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使える兵器に仕上げるのだ。

50キロ遠方へ・・・

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 「どこか、実験場は無いですかね。」と、斎藤君が・・・
「つまり、50キロ先の目標へ50キロ爆弾を運んで爆発させられるかの検証ということか。」
 「そうだよ。」「どこか、海ではないところで。」
「それは、なかなか難しいな。」と、軍幹部だ。
 「大陸なら、内地ではまず無理だな。」
「では、満州国ですか。」「そうだ。」
 「しかし、この飛行機爆弾は軍事機密扱いだ。」「果たして、許可がでるかな・・・」と、陸軍幹部がいう。
「内地で、50キロ爆弾を積んで自動操縦で飛行させて、50キロ先へ観察しながら飛ばすなんて・・・」と、いうのだ。
 海上なら、あるのだが・・・日本は山や川や人家があるから・・・富士山の樹海は・・・いや、万が一山林火災が・・・なんせ、爆発物を積んで模型飛行機が飛ぶのだから・・・
 「ここは、やはり満州平原しかないでしょう。」と、陸軍幹部だ。
「満州国へは軍が掛け合います。」「50キロ四方で平坦な土地なぞ、日本には無いでからな。」
 「陸軍で自動車へ無線電話を装備できますから、それで追跡できますよ。」と、幹部がいう。
こうして、陸軍の全面的な協力で実際の50キロ遠方への試験飛行が実現したのである。
 史実でも、陸軍は一般へ理解がある協力をしているのだ。
海軍は軍事機密に五月蠅かったが・・・
 海軍の零戦は一般の国民は知らなかったのだ。
もっぱら、陸軍の隼戦闘機や97式戦闘機が有名だったのだ。
 海軍では96式艦上戦闘機が公開されていたくらいだ。
敵戦闘機へ空中衝突して無事生還した海軍の96式戦闘機は展覧会で公開されたのだ。
 海軍は博物館にある戦艦の模型展示にも数値を替えたり形状を替えたりして軍事機密に五月蠅かったのだ。
実際、戦時中の博物館の戦艦模型などが・・・形状などが改変してあるのだ。

 「満州行きの準備は?」と、斎藤君が言われる。
「まあ、機体は2機用意しました。」「そして、予備のエンジンも造りました。」「うむ。」
 「あとは・・・」
「そうだな、満州へは会社からは・・・君と・・・」
 正直、満州は最近建国されたばかりだ。
ソ連の脅威もあるから、あまり行きたくはないのだ。
 「ワシは、会社のことがあるからいけないのだ。」と、社長だ。
「軍から、世話係が数人つくらしいから、なんとかなるだろう。」と、なんと斎藤君がボッチなのだ。
 まあ、会社といっても模型飛行機の会社だ。 人員なんぞ、余分はいないからだ。
有限会社の家内工業であるのだ。
 100機の注文が・・・それで、満州派遣は・・・ボッチなのである。

 「あのう、出張旅費は?」「軍からもらいなさい。」
「あのう、雑費は?」 こづかい銭なんて、無いらしい。
 「まさか、社長それも軍からなんていいませんよね。」と、先手を打った斎藤君だ。
「うむ、政府から予算が降りたら考えよう。」
 「でも、予算は予備費からしいので、まだですよ。」と、斎藤君が食い下がる。
しかし、そこは伊達に中小企業の社長ではないのだ。
 「庶務の鈴野さんから・・・」
「そんな、無理ですよ。」と、泣きつく・・・
 まあ、そんなかんなで満州への船旅だ。
陸軍の徴用船で満州行きである。
 軍事機密あつかいだからである。
なんと、憲兵隊までが・・・
 よほど、50キロ先への誘導爆弾に陸軍は期待してるようだ。
うでに憲の腕章が・・・ビビリまくりの斉藤某である。
 鬼より怖い憲兵隊という歌まであるほどなのだ。
泣く子も憲の腕章で黙るらしいほどだ。
 カーキー色の陸軍の制服に黄色い腕章で、憲の字が真っ赤だ。
九八式の短機関銃をかまえて模型飛行機の木枠を張り番である。
 顔を出した斎藤君へ、「やあ、あんたですか50キロ届く飛行爆弾を作ってくれたのは。」と、憲兵には高評価なのだ。
 よほど、海軍と仲が悪いようである。
まだ、戦艦大和は計画もできていないころだ。
 つまり、海軍の戦艦長門の40サンチ砲より遠方に届くのだから・・・(いつも海軍に負けていたが・・・今度はざまあなのだ。)
海軍が悔しがる顔が・・・それも、定まった場所へ命中するのだ。
 敵の陣地がわかれば、その真中へ飛行爆弾を堕とすことができるのだ。
砲撃なら、なかなか当たらないのだが・・・

 「えっ、これが徴用船ですか。」「そうだ。」
「これは、空母じゃないですか。」
 そう、斎藤君は陸軍の空母である、あきつ丸が・・・
「あ、あ、飛行機を運ぶと言ったら、こうなったんだ。」と、係官がいう。
 「まあ、飛行機には違いないですが・・・」と、陸軍の空母へ・・・
輸送船を陸軍が全通甲板に改造したフネだ。
 「しかし、そこは空母だ。」「20ノット(約37キロ毎時)は出るからね。」と、係官がいう。
「いえ、ここから飛ばすんじゃないんですが。」と、斎藤君が言い訳だ。
 「いまさら、替えてくれなんて。」と、陸軍の係官がいう。
「まあ、空母からも飛び立てますからね。」と、慰める斎藤君だった。
 あきつ丸には追跡用の陸軍の四輪駆動車も・・・
くろがね四駆というヤツだ。
 米軍のジープより完成は早いのだ。
ドイツのキューベルワーゲンは四駆ではないからな!
 わざわざ、満州平原を走破するための車台らしい。
それに、随伴する輸送トラックの2台が運ばれたのだ。
 もちろん、斎藤君はトラックへ同乗である。
さあ、本格的な50キロ先への飛行爆弾の実験がはじまったのだ。
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