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最悪の事態だ。
無線機が使えないなんて、どうするんだ。
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満州平原に月光改は不時着した。 平原であるから木戸操縦士はSTOL機能を最大に使い短い距離で不時着できた。 「オイ、だいじょうぶか。」 定番のセリフだ。 「ハイ、なんとか。」 これも定番のセリフだ。 「エンジンは切った、火の点検。」 「了解です。」 座席ベルトをはずす。 電源ターミナルをはずす。 燃料モレを点検する。 電気火花で機体が燃えないようにするのだ。 まだ、燃料は補助タンクに残っている。 普通、不時着するときは燃料を放出して不時着時の火災予防するのだが、今回は燃料放出のヒマと時間がなかった。 まあ、火災にならなかったのでOKだ。 とりあえず、火災の危険が去ると、「空母へ連絡だ。」 となる。 佐藤君、無線機の電源をつないでONだ。 あれ、なにもいわない、普通プとかハとか起動音がでるが。 「無線が?」 「電源ランプは点いてるのですが。」 最悪だ、電源ランプは赤く点灯している。 接触不良などのカンタンな不具合ではないのだ。 「ここは、どのへんですかね。」 「まあ、満州側とは思うが国境近くには変わりないだろう。」 夜の星で位置は測ることは出来る。 が、イマはお昼である。 ただの平原であるから、地形ではわからないのだ。 家なんて見渡すが無い。 まあ、ソ連軍の捕虜になるよりマシなくらいだ。 「グゥー。」 と腹が鳴る。 腹が減った、腹がへってはイクサが・・・・「よし、とりあえず、なんか食うぞ。」 木戸が機内から食糧バックを出してきた。 無線機を点検していた佐藤君、「そうですね、腹が減りました。」 と胴体から這い出てきた。 簡易コンロで湯を沸かした。 ドリップコーヒーだ。 木戸はコーヒー通で知られていた。 手さばきからして違うのだ。 頃合を見て、ドリップをはずす。 チタンマグにコーヒーを入れた。 1つを佐藤君にまわした。 「モカの定番だが、前線だからな。」 その間に戦闘糧食のパックが化学熱反応で温まってくる。 つまり、ホッカイロの原理で水分を加えて熱反応させるのだ。 「おっ、これはチャ-ハンか。」 どうやら定番のカレーチャーハンだ。 ここが、紛争の最前線とは思えない、のどかな雰囲気だ。 つかの間の安らぎというか、息抜きも必要なのだ。 春先とはいえ、満州北部だ、まだまだ寒いのだ。 暖かいコーヒーは心の安らぎだ。 「よし、メシは食った、ヤルべきことをヤルか。」 木戸が気合を入れる。 「ハイ、なんとしてでも帰りましょう。」 「よし、サトウは機体の点検だ、オレは周りを偵察してくる。」 万イチ、ソ連軍が近いとなれば機体を爆破して満州軍まで逃避行となりかねない。 連発ピストルをベルトにねじ込んで木戸は付近の偵察に出かけた。 佐藤君は、また機体に潜り込んで点検と補修だ。 腰のポケットから万能工具を出して、口にミニライトをくわえて胴体に潜り込んだ。 さて、まずは、尾翼の点検だ。 狭い尾翼の付け根に体を押し込んだ。 尾翼を動作する油圧ピストンがねじれている。 機体に穴だ。 確か、敵からロックオンされたハズ。 そうか、敵のミサイルが我が方のチャフ(アルミ箔の細かいやつ)とフレア(燃えて赤外線をだす)により機体に当たらずに近くで爆発した。 その破片が機体に飛び込んで尾翼の油圧ピストンを破壊して・・・・ どうやら、不時着は急降下時でチヤフとフレアの放出と敵ミサイルのロックオンの関係が絡んでなったようなのだ。 あと、ミサイルの破片は胴体の配線やらリンケージなどを破壊していた。 胴体は戦車クラスの装甲であるが、尾翼は違うらしい。 佐藤君は配線を100円ライターの原理で出来た半田コテで1本1本ハンダ付けをして直した。 そして油圧ピストンをはずして、手動で尾翼を動作させるように造りなおした。 破片でパンクした尾輪もゴムパッチでパンクを治す。 あとは、無線機か。 だが、無線機の増幅回路がミサイルの破片で破壊されていた。 これをどうするか、たぶん、飛行時間を過ぎているので空母から検索の検索機が出ている頃だ。 満州の最前線だ、合図のビーコン電波や煙など敵に探索されるからダメである。 暗号で盗聴されない無線機しか使えないのだ。 それに、この事態を速く空母のCICに連絡せねば、佐藤君は考える。 どうする、そうだ、近くに満州軍がいるのだ。 なんとか、そこまで飛んでいくのだ。 佐藤君、無線の修理はあきらめて機体の修復に専念した。 機体と乗員を救う方法が、なんとかオレなら出来る、そう確信した真のオタクであった。
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