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凛子の気持ち
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92-016
新花巻を午後1時過ぎに乗っても、俊三が自宅に到着したのは夜の10時に成っていた。
周りの住宅には明かりが灯り、家族の匂いがするが俊三の家は暗く寒い夜風が頬に刺さる気分だ。
花巻に比べると暖かいのだが、自分の家の方が冷たく感じた。
自宅に近付いた時、人影が急に横の路地に移動した。
空き巣か?盗む物は無いぞ!そう口の中で呟きながら人影が逃げた方向に向かう。
「あっ、女だ!」小さく呟いたが、空き地に止めて有ったタクシーに乗って走り去ってしまった。
暗くて見えなかったが、女性に間違い無かった。
コートを着ていたが、ヒールを履いていた様に思えた。
他所の家の客か?自分の家に深夜に来る女性は居ないと思う俊三。
気には成ったが、それ以上の詮索はしなかった。
二泊三日留守にして居ると変な人も来るのか?
寒いので風呂に入らないと眠れないと思う。
昔なら、帰ると風呂も食事も準備されていたなあ!自分で今から湯を貯めて、、、、ため息を付きながら湯を浴槽に入れる。
電車で弁当を食べたので、食事は作る必要は無いが寒い夜のひとり暮らしは堪える。
ひと月先が待ち遠しい俊三。
10年間会ってないが、石崎運転手の話ではとても40代には見えない!若いと言った言葉に変な期待を持つ。
会えたから何をどうしたいのか?急に自分に聞くが答えは無い。
一人暮らしで寂しいのがひとつ、懐かしいのがふたつ、そして凛子が余りにも不幸だったからだ。
10年の月日の中で自宅の火災で両親は怪我、弟は焼死、離婚、そして子供と元亭主の事故死。
今度は母の死と連続で不幸に巻き込まれている事実。
私の事を既に忘れた?そんな事は無いだろう?お金だけの繋がりでは無かったと今でも信じている俊三。
その頃、凛子は葬儀を済ませて遺骨を父直之の元に預けて東京に戻っていた。
直之は施設の自分の部屋に妻の遺骨を置いて、35日まで自分が供養すると言った。
この約5年間一度も話しは出来なかったが、寺に納骨する迄の時間一緒に過ごしたいと話したのだ。
「智之の所に行ったので、二人仲良く話をして居るよ!」父の直之は漸く肩の荷を下ろした心境だと語った。
「私があの人と結婚したのが間違いだったわ!優しい人だから大丈夫だと思ったのだけれどね!」
「凛子の責任では無いよ」
「でもちーちゃんにいつも辛く、、、、、、、」
「子供の事と成れば父親としては、あの様に成るのも判る」
「ちーちゃんは障害者なのよ!」
「もう終わった事だ!忘れなさい!」
直之は子供達が台湾で元気に暮らして居ると思っているのだった。
凛子はとても交通事故の話は出来なかった。
「昔付き合って居た年上の人覚えて居る?」
「周君と結婚を決める少し前だったな!お前が凄く年上の男性と付き合って居ると話したな!私はその時、お前が迷っていると思ったけれど、妻帯者だから周君に決めたと思ったよ!」
「覚えて居たの?あの時の話?」
「お前が25,6の時、結婚したい男性が居て、もう直ぐ婚約すると嬉しそうに話したが破談に成ったと悲しそうに話したな!原因は智之だったのだろう?信子に内緒だと言って話しただろう?」
「えっ、知っていたの?」
「信子が泣きながら私に話したよ!でも何故今頃そんな昔の話をするのだ!」
「その付き合って居た人、青木さんって云うのだけれど、昨日も龍昇寺に私の事探しに来たのよ!」
「えっ、何故今頃?」
「青木さん奥さんと別れた様なのよ」
「今頃?奥さんと別れたからお前と?馬鹿な男だな!随分年寄りだろう?」
「65歳だと思うわ!私の離婚は空港の人に聞いたらしい!寺に来たのはお母さんが亡くなったから来た様よ!」
「えっ、何故信子が亡くなった事を知っているのだ?」
「空港で聞いた様なのよ!」
「それで花巻の寺まで来たのか?変な男だな!お前に未練を持って居るのか?」
「それも考えられるわ!でも私は興味無いわよ!」
「もう高齢者じゃないか、相手にしない方が良いぞ!暇だから変に付き纏う!凛子はまだ若くて奇麗だ!再婚も充分出来る」
ここで元旦那と子供が事故で死んだ事を言ったら、父はどう云うのだろう?青木さんは事故で亡くなった周と子供の事で、私が悲しんでいるのが心配で来たとは話せない。
今、凛子が全ての事を話せる人が居ないと思った。
父には絶対に話せない!ショックで倒れる事も有るからだ。
凛子には青木が寺まで来た理由が判っていた。
自分が余りにも不幸の連続だから、慰める為に態々花巻まで二度も来たと思う。
そんな優しい男だと知っている。
須藤課長が言う様に良い人には違いない。
でも今彼に涙を見せたら、自分は一気に弱く成ってしまうと思っている。
あの時も青木さんに、周さんと付き合って居る事を言われて何も言わずに新幹線に飛び乗った。
「奥さんと別れて私と結婚して頂けますか?もしもそれが可能なら、私は周とは別れます!今すぐでなくても良いのです。一年後でも二年後でも私と再婚して貰えるなら、私は待ちます!」胸の中ではその様な台詞が淡々と綴られていた凛子。
だがその言葉は凛子の口から出る事は無かった。
他所の家庭を壊してまで自分の思いを遂げる事は出来なかった。
新幹線に飛び乗ったのは別れる為の決断だったのだ。
新花巻を午後1時過ぎに乗っても、俊三が自宅に到着したのは夜の10時に成っていた。
周りの住宅には明かりが灯り、家族の匂いがするが俊三の家は暗く寒い夜風が頬に刺さる気分だ。
花巻に比べると暖かいのだが、自分の家の方が冷たく感じた。
自宅に近付いた時、人影が急に横の路地に移動した。
空き巣か?盗む物は無いぞ!そう口の中で呟きながら人影が逃げた方向に向かう。
「あっ、女だ!」小さく呟いたが、空き地に止めて有ったタクシーに乗って走り去ってしまった。
暗くて見えなかったが、女性に間違い無かった。
コートを着ていたが、ヒールを履いていた様に思えた。
他所の家の客か?自分の家に深夜に来る女性は居ないと思う俊三。
気には成ったが、それ以上の詮索はしなかった。
二泊三日留守にして居ると変な人も来るのか?
寒いので風呂に入らないと眠れないと思う。
昔なら、帰ると風呂も食事も準備されていたなあ!自分で今から湯を貯めて、、、、ため息を付きながら湯を浴槽に入れる。
電車で弁当を食べたので、食事は作る必要は無いが寒い夜のひとり暮らしは堪える。
ひと月先が待ち遠しい俊三。
10年間会ってないが、石崎運転手の話ではとても40代には見えない!若いと言った言葉に変な期待を持つ。
会えたから何をどうしたいのか?急に自分に聞くが答えは無い。
一人暮らしで寂しいのがひとつ、懐かしいのがふたつ、そして凛子が余りにも不幸だったからだ。
10年の月日の中で自宅の火災で両親は怪我、弟は焼死、離婚、そして子供と元亭主の事故死。
今度は母の死と連続で不幸に巻き込まれている事実。
私の事を既に忘れた?そんな事は無いだろう?お金だけの繋がりでは無かったと今でも信じている俊三。
その頃、凛子は葬儀を済ませて遺骨を父直之の元に預けて東京に戻っていた。
直之は施設の自分の部屋に妻の遺骨を置いて、35日まで自分が供養すると言った。
この約5年間一度も話しは出来なかったが、寺に納骨する迄の時間一緒に過ごしたいと話したのだ。
「智之の所に行ったので、二人仲良く話をして居るよ!」父の直之は漸く肩の荷を下ろした心境だと語った。
「私があの人と結婚したのが間違いだったわ!優しい人だから大丈夫だと思ったのだけれどね!」
「凛子の責任では無いよ」
「でもちーちゃんにいつも辛く、、、、、、、」
「子供の事と成れば父親としては、あの様に成るのも判る」
「ちーちゃんは障害者なのよ!」
「もう終わった事だ!忘れなさい!」
直之は子供達が台湾で元気に暮らして居ると思っているのだった。
凛子はとても交通事故の話は出来なかった。
「昔付き合って居た年上の人覚えて居る?」
「周君と結婚を決める少し前だったな!お前が凄く年上の男性と付き合って居ると話したな!私はその時、お前が迷っていると思ったけれど、妻帯者だから周君に決めたと思ったよ!」
「覚えて居たの?あの時の話?」
「お前が25,6の時、結婚したい男性が居て、もう直ぐ婚約すると嬉しそうに話したが破談に成ったと悲しそうに話したな!原因は智之だったのだろう?信子に内緒だと言って話しただろう?」
「えっ、知っていたの?」
「信子が泣きながら私に話したよ!でも何故今頃そんな昔の話をするのだ!」
「その付き合って居た人、青木さんって云うのだけれど、昨日も龍昇寺に私の事探しに来たのよ!」
「えっ、何故今頃?」
「青木さん奥さんと別れた様なのよ」
「今頃?奥さんと別れたからお前と?馬鹿な男だな!随分年寄りだろう?」
「65歳だと思うわ!私の離婚は空港の人に聞いたらしい!寺に来たのはお母さんが亡くなったから来た様よ!」
「えっ、何故信子が亡くなった事を知っているのだ?」
「空港で聞いた様なのよ!」
「それで花巻の寺まで来たのか?変な男だな!お前に未練を持って居るのか?」
「それも考えられるわ!でも私は興味無いわよ!」
「もう高齢者じゃないか、相手にしない方が良いぞ!暇だから変に付き纏う!凛子はまだ若くて奇麗だ!再婚も充分出来る」
ここで元旦那と子供が事故で死んだ事を言ったら、父はどう云うのだろう?青木さんは事故で亡くなった周と子供の事で、私が悲しんでいるのが心配で来たとは話せない。
今、凛子が全ての事を話せる人が居ないと思った。
父には絶対に話せない!ショックで倒れる事も有るからだ。
凛子には青木が寺まで来た理由が判っていた。
自分が余りにも不幸の連続だから、慰める為に態々花巻まで二度も来たと思う。
そんな優しい男だと知っている。
須藤課長が言う様に良い人には違いない。
でも今彼に涙を見せたら、自分は一気に弱く成ってしまうと思っている。
あの時も青木さんに、周さんと付き合って居る事を言われて何も言わずに新幹線に飛び乗った。
「奥さんと別れて私と結婚して頂けますか?もしもそれが可能なら、私は周とは別れます!今すぐでなくても良いのです。一年後でも二年後でも私と再婚して貰えるなら、私は待ちます!」胸の中ではその様な台詞が淡々と綴られていた凛子。
だがその言葉は凛子の口から出る事は無かった。
他所の家庭を壊してまで自分の思いを遂げる事は出来なかった。
新幹線に飛び乗ったのは別れる為の決断だったのだ。
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