限界勇者のスローライフ~追放気味に田舎暮らしに突入したけど、元魔王やら魔族の子と出会って何だか幸せに暮らせています~

みなかみしょう

文字の大きさ
23 / 33

第23話:限界勇者と秘密の仕事1

しおりを挟む
 魔法はとても便利だ。何も無い所から火や水を出せるし、傷も病気も治すことができる。だから、この世界の文明は発展がゆっくりなんだと俺は思っている。

 勇者時代、仲間達には転生して別の世界の記憶があることは伝えておいた。それに伴って、自分の思い出せる範囲で地球の便利な発明について説明したことがある。電気とか電波とか、半導体とか、単語だけ知っていて実際に再現できないものばかりだったが、一部は役立ったようだ。

 実際、ルーンハイト王国では俺の証言を元に新技術の研究開発を続け、たまに世の中に現れる。ただし、その速度はゆっくりだ。
 今になって思えば、これは良いことだと思う。文明の進歩が急加速した場合、何かよくないことが沢山起きるような気がする。経済とか政治とか、影響が大きそうだ。

 なんでこんなことを考えているかと言うと、俺が話したけど再現できないものの中に、『飛行機』が存在するからだ。
 そして、色々出来て便利な魔法の中でも、飛行は難易度がとても高いものとされている。どうも、不安定なのだ。妙に魔力消費が多かったり。高度を取れなかったり。
 
 元魔王城に向かうと決めた俺達に立ちはだかったのは移動の問題だった。
 かなり近い地域に住んでいるとはいえ、山越えは必須。できれば空を飛んで軽く済ませたい。
 神剣ルオンノータがあればそんな心配もないのだけれど、あいつは今頃天界でのんびりしていることだろう。

「まずは偵察。マイサのこともあるから日帰りで済ませたいんだが。さすがに空は飛べないか」
「飛行魔法は面倒なんじゃよなぁ。まあ、方法はないわけではないという所じゃよ」

 方法があるらしい。俺の懸念はエンネによって一瞬で解消された。

「さすがはエンネだな。魔法の専門家か」
「飛行魔法は誰もが一度は研究するものじゃ。……ワシのは強引に飛ぶ」

 なんか、雲行きが怪しくなってきた。

「その方法を聞いてもいいか?」
「うむ。まず、全身に高度な防御結界を貼る」

 いきなり安全対策の話から始まった。いや、安全は大事だ。

「それから、ワシが開発した指向性限定爆発魔法で飛び上がり。その後は、暴風の属性魔法の応用で無理矢理進んでいくんじゃ」
「それはちゃんと飛んで移動できるのか?」

 そもそも飛行魔法と呼んでいいのだろうか。爆発してすっ飛んでいくだけに聞こえるのだが。

「魔王軍の中で、上手く出来たのはワシだけじゃった。お主のクリエイト・ホット・ウォーターと似たようなもんじゃ」

 他の人、怖くて真面目にやりたくなかっただけなんじゃないだろうか。
 しかし、理屈はわかった。魔法の術式を教えてもらえれば俺にもできるはずだ。

「よし、俺に教えてくれ」
「この魔法は練習に時間がかかるのが難点じゃ。いくらクウトでも、少し時間がかかるじゃろう。だから、ワシがお主を運ぼう」

 こうして、空高く移動するエンネに宙吊りにされた状態で移動することが決定した。
 空から落ちたくらいじゃ死なないだろうから、大丈夫だろう。多分。

 ◯◯◯

 翌朝、準備を整えた俺達は早朝から出発することにした。
 準備と言っても大したものはない。俺なんか弁当と武器代わりの鎌を持ったくらいだ。
 
「じゃあ、夜には一度帰るから」
「神殿の人へのお願いの手紙じゃ。小遣いで好きなものを食べるんじゃぞ」
「わかった! 二人とも、気をつけてね!」
 
 運命神の神殿に手紙を書いて、マイサを夜まで預かって貰うことにした。託児所代わりにしているわけじゃないが、このくらいなら受けてくれる。俺が運命神の神聖魔法を使えるので、結構良くしてくれるのである。

「では、いくぞい」
「お手柔らかに頼む」

 後ろにたったエンネが、しっかりと腰に手を回す。このままに俺を抱えて飛ぶ形だ。

「意外と細身なんじゃの。まさか、お主を抱きかかえるとはのう」
「人生、何があるかわからないな」
「まったくじゃ。あ、マイサは離れておるんじゃぞ。ちょっと危険じゃからな」

 腰の周りにエンネの細い手が回っているのを見て思う。背中に密着しているけど、彼女はローブを着込んでいるので特別何か感じる所はない。

「では、行くとするのじゃ。万物の根源の魔力よ……風よ、火よ」

 エンネの足元に魔力が集まっていく。幾何学模様が光り輝き、その色が黄色から白へと変わりゆく。魔法陣の一種で、魔力によって描く技術だ。これほど細かく正確なものは、久しぶりに見た。

「爆ぜよ!」

 とうてい空を飛ぶためのものとは思えない呪文と共に、足元で爆発が起きて俺とエンネは射出された。

 なるほど。これは高度な防御魔法が必要なわけだ。
 何となく察していたけど、これは打ち上げだ。ロケットみたいなのの。断じて飛行じゃない。

「どうじゃ! 見事なもんじゃろう!」
「これ、俺以外の誰かを運んだことあるか?」
「何故か皆嫌がっておった」
「だろうな……」

 ロケットみたいに高空に打ち上がった後は、風の魔法で強引に前進。高度が下がったらまた調節。常に落ち続けるのを何とか補正しているようなものだ。
 体の周りに張った防御結界のお陰で上空の温度や気圧差など、諸々の問題は解決している。
 しかし、物凄く怖い。落ちても自分で何とかできる俺でこれなんだから、他の人は絶対に運ばれたくなかったことだろう。

「…………」
「なんじゃ。難しい顔をして」
「いや、エンネは超一流の魔法使いってことでいいのかな、と」
「褒めすぎじゃぞ。照れるではないか」

 なんかご機嫌な声が頭の後ろから聞こえて来る。
 眼下の景色は絶景だ。晴天の空の下、森も山もどんどん越えていく。
 俺達は真っ直ぐ西に向かっている。目的の地域はすぐに見えてきた。

「相変わらず、不景気な所だなぁ」

 かつて魔王城があった地域は、周囲を山岳に囲まれた小さな盆地だ。そして、魔王軍がやった実験や儀式の影響か大地が黒く変色している。植物も影響を受けて、全体的に不気味で気持ち悪い植生に変化してしまっているのだ。
 それなりの広さがありながら、人間達が開拓に入らなかったのこれが理由だ。勿論、ここには大量の魔物が残っているというのもある。
 
「魔王様が環境を買えた影響じゃからのう。お、魔王城が見えてきたのじゃ」
「ん? 何かいるな?」

 盆地の中央に存在している巨大建造物。かつて、魔王城と呼ばれた建物の名残だ。最上階は戦いで消し飛び、今ではほぼ外壁のみになっていた。
 そして、その外壁の崩れた箇所に巨大生物がちょっとだけ見えていた。

「あれ、ドラゴンじゃないか?」
「…………ちょっと着陸して話しあうのじゃ」

 何か思う所あったらしく、エンネが高度を下げ始めた。魔王城跡地近くにある、不気味な森に向かって一直線に向かっていく。

「なあ、今思ったんだけど。これ着地……」
「安心せい。減速してるし、防御結界は完璧じゃ」

 自信満面の声と共に、俺達は森の片隅に着地……実質着弾した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう
ファンタジー
 小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。  しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。  士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。  領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。 異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル! 圧倒的不利な状況を武と知略で切り抜ける! ☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...