初冬

杉山 実

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行方は?

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     92-013
石崎運転手は一瞬青木が探している女性かも知れないと思ったが、年齢が少し若いのと青木と云う名前に反応が無いので関係ない女性だと思った。
仕事を聞いて見ようと尋ねると旅行関係の仕事で、東京で働いていると答えたので益々違うと思う石崎。
その後は沈黙が続いてしまった。
凛子がサングラスを着けて寝て居る様に見えたので、敢えて話をしなかった。
やがて一関インターにタクシーが到着すると、凛子は献花を手に歩いて行った。

後ろ姿を見て石崎は事故の関係者には間違いないのだが、年齢と住んでいる場所が違うな!と俊三への連絡をしなかった。
献花が終わると心なしか寂しそうに車に戻るが、サングラスで凛子の表情は判らない。
涙を流してしばらく放心状態で、缶コーヒーを飲んで戻って来たのだ。
「運転手さんも如何ですか?」コーヒーを差し出す凛子。
「ありがとうございます!何方が事故に?」
「家族の者です」
「ご愁傷様です!」
「海外に居たので今日に成ってしまいました」
「そうでしたか?亡くなられた方が10人程で怪我をされた方も沢山入らっしゃったようですね」
石崎運転手はコーヒー缶を開けて飲み始める。
「最寄りの新幹線の駅までお願いします」
「一関駅が直ぐ近くに在りますよ!」
コーヒーを飲み終わると石崎は車を一関駅に向けて走り出した。
到着すると荷物を降ろす石崎は、旅行のキャリーバックの名札を見た。
ローマ字でMORITAと書かれたので、やはり違う人だったと思った。
凛子は「ありがとうございました」と軽くお辞儀をして、駅構内に入って行った。

俊三が電話をかけて来たのは二日後だった。
「その後何か判りましたか?」
「気を付けて聞いたり見ているのですが、45歳前後の空港関係者で周さんは居ない様ですよ」
「言うのを忘れて居ました!先日別れてから上司の方に会って、彼女離婚された様なのですよ!だから旧姓に成っていますよ!旧姓は森田、森田凛子さんです」
「も、もりた、森田さんですか?」声が裏返る石崎運転手。
「どうされましたか?」
「三日前、その女性なら車に乗せましたよ!でもとても40過ぎには見えなかったな!」
「えっ、タクシーに乗って来たのですか?」
「花巻の龍昇寺に行って、一関インターの献花場に行きました」
「それってあの事故の?」
「そうです!」
「間違い無い!彼女だ!何処に行くとか聞きませんでしたか?」
「東京に今から行くと言われて新幹線の一関駅で降ろしました!でも変ですね」
「何が?」
「私もしかしてと思って、青木さんの事話したのですよ!」
「それで?」
「何も反応は無かったですよ!花巻空港にも探しに行かれたと話したのですが、、、、」
「ありがとう、何か居場所が判るかも知れません!助かりました」
俊三は受話器にお辞儀をしていた。
多分凛子は東京で仕事をするのだろう?須藤課長に確かめれば判る。

俊三は毎日ぶらぶらしていても仕方ないので、公園の清掃のアルバイトを申し込んでいた。
まだまだ身体は元気なので、週に三日の仕事は理想的だった。
採用通知が届いて、来週から市の管理している公園に清掃作業に行く事に成っていた。
東京に行きたいが、直ぐには行けないな!仕事が慣れてからに成ると思った。
仕事は平日の早朝、3時間のみの仕事で朝の空気を吸いながらだから健康的だと思う。

その様子をこっそり見て居たのが順子だった。
自分が出て行って何をして暮らしているのだろう?また女性でも連れ込んで居ないだろうか?離婚をしても気に成る。
何が一番気に成ると言えば、例の凛子を連れ込んでいるのでは?の嫉妬だった。
浮気にして8年は長い、同じ女性一筋だった事が気に成っていた。
自分が出て行ったので?自由だが、あの女と再びは絶対に許せないのだ。
確かに写真で見る限り、綺麗な女性で若いと思っていた。
でも自分が知っている事は内緒だったので、一度も口に出した事は無かった。
家庭内で隙間風が吹くのが嫌だった順子。
俊三が凛子と別れても一切口に出さず、翔子の結婚まで我慢する執念深さだ。

その順子が俊三の公園清掃の姿を見て、安心して帰って行ったのだ。
何度か清掃作業に行くと知り合いも出来て、結構楽しく仕事が出来た。

俊三が東京に行きたいと思ったのは、年が明けた一月に成ってからだった。
仕事も慣れて融通が利く様に成ったので、一週間休んで東京に向かう事にした。

須藤課長から俊三の話は聞いていた凛子だったが、話さないで欲しいと頼まれて連絡をして居ない。
一月の下旬、俊三はあの羽田空港の時を思い出していた。
こんな寒い日だった!欠航した飛行場で凛子に会った。
そのままホテルまで行くとは考えても居なかったあの日。
風俗のバイトをしていた事実に驚きながら燃えたあの時。
そんな事を考えながら新幹線は東京に向かう。
何を目的で行くのか?自分でも判らなかった。
花巻に行った時は、子供二人とご主人を同時に亡くされて哀しみに、、、、、
慰める目的が有ったのだが、今回は何も目的は無かった。
ただ凛子の元気な顔が見たかっただけ?
妻に去られ娘は結婚、独りぼっちの寂しさが、、、、、、、
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