空蝉

杉山 実

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    84-030
いつもの恰好で職場の役所に行くと昼食時に井上真知子が「丸山さんが三人で食事がしたいと、落合さんを誘って欲しいと言われまして、お願い出来ませんか?」
「えっ、二人のデートの邪魔は出来ないわ!」
「まだ、一度も食事に二人で行った事がなくて、三人なら行っても良いと、、、、、、」
真知子は言い難そうに誘った。
丸山も来週から三人目の参戦が有るので、何とかそれまでに近づきたい。
真知子を使って近づく作戦だった。
麻結は困惑して「私が行くのは?良くないのでは?」
「じゃあ、最初だけで、途中で私が携帯に電話をしますので急用で帰って下さい!お願いいします!」
真知子は苦肉の策を麻結に話して、協力して欲しいと拝む様に言った。
麻結は根負けして平日の夜か、土曜日なら大丈夫だと答えた。
真知子は大喜びで食事の後軽やかに職場に帰って行った。

もう一人の男、麻生祐樹もいよいよ来週から参戦の準備に入った。
大手の証券会社に勤めて、家族は大阪の南に5階建てのマンションを所有している。
三人の中では一番二枚目だが、年齢は一番上の33歳だ。
付き合いの有る人にも、一癖も二癖も有る人物も居た。
その男達と自分が落合麻結と結婚したいので、協力して欲しいと相談していた。
梅宮に貰った写真を見せると「凄い!別嬪さんだ!祐樹が欲しがる筈だ!」と茶化した。
「言っとくが遊びの相手では無いのだぞ!ホテルに連れ込んで何て考えでは無いのだぞ!彼女の親父は銀行の支店長だ!」
「良い家のお嬢様って事ですね!祐樹の家とは合う様だな!」
「上手く結婚まで運べば100万、手付にひとり10万で頼む!経費は別途払う」
「具体的には何をすれば?」
「彼女のガードだ!ライバルが最低でも3人いるので、強行手段に出る奴も居るからな!」
仕事を承知した須永工と三島光男は喜んで金を受け取った。

麻結を取り囲む色々な人物が思い思いにアプローチを賭けて来る。
両親も今の見合い相手を不服として、直接間接に次々と策を講じている。
藪内卓也に大きな期待を持っている。
その為の策も父親の智光は考えているのだ。

週の半ばの夜、その卓也が父からの預かり物を持ってやって来た。
既に時間は7時を過ぎていて、食事が終わった頃だった。
智光は卓也を招き入れると、コーヒーを飲んで帰る様に勧めた。
勿論、麻結を卓也に見せる為で、卓也が気に要れば作戦実行へと向かう事に決まっていた。
コーヒーを作ると浅子が「これを応接に持って行って頂戴!」と言って麻結に委ねる。
「何故?私が?」文句を言うが「後片付けが有るから、手伝いなさい!」と押し付けた。
「何方がいらしてるの?」
「お父さんの同僚で姫路支店の支店長さんの息子さんが、届け物を預かって来られた様だわ!」
「姫路から来られたら、帰りが遅く成るのでは?」
「コーヒー位出さないと悪いわ!早く持って行って頂戴!」
麻結は少し変だと思いながら応接室に入った。
「娘の麻結です!こちら薮内支店長のご子息の卓也さんだ!」
コーヒーをテーブルに置きながら、軽く会釈をした麻結。
「美しいお嬢様ですね!」卓也は麻結の長い黒髪を見て思わず口に出た。
「いやいや、もう直ぐ30なのに嫁にも行かずに親と暮らしています!」
コーヒーを置くと、直ぐに出て行こうとする麻結。
「卓也君!結婚は?」
「まだ独身なのです!良い方に巡り合いませんでした!」
「それは残念だったな!探しているのか?」
「は、はい!」
雲行きが怪しく成って、直ぐに応接を出る麻結。
もしかして、私を見に来たのかな?仕組まれたのね?と悟った。
大阪の変な男の次は、同僚の息子か?何年か前に聞いた記憶が蘇る。
「私、伸一さんの事が忘れられないから、結婚は考えられません!」と強く断った記憶が、、、、
24歳位の時だったと思い出していた。
その時は相手の顔も見ていない麻結だったが、同僚の息子さんと聞いた事は思い出した。

しばらくして卓也が帰ると「あの人私を見に来たのでしょう?」
「そうだ!あの薮内の息子さんなら、結婚に大賛成だがな!」
「そうですよ!今付き合って居る人は駄目よ!」浅子も一緒に言う。
「障害者の方だから?偏見よ!差別だわ!」
「あの身体で子供が出来るのか?」
「そうですよ!普通の身体でも、、、、、、、」浅子が言いながら誤魔化した。
「判らないけれど、大丈夫だと思うわ!」
「服を着ているから判らないが、本当は能力無いかも知れないぞ!」
「本当お父さん達は差別の塊ね!」怒る麻結。
「お前の事を考えて話して居るのよ!お願いですから考え直して!」
(反対すると反発して結婚するって言いだしますよ!気を付けて下さいね)梅宮の言葉が頭を過った浅子。
「そんなに云うなら、試して見るわ!」麻結が言った。
「試すって何を?」
「勿論SEXよ!」
「えーーーー」
「何を言い出すのだ!麻結!軽率な行動は駄目だぞ!」
二人は麻結の言葉に驚いて狼狽える。
してやったりの麻結は二人を階下に、自分の部屋に駆け上がった。

「やはり、例の方法を使うしか道は無い様だな!」
「何ですか?例の方法って?」
「今日来た卓也君が麻結の事をどの様に思ったか?それが一番大事だ!」
「そりゃ、申し込むのに決まっているわ!」自信の浅子。
(家は反対の嵐よ!今も変な男が家に来たわ?)
(それって見合い候補かな?)
(何故判るの?)
武史にlineで話をする麻結、苦しい板挟み状態を露呈していた。

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