空蝉

杉山 実

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ホテルロビーで

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  84-010
自己紹介が終わると倉田は「一時間でお別れして下さいね!ルールですからよろしくお願いします」そう言うと席を立って、ホテルから出て行った。
「いつもこの様な感じですか?」
「落合さんは初めての見合いですか?」
「はい!驚きました!驚きと云えば私の写真と今の姿に驚かれたでしょう?」
「はい!でもある意味安心しました!あの写真の様な綺麗な方だったら、僕は直ぐに断ろうと決めていたのですよ!」
「えっ!」武史の言葉に驚く麻結。
「だって僕の様な障害者とあの写真の様な美人は釣り合いませんでしょう?」
「は、はい」武史の言葉に驚く麻結。
「別人の写真を載せても違反じゃ無いのですね!」
「えー、自分の写真、、、、、、、」口籠る。
「言いませんよ!今の落合さんなら親しめる様な気がします!」
麻結は梅宮が話した事と真逆の事を言い始めた。
「綺麗な女性は嫌いですか?」
「勿論好きですよ!でもこの身体ですよ!誰も相手にしてくれませんよ!僕で良いと言って貰える人ならそれで充分です!」
「、、、、、」
「僕、落合さんに失礼な事を言いましたね!すみません!」
「何が?」
「落合さんが綺麗じゃ無いと言ってしまいました!すみません!」
「お仕事は事務職ですよね!」
「はい!小さな会社で受発注の仕事をしています!」
「いつから病気に?」
「中学三年生の時に少し痛みが始まりました!最初は神経痛だと思っていたし、周りの人もその様に言いました!でも難病だったのです!それが判ったのは大学生に成ってからでした!」
「病名が判る迄にそんなに時間が?」
「はい、判った時には既に手遅れでしたね!」
「そうだったのですね!」
「暗い話に成りましたね!一度しか会わない方に色々話しても困りますよね!」
「そんな事は有りませんよ!」
麻結は武史の話を聞きたかった。
今の自分と気持ちが似ている様な気がしていた。
愛する伸一を突然の事故で亡くして、その後誰も好きに成れない。
恋愛感情が全く湧く事が無かったのだ。
今回も家族が色々勧めるので仕方なく見合いを決めた。
何故か判らないが、目の前の武史なら見合いをしても良いと思った。
でも結婚の事は全く考えて居ない自分がそこに居る事も知っていた。
普通の人と見合いをしても多分何も思わないので、思い切って全く別の武史を選んだのだ。
多分結婚には至らない事を知って居ての見合いだった。
家族も両親も確実に大反対で、自然消滅してしまうと思っている。
麻結は自分から目の前の武史に断るのは辞めようと考えている。
自分から障害者だと知っていて申し込んで、断るのは本当に気の毒だと思っている。
今の姿の自分なら断ると思っていたのに、武史は今の自分の姿を見て安心したと言った。
その言葉に自分が考えていた事を恥じる麻結だった。
「妹さんは一緒に住まれて無いのですね!」
「はい!睦は僕の姿を見て看護師に成っているのですよ!今は大阪の病院に勤めて居ます!」
「看護師さんですか?」その言葉に麻結は再び自分のした事を恥じていた。
「毎日僕がもがき苦しむ姿を見て居ましたからね!お兄ちゃんの様な人を助けてあげるのだと、高校を卒業と同時に看護師の道に行きました!月に二回位は帰って来ますがね!帰ると必ず僕にもう痛みは少なく成った?と尋ねてくれます」
「、、、、、、、、」自分の事を恥じて言葉が出ない麻結。
「高校から大学生の時は地獄でした!100メートルが歩けないのです!だから学校の勉強も出来ません!大学も自宅から通える大学に入学しましたが、出席する日が少なくてぎりぎり卒業でしたね!」
「、、、、、、、、、」麻結は言葉を失っていた。
「すみません!見合いの場で愚痴の様な話で申し訳有りません!落合さんは勉強が出来るのでしょう?」
「或る日までは頑張って居ましたが、急に諦めてしまいました!」
「そ、それって恋人と同じ学校に行く為に頑張ったとかですか?」
麻結は急に自分の事を言い当てられて、呆然としてしまった。
その時、目の前に伸一が現われて手を振る姿がロビーの向うに見えた気がしていた。
「どうされたのですか?お知り合いの方でも?」武史も麻結の視線の向うを見た。
「お手洗いに!」そう言って立ち上がると、麻結は急いでトイレの方に急いだ。
既に目が涙で一杯に成って前が良く見えない。

トイレの鏡を見ながら、涙を拭きとる麻結は怖く成った。
伸一の事を言い当てられた気分に成って、ロビーの向うに伸一の姿を見た様に思ったからだ。

武史は急にトイレに行った麻結に驚きながら帰りを待った。
随分長い時間が経過して、麻結がようやく戻って来た。
「ごめんなさい!初めての見合いで緊張したのかしら、、、、、」
「僕も初めての時は緊張しました!この格好だから相手の方にどの様に思われているのかとね!殆ど断られますから、答えは決まっていますよね!一生に一度の結婚だから、こんな姿の夫は持ちたくないですよね!」作り笑顔で話す武史。
「そ、そんな事有りませんよ!私は姿形で決めません!」
「この結婚相談所のシステムでは、今回は約一時間以内でお別れして、もう一度会うか決めるのです!次も一時間程度しか会えないのですよ!三回目は半日程度は良いのですが、それで今後結婚を前提に付き合うか決めなければ成らないのですよ!」
「その後は断れないのですか?」
「断れると思いますよ!何が起こるか判らないですからね!」
「私の様に写真と実物が異なる?」
「今回は良かったと思っています!あの写真の様な美しい方なら僕は話が出来ませんよ!」
そう言って笑った。
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