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避難訓練
ひとりも欠けてはならない。
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やっと、膨大な電力を使い衛星軌道計算が完了した。 そうそうに、糸河研究所にデーターが送られて、パラボラアンテナからイマドコ衛星17番に指令電波が飛んだ。 研究所の巨大ブラウン管の衛星から見た地表の画面が、ゆっくり移動する。 九州をカバーしていたイマドコ17番が軌道を換えたのである。 対馬から、さらに移動して半島の釜山上空にピタリと停まった。 「さあ、24時間体制で監視だ。」 係員はコーヒーをお代わりした。 正式に雇っている政府公認の正統派メイドが、鮮やかな仕草でカップを入れ替えた。 このメイドは、特に糸河博士の要望で、政府が雇っているらしい。 身分は国家公務員である。 研究所員には好評である。 ちなみに、給金は糸河先生より、高給であった。(でないと、給仕なぞやるもんか。)日本は豊かな国であるのだ。 銀座のメイド喫茶なる喫茶店のメイド店員は高給で知られていたのだ。 若い美人の娘は、それなりの給金でないと給仕の仕事では働かないのである。 話を戻そう。 対馬では、役所に統合作戦司令部が地震対策研究班として潜り込んできた。 役所の横にでかいテントを張り、地震対策研究班のカンバンだ。 どうぜん、地震対策には軍が動く。 震災で、空母が活躍することは常識であった。 超電導でない、普通のエンジンのVTOLが2機、役所の前の広場を占領したのだ。 津波と地震が同時に対馬をおそったらどうするのか、と住民は日頃から不安であった。 やっと政府が動いたのか、と感心して見に来るほどであった。 対馬軍港には空母ナデシコサクヤが戦闘機をカラにして待機していた。 避難住民を乗せるためである。 地震があり、津波が来る前に避難しなければならない。 そのための訓練であると表向きは発表されていた。 それに疑問を抱く者はいなかったので、広報や指示は安直に届いたのである。 そして、役所からは、訓練は、時間を教えずに開始するとのことだ。 いつあるか、わからない地震であるから当然のことであった。 訓練の準備を開始して2日後のことだ。・・・・ 糸河研究所の画面をコーヒーをすすりながら観ていた係官が緊急ビザーを押した。 画面を見ると水上戦車が200両余り、釜山の練兵場に集合している。 その戦車の前に兵隊の列が、甲子園野球大会並みに並んでいる。 間違いない、進攻作戦の開始だ。 いま、午後7時だ。 隊列をつくり、全部の戦車が海岸にでるまでが、1時間ほどかかる。 そして対馬まで2時間あまりだ。 そして上陸に1時間ほど、として午後11時頃にはシナ軍の水上戦車隊が対馬に上陸だ! 警報が対馬の役所から全島に鳴り響いた。 ちょうど夕食の時間帯である。 ほとんどの島民が在宅したいた。 「オーイ、町内で、集まるぞ。」 食べかけの食卓に近所の者が迎えにくる。 「え、今。メシを。そそがましい、(そそっかしい)ちびんたま(待ってくれ)・・・」 地震や津波はメシを待ってはくれない。 「なにこく、うっちょくわけにはいかねえ。」(放っとくわけには) 食卓もそのままに住民らは避難所に集まった。
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