空蝉

杉山 実

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忘れられない

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   84-05
ネットの掲載には年齢29歳、身長163センチ、体重48キロから53キロ、趣味読書、ピアノ、音楽鑑賞、両親と同居、弟は大阪で別居に成っている。
料理はまずまずで、相手の住まいの理想は兵庫県南西部から大阪市近辺と書いて有る。
全て浅子の希望で、麻結は一行も書いていないのだ。
それでも日本全国から応募が殺到して、浅子は条件にそぐわない男性は即刻断る作業に入る。

そんな麻結には高校生の時からの親友、木田美咲と竹原莉子が居る。
既に竹原は結婚して一児の母だが、三人は月に一度必ず会ってお互いの現在の心境を話して居た。
勿論麻結の彼氏との恋愛も知っているし、交通事故で亡くなった事実も共有していた。
丁度今回の集まりは麻結が結婚相談所に登録して、大々的に応募が来ている最中だった。
「今、大変なのよ!お母さんが結婚相談所に私の事掲載したのよ!」
「えー、麻結は結婚しないって言っていたのに?」
「家族全員が結婚させる運動を始めた様なのよ!応募が凄い数来て、嬉しさより困っているわ!」
「普通の写真を載せたの?大学生の時トラブルで困ったでしょう?」
「母が相談所の人に、三人で去年旅行に行った時の写真を渡したのよ!」
「莉子の独身最後の旅行の時ね!あの写真は写りが良かったわね!」
「麻結まるで女優さんの様に写っていたわね!」
「その写真を掲載しちゃったのよ!」
「役所勤めの写真にすれば応募は少なかったのにね!」
「麻結は美人過ぎるのよ!私達三人で旅行に行った時でも声がかかるのはいつも麻結だったわ!まあそのお陰で今の旦那と巡り合ったのだけれどね!」莉子が微笑みながら言う。
「でも麻結結婚する気有るの?」
「全然ないわ!美咲は話有るの?」
「同じよ!両親が最近うるさくて、先日見合いしたのよ!」
「えーーー」
「ほんとにーー」
「それでどうだったのよ!」莉子が尋ねる。
「お見合いってさー何を話したら良いのか判らないでしょう?私ギャンブルする人は駄目って言ったのよ!すると断られちゃった!」
「相手の人好きだったのね!」
「競馬が好きだったのよ!顔はまあまあ好みだったのだけれどね!」
「見合いって楽しいの?」麻結が尋ねた。
「見合いするの?」
「全然、そんな気は無いのよ!でもお爺さんもお婆さんも参戦して来ると、一度も見合いしないって言えなく成りそうなのよ!」
「麻結はお爺さん子だからね!」
「お婆さんも好きだよ!」
「見合いも役所スタイルで、、、、無理よね!写真出ているからね!」
「結婚は楽しいわよ!」莉子が嬉しそうに言う。
「恋愛結婚だからよ!見合いはそうは成らないわ!」麻結は伸一との楽しい時間を懐かしそうに言った。
「また思い出してしまったのね!ごめんなさい!」莉子はしまった!と思っていた。
自分も今の旦那さんが急に亡くなってしまったら、そう思うと耐えられない思いに成った。
「もう10年以上も前の話よ!私も見合いしてみようかな?」
「それが良いわよ!」
口ではその様に言った麻結だが、身体はその様には動かない。

翌日、浅子が「麻結!5人選んだわ!気に要る男性が居たら一度お見合いしてよ!仲人さんにも悪いわ!」
「一度位サイトを見て見なさい!」
「お婆さんも麻結の花嫁姿が見たいわ!そんなに長く生きられないのよ!」祖母のその言葉は麻結の気持ちを大きく締め付けた。
誰でも死ぬ!でも私の彼は大学一年生で亡くなった。
「お婆ちゃん!判ったわ!一度見てみるわ」
「ありがとうね!」
「自分のパソコンで見るから、HPのアドレス教えて!」
浅子は麻結がその気に成ってくれたと喜んで、アドレスと自分が選んだ男性の番号をメモにして渡す準備を始めた。
「本当に沢山の男性が麻結と見合いしたいって申し込んで居るよ!驚いたわ!」祖母が嬉しそうに言った。
麻結は祖母が嬉しそうに話す姿に胸が暑く成った。

しかし、夜自分のパソコンで浅子の書いてくれた男性を見ながら、これで良いのかしら?自分の好きな人は伸一唯一人だ。
それは10年以上経過した今も全く変わらないと思った。
どうしても見合いをするなら、自分で選んだ男性と見合いをするかな?申し込まれた男性の一人一人を見ても心に突き刺さる男性はひとりも居なかった。
確かに母が選んだ男性は年収、顔、住まい、仕事は申し分ないのだ。
高学歴で有名国立大学卒業、医者、弁護士の卵が多いのだ。
流石に会社名は記載不可だが、有名上場企業と書いて有る。
麻結はそんな経歴に全く惹かれる事が無かった。
他にどの様な人が登録しているのだろう?男性会員で兵庫県、大阪府を中心に見始めた。
スクロールして見ると、このサイトに登録してから随分時間が経過している男性も居る。
やがてサイトを見ながら眠ってしまった麻結。

朝方に目が覚めて、麻結は寝ぼけた眼差しでパソコンの画面が点灯したのを見た。
男性が芝生に座って自分を見て微笑んでいたのだ。
「これは?誰?」急に起き上がってよく見るとサイトの中の男性で、このサイトに二年以上前から登録している古株の人だった。
見ながら眠ってしまったのか?そう思いながら電源を切って再び眠るが、何故か先程の笑顔が出て来て眠れなく成った。
「変なの?」そう言いながら眠ろうとするが、益々眠れなくなる麻結だった。
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