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新たな香りだ。
豆は選ぶべきだ。
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潜水艦イ号艦長のハシバは、朝のコーヒーを副官から受け取った。 「あ、あ、気が利くな。」 とカップを持つ。 「あれ、いつもとカップが違う。」 「わかりますか。」 「そりゃあ、持てばわかるさ。」 紙が2重で、手に熱さが伝わらない。 昨日までは、薄い紙コップだった。 「どうして?」 「え、え、まあ、飲んで見ては。」 そういわれて口をつける。 「いい香りだ。」 そう、コーヒーは香りが勝負だ。 (人類がヒツジを飼育しだしたころ、ヒツジがコーヒー豆を木の枝から食べていたそうだ。 それを見たヒツジ飼いが、豆を食べるといい気分だ。 そうしてコーヒーは発見された。) カフェインたっぷりは眼が覚める。 「アレ、豆も換わったのか。」 「そうらしいです。」 そして、飲んでから、紙のカップを裏返した。 「おお、これは。」 紙コップの裏にはトヨス自動車と印刷が小さく入ってる。 「よく、陸軍がOKしたな。」 「しーっ、内緒らしいですよ。」 「え、本当か?」 「え、え、裏のルートで仕入れたらしいです。」 「裏の。」 「まあ、私は知りませんが。」 といい訳する副官だ。 兵にとり兵站(兵隊の食糧)は大切だ。 うまいメシは強い軍隊を造る。 生きて戦いぬいて、うまいメシを食うのだ、と活力ある軍隊となるのだ。 たとえ、単なる偵察任務でも潜水艦で海中では気が治まることは無いのだ。 そこに、1杯のコーヒーはかけがえの無い安らぎだ。 任務遂行の活力となるのである。 コーヒーマシンは鎌倉印のままだが、豆と紙コップが変わっただけだ。 しかし、「もう、今までのは飲めないな。」 とハシバ艦長は本音を漏らす。 潜水艦艦長会議(親睦会だ。)もバカにはできないと再認識したのである。 コーヒー豆が換わっただけだ。 しかし、イ号の雰囲気は換わったのだ。 以前に増して、緊急潜航の時間は数秒だが短くなった。 隊員の動きもきびきびして観ていて気持ちがいいのだ。 これは、兵器を新造するより効果的ではないか、と思う艦長のハシバ少佐だ。 武器の性能を高めるのもいいが、兵の環境を替えるだけで、戦力アップにつながるのだ。 そして、陸軍にはバレなかったのだ。 それは、潜水艦という狭い空間と、なにより潜水艦は海の忍者だ。 忍者が存在を悟れては意味がない。 潜水艦乗組員は口が堅いのだ。 そして、この事実は艦長止まりだ。 上層部は知らなかった。 まあ、陸軍の兵がイ号に乗船は無いからね。 トヨス自動車も知らなかったのだ。 なんせ、対馬守備隊の戦車隊の小隊長が胴元だから。 戦車隊はコーヒーの消費が多かったからトヨス自動車も疑わず、バレなかった。 海軍上層部は、最近イ号の動きが機敏になったので、新型イ号の話は立ち消えとなったが、それがコーヒーが原因とは全く気が付かなかったのだ。
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