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戦車隊の命名だ。
イナズマ隊だぞ。
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木田上等兵の奮戦のおかげで、各戦車の砲塔に隊のマークが入った。 「日の丸もいいが、やはり富士山だな。」と、感慨にふける今野である。 富士山は日本人の魂と言ってもいいのである。 万葉の昔から、歌(和歌)に歌われてきた富士山である。 満州平原は、草原ばかりではない、それで戦車にはカモフラージュとして、黄土色やらみどり色やらの迷彩模様が描いてある。 そこに、富士山にイナズマが走る隊のシンボルである。 「隊長、いっそ隊をイナズマ隊とすれば。」と、副隊長が具申である。 「おお、それは名案だ。」「こんど、陸軍省の庶務へ許可申請をだそう。」との話になる。 隊旗も必要だ。 陸軍旗と並べて飾れば・・・「木田、ついでに隊の旗も・・」と、頼もうとしたら、「木田、どこだ。」いない、逃げやがったな・・・ 「そうだ、イナズマのマークだけでもイケそうだな。」と、イナズママークを黄色の下地に描いた。 つまり、白抜きだ。 旗は、簡素がいいのだ。 日の丸も陸軍旗(旭日旗の陸軍版)も白地に赤である。 真っ赤では、ソ連軍になってしまうからだ。 労働者の血の色ではない。 日本軍の旗は、朝日の色だ。 (ウソ新聞の朝日新聞が似た社旗だが、まったく迷惑な話だ。さっさと落日新聞として廃業だな。) ・・・そして、数日後の事である。 満州国の戦車工廠から、製鉄所が軌道に乗ったとの連絡だ。 「では、もうすぐですね。」と、電話で告げる。 「そうだな、まもなく戦車生産が軌道に乗ることだろう。」と電話の向こうの技師だ。 「ソ連からの鹵獲戦車が多くなりまして、我が戦車隊としても肩身が狭いので・・」 「うむ、もう少しの辛抱だ。」「あ、そうだ。」「なんでしょう。」「追加装甲だが、トラックで送ったから、全部の戦車に取り付けられるぞ。」「それは、ありがたいことです。」「うむ、では。」・・・ 数日して、追加装甲板が運ばれてきた。 いままで、隊長車にしか追加装甲がなかったのだ。 それで、オトリなどの役ばかりだったが・・ 「おお、日本戦車用の装甲と、ソ連用とあるようだな。」「さすが、技術工廠ですね。」「そうだな。」「取り付けは、整備員らと突貫でやります。」「うむ、オレもだ。」「また、いつ露スケが河を渡って来るやもだな。」 こうして、イナズマ戦車隊の戦車は撃たれ強くなっていくのである。 「ソ連の鹵獲が8両と、我が日本のが7両だから、15両だな。」「ふむ、5両は予備で確保しておくとして、戦車兵が不足だが。」「あまり、装甲車部隊からも。」「うむ、ここは歩兵から募るか。」「しかし、運転の初歩からの訓練が。」「それは、そうだが、いまに足りなくなるぞ。」「その為にも、戦車兵の育成は大切だからな。」「本土の富士学校は、どうなってるのですかね。」「あ、あ、オレ達の母校だな。」「そうですよ。」「まもなく、卒業の時期でしょ。」「最低は12名は不足だからな。」「それでも、ギリですからな。」「戦死でもされると・・・」「戦車1両ヤラれると、4名が戦死の可能性もあります。」「あまり、考えたくないが。」「それは、そうですが・・」 「一度、本土に戻るか。」「母校へ募集だな。」「期待しております。」・・・
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