282 / 380
ソ連戦車VS満州戦車隊
200両VS20両
しおりを挟む
北満隊は、おおよそソ連戦車隊が進攻してくる地点を予想していた。 もとより、自身の国の地形は把握していた。 戦車であっても行動できる地形は、限られてくるのである。 山や谷は基本、無理である。 森林も行軍が極端に遅くなる。 普通の平原か荒地なら問題はない。 まあ、ジープと大差ないのである。 それで、待ち伏せである。 完全に囲まれてしまっては、全滅か降伏しかない。 それで、逃げ道を確保できる場所に待ち伏せを賭けたのである。 これは、賭けであった。 時間稼ぎができる、それでいて全滅しないように、岩山を使い戦車を岩山の間に配置して広い防衛線を張った。 まあ、自分では最大の工夫をしたつもりであった。 戦車の背中に単車を載せていた。 偵察用だ。 日本製の高性能なバイクだ。 1台しか北満隊にはなかった。 それで、運転のうまい兵に偵察に行かせた。 30分くらいで、偵察兵は帰って来た。 「隊長、ヤツラが来ました、200両余りが幅いっぱいに拡がり進軍してきます。」 「やはり、新型か。」 「いえ、以前見たV型です。」 フロートをはずせばV型戦車に戻るのだ。 「そうか、これは、生き残れるかもしれん。」 V型の75ミリ砲では満州型のマークⅡの装甲は破れないからだ。 「全員、耳栓を忘れるな、そして確実に戦車の弱点である、軌道を狙え。」 隊長の王 正規は無線で、全戦車に指令した。 耳栓を以前忘れた兵が難聴で、耳に異変をきたしたからである。 耳栓は、でかいイヤーバッドで無線指令が聞えるように小さいスピーカーが内臓されていた。 「あと、15分くらいで、敵が来るぞ。」 隊長はさらに、「米軍がこちらに向かっている、それに空母にも援軍を頼んだ。」 「ここで、くい止めないと満州国は無い。」 「ムダな弾を撃たないよう節約を忘れるな。」 弾が無くなれば終わりである。 エンジン音とキュル、キュルと無限軌道の音が聞えてきた。 特徴ある、デーゼルエンジンだ。 ソ連の独逸製V型だ。 こちらの防衛線に気がついたようだ。 敵戦車が一斉に止まった。 やがて、「あー、あーっ。」 「こちらは、ソ連戦車隊の隊長だ。」 「満州軍に降伏勧告だ。」 「こちらは、250両、そちらは20両だ、悪いようにはしないから降伏しろ。」 もう、数の暴力で勝ち誇ったような勧告だ。 マイクを持った王は、「満州軍に降伏の文字なぞ無い。」 「我ら満州軍は侵略者には絶対に負けない。」 と叫んだ。 相手が広東語できたから、広東語で返した。 交渉は決裂した。 戦わずして、なにが降伏だ。 相手がV型なら怖くない王 正規であった。 狙いところを確実に撃てば、満州型マークⅡは250VS20でもいける! いまだに、1両のマークⅡも敵に討ち取られていない事実が王に絶対の自信を与えていた。 心配は弾の数だ。 おそらく、1両での弾数は同じくらいだ。 1発で、確実に1両を仕留めないと。 「いいか、無線でどれを狙うか共有しろ、弾がもったいないからな。」 「では、右から10両までは、20番が。」 「左から10両までは1番が。」 それぞれの戦車は狙う相手戦車を振り分けた。 「これが、答えだ。」 と隊長車が撃った。 真ん中の1両の無限軌道が破壊された。 走れない戦車はタダの戦車だ。 火が出る前に戦車兵が逃げ出した。 もう、それから砲撃の荒らしだ。 砲の砲撃の煙が煙幕のようだ。 以前、ソ連戦車にボコボコに撃たれたが戦車は無事だが、戦車兵が参ってしまった。 音が鐘の中にいて、打たれっぱなしなのだ。 耳栓くらいでは普通のヒトなら発狂しかねない。 訓練された戦車兵であるから耳栓くらいで発狂しないが。 それで、高品質の防音イヤーパッドを日本の音楽器メーカーから取り寄せて兵にくばったのだ。 今回はそれで、冷静に砲撃や戦車同士の連絡ができるようだ。 王隊長は、なんとかなりそうだ、と期待したのである。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
266
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる