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ふしぎのくに
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暖炉に火が灯った翌日の朝、いじわるそうなおじいさんが少女の眠るベッドを覗き込んでいました。
「まだ生きとるか?」
少女は目をこすり、ぱらぱらと藁を落としながら身を起こしました。
いじわるそうなおじいさんは少女に布切れを手渡します。
「これを足に巻けば外で遊べるじゃろ。」
手渡された布切れを少女は足に巻き、何度か具合を確かめ、満足出来る具合になると
とととと、と外に飛び出して行きました。
夕べまで降っていた雪も止み、綺麗な青空が広がっていました。
いくらか寒さも和らぎ、足に巻いた布切れで踏みしめる雪は、なんとか我慢出来る冷たさでした。
「おはよう、アリス。作業場に行くのかい?」
白いキャンバスに、ちょこんと現れた小さな白い兎が声をかけてきます。
少女は、こくんと頷くと、あっと言う間に作業場まで駆けて行きました。
その作業場のドアを開けると、つんと鼻を突く様な酷い臭いがしました。
「もう、おばあちゃんは此処には居ないよ?」
少女が振り返ると、小さな白い兎が少女のすぐそばまでやって来ていました。
少女が小さな白い兎の頭を撫でると、小さな白い兎は気持ち良さそうに目を細めました。
「もう、間に合わなかったんだ。何もかも。」
少女は小さな白い兎を腕の中に抱き、作業場の暗がりの中へ入って行きました。
ぽたり、ぽたり、何か雫の落ちる音がします。
少女は目を凝らします。
やがて暗闇に少女の目が慣れると、作業台の上におばあちゃんの着ていた服が見えました。
その作業台から、ぽたり、ぽたり、何かが滴り落ちていました。
少女の背では、作業台の上を確認出来ません。
懸命に背伸びをしましたが作業台の上を見る事が出来ませんでした。
やがて、足元を滑らせた少女は、びしゃりと鉄の様な臭いがする水たまりに倒れ、その服を汚してしまいました。
「アリス。此処じゃない何処かに行こう。僕に着いておいで。」
少女の腕の中から飛び出した小さな白い兎は作業場のドアから外に飛び出して行きました。
慌てて少女は小さな白い兎を追いかけようと立ち上がりましたが、つるりと足を取られて、またおしりを床にぶつけてしまいました。
※ ※ ※
「こっちだよ。間に合わなくなる前に、急いでアリス。」
白い雪の中を駆けて行く小さな白い兎を追って、少女も駆けて行きます。
電気の流れる有刺鉄線に囲まれた狭い敷地の中、やがて少女は初めて見る場所に辿り着きました。
小さな白い兎は、お目当の穴を見つけ、立ち止まりました。
「ここから外に出よう。アリス。君ならここから出れる筈だ。」
少女はふるふると首を振ります。
少女はお母さんと約束をしていました。
お母さんが帰って来るまで、いい子にして待っていてね、と約束をしていました。
そのお母さんはいつまで経っても帰って来ませんでした。
ここから外に出たら大人の人達にきっと怒られます。
いい子にしていないとお母さんは帰って来れません。
少女は小さな白い兎の誘いを断りました。
「アリス。お母さんは、もう……」
少女は小さな白い兎を背に、走ってその場を離れました。
ぐう、とおなかが鳴りました。
少女は、ぴゅうぴゅうと隙間風の吹き込む薄暗い寒い建物の中へ入ります。
少女の冷えた体を暖炉の火は、優しく、とても優しく温めてくれました。
「まだ生きとるか?」
少女は目をこすり、ぱらぱらと藁を落としながら身を起こしました。
いじわるそうなおじいさんは少女に布切れを手渡します。
「これを足に巻けば外で遊べるじゃろ。」
手渡された布切れを少女は足に巻き、何度か具合を確かめ、満足出来る具合になると
とととと、と外に飛び出して行きました。
夕べまで降っていた雪も止み、綺麗な青空が広がっていました。
いくらか寒さも和らぎ、足に巻いた布切れで踏みしめる雪は、なんとか我慢出来る冷たさでした。
「おはよう、アリス。作業場に行くのかい?」
白いキャンバスに、ちょこんと現れた小さな白い兎が声をかけてきます。
少女は、こくんと頷くと、あっと言う間に作業場まで駆けて行きました。
その作業場のドアを開けると、つんと鼻を突く様な酷い臭いがしました。
「もう、おばあちゃんは此処には居ないよ?」
少女が振り返ると、小さな白い兎が少女のすぐそばまでやって来ていました。
少女が小さな白い兎の頭を撫でると、小さな白い兎は気持ち良さそうに目を細めました。
「もう、間に合わなかったんだ。何もかも。」
少女は小さな白い兎を腕の中に抱き、作業場の暗がりの中へ入って行きました。
ぽたり、ぽたり、何か雫の落ちる音がします。
少女は目を凝らします。
やがて暗闇に少女の目が慣れると、作業台の上におばあちゃんの着ていた服が見えました。
その作業台から、ぽたり、ぽたり、何かが滴り落ちていました。
少女の背では、作業台の上を確認出来ません。
懸命に背伸びをしましたが作業台の上を見る事が出来ませんでした。
やがて、足元を滑らせた少女は、びしゃりと鉄の様な臭いがする水たまりに倒れ、その服を汚してしまいました。
「アリス。此処じゃない何処かに行こう。僕に着いておいで。」
少女の腕の中から飛び出した小さな白い兎は作業場のドアから外に飛び出して行きました。
慌てて少女は小さな白い兎を追いかけようと立ち上がりましたが、つるりと足を取られて、またおしりを床にぶつけてしまいました。
※ ※ ※
「こっちだよ。間に合わなくなる前に、急いでアリス。」
白い雪の中を駆けて行く小さな白い兎を追って、少女も駆けて行きます。
電気の流れる有刺鉄線に囲まれた狭い敷地の中、やがて少女は初めて見る場所に辿り着きました。
小さな白い兎は、お目当の穴を見つけ、立ち止まりました。
「ここから外に出よう。アリス。君ならここから出れる筈だ。」
少女はふるふると首を振ります。
少女はお母さんと約束をしていました。
お母さんが帰って来るまで、いい子にして待っていてね、と約束をしていました。
そのお母さんはいつまで経っても帰って来ませんでした。
ここから外に出たら大人の人達にきっと怒られます。
いい子にしていないとお母さんは帰って来れません。
少女は小さな白い兎の誘いを断りました。
「アリス。お母さんは、もう……」
少女は小さな白い兎を背に、走ってその場を離れました。
ぐう、とおなかが鳴りました。
少女は、ぴゅうぴゅうと隙間風の吹き込む薄暗い寒い建物の中へ入ります。
少女の冷えた体を暖炉の火は、優しく、とても優しく温めてくれました。
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