5 / 105
テスト操縦士、米国より来満する。
遠路はるばると地球を半周して・・・
しおりを挟む
「いいか、スミス君。」「ハイ。」
「黄色い猿が、ちゃんと組み立てられるか見極めてこい。」
「わかりましたサー。」と、上官へ敬礼して返すスミス操縦士だ。
かれは、退役してダグラス社のテスト操縦士に採用された元軍人だ。
満州国から輸送機の組み立てが終わって・・・テストする操縦士がいないと、連絡があったからだ。
「まさか、組み立てられるとはおもっていなかったが・・・」
「ヤツらの技術は侮れんかもしれん。」「詳細に検分してきてくれよ。」
「わかりました。」「で、コパイは?」(コパイとは副操縦士のことだ。)
「そうだな、アラン君でどうだ。」「わかりました。」
「太平洋航路の日本のアジア丸のチケットを渡しておこう。」
1等室のキップ2枚と渡航許可証2枚を受け取る。
こうして、米国から満州国の大連港までへの渡航となったのだった。
船旅は30日余りを要した。
シスコから横浜を通り大連港までは地球を半周だ。
15ノット程度の客船では、そんなものだ。
客船にはシナ人やら欧州人も多かった。
太平洋航路の客船は日本船が多かったのだ。
1等客室だったので快適な船旅だった。
ダグラスDC-3型機の操縦ライセンスを獲得して・・・DC-3の300時間あまりの飛行経験があるスミス操縦士だ。
基本、一般的白人と同じくスミス、アラン両人は人種差別を当然と思っている国民だ。
しかし、そこは大人である。
内心は差別しても、表には・・・さすがに表さなかったようだ。
なんせ、日本の客船だし・・・
(日本と米国は互いに牽制はしていたが・・・開戦となるほど関係は悪化していない時代だ。)
もう、船旅は御免だ・・・と、思う頃に大連港へ到着したのだ。
港には日本側から数人の出迎えが・・・二人の操縦士を歓迎してくれた。
「おゃあ、お待ちしておりました。」
「機体は完成したのですが、肝心のテスト操縦士が日本には皆無ですので・・・」
「完成した機体が調子よければ、我が社がライセンス生産をしたいとの希望もあります。」と、日本側が持ち上げる。
わざわざ、地球を半周してやってきてくれたのだ、当然のことだ。
「今日は十分に休んでいただいて・・・」「テスト飛行は明日からで・・・」
と、つたない英語で話す日本側だった。
ヤマモト君もサイトウ君も洋書は読めるが・・・おしゃべりは・・・まったく無理だったからである。
それでも、通訳は雇えないから・・・わからないところは筆記で・・・なんとか通じたのだった。
当時の最新の技術書は英文が多かったからである。
当時は英語は読めるが・・・しゃべれない(米国人に慣れて無い。)技師が多かったとか・・・
「ところで、エンジンは始動しましたか?」と、スミス君が聞いた。
「まだ、廻していません。」と、正直に答えるヤマモト技師だ。
それには、訳があったのだ。
普通、エンジン始動はプロペラを廻して駆動するのだが・・・
内地にはエンジン始動用の日本陸軍 トヨタ エンジン起動車 があったのだが・・・
なんせ、特殊な車両で数が少ない。
とても、満州までは・・・廻ってはこなかったのだ。
そして、ダグラスDC-3型には、エンジン始動のマニュアルが想像だけだから・・・
失敗して壊したら・・・後が無いのだ。
「ふむ、形はできてるようだな。」と、スミス操縦士がいう。
「ありがとうございます。」「それなりに苦労しました。」と、サイトウ技師だ。
実際のところ、工員らは初めての米軍機(輸送機)組み立てだ。
かなり、スキルを身に着けたようだ。
日本とは組み立て手順が違うからである。
素行錯誤の積み重ねで、完成したダグラスDC-3型機なのである。
「燃料はあるようだな。」と、操縦席で点検を始めるアラン副操縦士だ。
事前の点検は副操縦士がやり、それをチェックするのが機長のスミス操縦士の役目である。
米国より持参した点検リストを観ながら・・・点検を始める両操縦士である。
それから、3時間・・・チエックが終わったようだ。
日本側を信頼していないスミス君らは・・・何度も、チェックを繰り返したのだ。
ここで、航空機事故では米軍の恥であるからでもある。
黄色い猿に、小バカには絶対にされたくない両人なのである。
「消火器を持ってエンジンの後方に作業員を配置してください。」と、注文だ。(エンジン発火に備えてである。)
「ハイ、あとはどのように?」
「車輪止め外しの人員を数人。」
「ところで、エンジンにフライホイールと始動モーターは取り付けてくれましたか?」と、アラン副操縦士が聞く。
「あ、あ、あの円盤と電動機ですか?」「そうです。」
「我が国には無い装備なので、苦労しましたが・・・」
「たぶん、プロペラを廻すものだと想像して・・・なんとか取り付けました。」と、ウソぶくヤマモト君だ。
その情報は会社へ当然に伝えてある。
今後の日本軍の双発爆撃機は・・・エンジン始動がやりやすくなるだろう。
いちいち、日本陸軍 トヨタ エンジン起動車 が無くてもペラを廻せるのだ。
これは、国益になる情報だったのだ。
内地では・・・日本陸軍 トヨタ エンジン起動車 を発注しなくなったとか・・・
現場では、1台でもトラックは必要なのである。
「そうだ、ガソリンのオクタン価は?」と、アラン君が聞く。
「そうですね、80くらいだったかと。」(現在は90くらいだ、ハイオクで100かな。)
「航空燃料ではないんですか。」と、アランだ。
「いえ、満州ではガソリンは有鉛のオクタン価80しか無いので。」
「・・・・・」「スミスよ、80でも飛べないことはないぞ。」
「エンジン馬力が少ないだけだ。」と、スミスが慰める。
「よし、行くか。」「おう。」
両操縦士は操縦席へ着席してベルトを締める。
「よし、エンジンスタートだ。」
アラン君が上を見る。
頭上計器の機内電圧計を見るのだ。
「29ボルトです。」「よし。」
28ボルト以上でOKなのである。
本来は、2ボルト蓄電池が15個つながってるから30ボルトあるんだが。
鉛蓄電池の内部抵抗もあり28ボルトあればOKなのだ。
「黄色い猿が、ちゃんと組み立てられるか見極めてこい。」
「わかりましたサー。」と、上官へ敬礼して返すスミス操縦士だ。
かれは、退役してダグラス社のテスト操縦士に採用された元軍人だ。
満州国から輸送機の組み立てが終わって・・・テストする操縦士がいないと、連絡があったからだ。
「まさか、組み立てられるとはおもっていなかったが・・・」
「ヤツらの技術は侮れんかもしれん。」「詳細に検分してきてくれよ。」
「わかりました。」「で、コパイは?」(コパイとは副操縦士のことだ。)
「そうだな、アラン君でどうだ。」「わかりました。」
「太平洋航路の日本のアジア丸のチケットを渡しておこう。」
1等室のキップ2枚と渡航許可証2枚を受け取る。
こうして、米国から満州国の大連港までへの渡航となったのだった。
船旅は30日余りを要した。
シスコから横浜を通り大連港までは地球を半周だ。
15ノット程度の客船では、そんなものだ。
客船にはシナ人やら欧州人も多かった。
太平洋航路の客船は日本船が多かったのだ。
1等客室だったので快適な船旅だった。
ダグラスDC-3型機の操縦ライセンスを獲得して・・・DC-3の300時間あまりの飛行経験があるスミス操縦士だ。
基本、一般的白人と同じくスミス、アラン両人は人種差別を当然と思っている国民だ。
しかし、そこは大人である。
内心は差別しても、表には・・・さすがに表さなかったようだ。
なんせ、日本の客船だし・・・
(日本と米国は互いに牽制はしていたが・・・開戦となるほど関係は悪化していない時代だ。)
もう、船旅は御免だ・・・と、思う頃に大連港へ到着したのだ。
港には日本側から数人の出迎えが・・・二人の操縦士を歓迎してくれた。
「おゃあ、お待ちしておりました。」
「機体は完成したのですが、肝心のテスト操縦士が日本には皆無ですので・・・」
「完成した機体が調子よければ、我が社がライセンス生産をしたいとの希望もあります。」と、日本側が持ち上げる。
わざわざ、地球を半周してやってきてくれたのだ、当然のことだ。
「今日は十分に休んでいただいて・・・」「テスト飛行は明日からで・・・」
と、つたない英語で話す日本側だった。
ヤマモト君もサイトウ君も洋書は読めるが・・・おしゃべりは・・・まったく無理だったからである。
それでも、通訳は雇えないから・・・わからないところは筆記で・・・なんとか通じたのだった。
当時の最新の技術書は英文が多かったからである。
当時は英語は読めるが・・・しゃべれない(米国人に慣れて無い。)技師が多かったとか・・・
「ところで、エンジンは始動しましたか?」と、スミス君が聞いた。
「まだ、廻していません。」と、正直に答えるヤマモト技師だ。
それには、訳があったのだ。
普通、エンジン始動はプロペラを廻して駆動するのだが・・・
内地にはエンジン始動用の日本陸軍 トヨタ エンジン起動車 があったのだが・・・
なんせ、特殊な車両で数が少ない。
とても、満州までは・・・廻ってはこなかったのだ。
そして、ダグラスDC-3型には、エンジン始動のマニュアルが想像だけだから・・・
失敗して壊したら・・・後が無いのだ。
「ふむ、形はできてるようだな。」と、スミス操縦士がいう。
「ありがとうございます。」「それなりに苦労しました。」と、サイトウ技師だ。
実際のところ、工員らは初めての米軍機(輸送機)組み立てだ。
かなり、スキルを身に着けたようだ。
日本とは組み立て手順が違うからである。
素行錯誤の積み重ねで、完成したダグラスDC-3型機なのである。
「燃料はあるようだな。」と、操縦席で点検を始めるアラン副操縦士だ。
事前の点検は副操縦士がやり、それをチェックするのが機長のスミス操縦士の役目である。
米国より持参した点検リストを観ながら・・・点検を始める両操縦士である。
それから、3時間・・・チエックが終わったようだ。
日本側を信頼していないスミス君らは・・・何度も、チェックを繰り返したのだ。
ここで、航空機事故では米軍の恥であるからでもある。
黄色い猿に、小バカには絶対にされたくない両人なのである。
「消火器を持ってエンジンの後方に作業員を配置してください。」と、注文だ。(エンジン発火に備えてである。)
「ハイ、あとはどのように?」
「車輪止め外しの人員を数人。」
「ところで、エンジンにフライホイールと始動モーターは取り付けてくれましたか?」と、アラン副操縦士が聞く。
「あ、あ、あの円盤と電動機ですか?」「そうです。」
「我が国には無い装備なので、苦労しましたが・・・」
「たぶん、プロペラを廻すものだと想像して・・・なんとか取り付けました。」と、ウソぶくヤマモト君だ。
その情報は会社へ当然に伝えてある。
今後の日本軍の双発爆撃機は・・・エンジン始動がやりやすくなるだろう。
いちいち、日本陸軍 トヨタ エンジン起動車 が無くてもペラを廻せるのだ。
これは、国益になる情報だったのだ。
内地では・・・日本陸軍 トヨタ エンジン起動車 を発注しなくなったとか・・・
現場では、1台でもトラックは必要なのである。
「そうだ、ガソリンのオクタン価は?」と、アラン君が聞く。
「そうですね、80くらいだったかと。」(現在は90くらいだ、ハイオクで100かな。)
「航空燃料ではないんですか。」と、アランだ。
「いえ、満州ではガソリンは有鉛のオクタン価80しか無いので。」
「・・・・・」「スミスよ、80でも飛べないことはないぞ。」
「エンジン馬力が少ないだけだ。」と、スミスが慰める。
「よし、行くか。」「おう。」
両操縦士は操縦席へ着席してベルトを締める。
「よし、エンジンスタートだ。」
アラン君が上を見る。
頭上計器の機内電圧計を見るのだ。
「29ボルトです。」「よし。」
28ボルト以上でOKなのである。
本来は、2ボルト蓄電池が15個つながってるから30ボルトあるんだが。
鉛蓄電池の内部抵抗もあり28ボルトあればOKなのだ。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
異聞第二次世界大戦 大東亜の華と散れ
みにみ
歴史・時代
1939年に世界大戦が起きなかった世界で
1946年12月、日独伊枢軸国が突如宣戦布告!
ジェット機と進化した電子機器が飛び交う大戦が開幕。
真珠湾奇襲、仏独占領。史実の計画兵器が猛威を振るう中、世界は新たな戦争の局面を迎える。
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。
克全
歴史・時代
西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。
幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。
北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。
清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。
色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。
一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。
印旛沼開拓は成功するのか?
蝦夷開拓は成功するのか?
オロシャとは戦争になるのか?
蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか?
それともオロシャになるのか?
西洋帆船は導入されるのか?
幕府は開国に踏み切れるのか?
アイヌとの関係はどうなるのか?
幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?
If太平洋戦争 日本が懸命な判断をしていたら
みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら?
国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。
真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…そして終戦工作 分水嶺で下された「if」の決断。
破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる