウトと子供の前じゃなかったら、家族と森の仇を討っているところだわ」
怒りに燃える目で、殺意を隠さずに話す。激しく動いた感情に合わせて、彼女の周辺が淡く発光すらしていた。溢れ出ようとする魔力によるものだ。
彼女がこれだけ怒る理由はある。あの時代、強力な狩人であり、魔法の使い手でもあるエルフは執拗に攻撃された。エルフの森は殆どが潰えて、人間達と同じように国を成さねばならなくなった程だ。
「ワシはクウト以外に殺されるつもりはない。そう決めたのじゃ」
「……貴方、今度は何をしたの?」
「一緒に暮らしてるだけだけど」
「っ! そこも心配なのです。いくら貴方でも女の子二人と共同生活とは! いつハレンチな行いが……」
そこまで言ってヴィフレアはエンネとマイサを見た。
「……ハレンチの可能性はなさそうですね。どちらにしろ、増築は至急考えた方が良いでしょう」
「おう。今なにを考えたか言ってみるのじゃ」
エンネのドスの効いた声を受け流し、ヴィフレアは微笑む。
「こちらのワービンからも報告を受けました。クウトといる限り、その女は安全だと判断します」
「む……。良いのか? ワシはそれなりに危険な女じゃぞ?」
「本当に危険なら、既にクウトが対処しているでしょう。それとも、私に追放令でも出して欲しいのですか?」
何やら俺は大分信頼されているようだ。案外、こういう時じゃないとわからないものだな。
そんなことを考えていると、今度は俺がヴィフレアに睨まれた。
「ぼーっとしていますが。この女がなにかしでかしたら、責任を取ってもらいますからね」
「わかった。その時は処刑してくれ」
「私に貴方を殺せるわけないでしょう!」
なんてこというんだ、見たいな顔で怒られた。
それからお茶を一気飲みして落ち着かせたヴィフレアは、何とか穏やかな口調で話す。
「そちらの魔族の娘さんには悪いことをしました。エルフにとっては百年も一瞬。女王として、彼らはしっかりと指導するつもりです」
「え、えと。あ、ありがとうございます。で、でもあ、あの……勇者って?」
マイサの疑問に、ヴィフレアは柔らかな笑みを浮かべる。そういや、いきなり俺とエンネの正体をばらしてたな。
「後でこの二人にしっかり話して貰いなさい。……こういうのは先に話しておかないと後で問題になります。二人とも、わかりましたね?」
「はい」
俺もエンネも、そう答えるしかなかった。
「あー、そろそろ小生も話して良いですかな。陛下」
横でうっすら笑みを浮かべていたワービンさんが遠慮がちにそう言った。
「どうぞ。少々、見苦しい姿をお見せしましたね」
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「…………」
「あれ、騒ぎになっとったんじゃな」
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「手短にお話致しましょう。雑草が生えてしまいましたが、もう一度、耕した状態にして頂けますかな? 他の地域から流れてきた人々に畑仕事をさせたいのです。将来的に、この辺りに村ができる予定でしてな」
「それは、構いませんが。そんなに来る人がいるんですか?」
「ぐふふ。農村にも色々と新技術が入りましてな。人が溢れることがあるのです。もちろん、皆さんに迷惑はおかけしません。当面は彼らは小生の小作人。将来的に独立した村になってもらいます」
俺はエンネの方を見た。これが妥当かどうか、まるでわからない。元魔王はどう思うだろうか。
「ワシらがやるのは耕すだけでいいのかのう? 村長をやれ、とか言われたら困るのじゃが」
そうか。そういう可能性もあるのか。
「ぐっぐっぐ。さすがのご慧眼。村長はお願い致しませぬ。ただ、獣害や魔物対策などをして頂ければ、管理費用をお支払い致します」
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「はい」
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