空蝉

杉山 実

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湯布院へ

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   84-068
「これで思い残す事は有りません!お父さん!お母さん!伸一さんをこれからもよろしくお願いいたします」
「遠路ありがとうございました!」
「これからは自分の為に生きて下さいね!伸一もそれを望んでいる筈です!」
「お元気で、、、、、、、」
麻結に二人は握手を求めて「私達は、少し掃除をして帰ります!」
武史がスマホで撮影をして、深々とお辞儀をすると坂道を下って行った。

「綺麗な娘さんに成られたな!でもあの障害者の男性と何故だろう?確かお父さんは銀行員だったと思うが?伸一と付き合って居ただけだから再婚でもないのにな!」
「親御さんは反対しているのでしょうね!だから二人でここに来たのでしょうね」
「見合いでご両親が勧めるとは思えないけれどな!」
「麻結さんは多分彼の中に伸一を見たのよ!だから好きに成ったのよ!」
「顔も姿も違うのに、伸一が、、、、、、、」陽一は妻の話が判る様な気がした。
「そうだと思うわ、そして確かめに墓参りに来た様に思うわ!」
「確かめに?」
「自分の気持ちをね!」
「それでどうだったのだ?」
「先程、墓前で呟いていたでしょう?」
「成る程!」二人は納得した様に麻結達の後ろ姿を見て「しあわせにな~」聞こえない二人に言う陽一。

タクシーに戻ると「ゆふ3号に間に合いますか?」と尋ねた。
「大丈夫だよ!これから湯布院ですか?旅館には3時過ぎに着きますよ!」
タクシーは伸一の家から日田駅に向かい始めた。
振り返って「さようなら、伸一!」と口走った麻結。
「懐かしかったのだね!」武史が言うと「これでお別れが出来たわ!ありがとう!」そう言って武史の腕を握った。

その頃麻結の自宅では智光が武史の自宅に電話をして、明日午後お邪魔したいと話して居た。
武男と久代は「何か良い話かも知れないわ!」そう言って喜ぶ。
睦が昨日自宅に「お兄ちゃん!麻結さんと旅行に行ったのかも知れないわ!」と電話をかけていた。
「私達には友人に誘われたから、九州旅行に行くと聞いたわ!その友人が落合さんなの?」
「多分!」
その様な会話の後の電話で二人は大いに期待を持った。
本来は男性の家から女性の家に伝えるのだが、自分から言える立場でない事は武男も心得ていた。
武史から二人の結婚についての話は皆無だった。

電車に乗る前にうどんを食べた二人。
夜は旅館で食事が待って居るので、簡単に済ませて乗り込む。
一時間程で湯布院の駅に到着した二人は、旅館の迎えの車を探す。
麻結は今夜の事を考えて全室離れで、客室露天風呂の宿を探していた。
声が聞こえない事、武史が恥をかかない様に大き目の露天風呂が在る宿。
母の浅子が云う様にSEXが出来ない可能性も有るので、気を使っての選択だった。
「あっ、あそこに止まっているわ!」指を差す。
車には全棟露天風呂付離れ客室、月光庵と書いて有る。
車に近づくと「落合様でございますか?」係の男性が二人に尋ねた。
「はい!今夜泊めて頂く落合です!」
係の男は麻結の美しさに驚いたのと、連れの杖を付いた小柄な男性にも驚いていた。
「お二人でございますね!」念を押す様に言うと、ワンボックスのスライドドアを開けた。
二人の荷物を受け取ると、後ろに積み込む。
車が動き始めると「当旅館は中心部から少し離れて、木々の中に広大な敷地を有し、20棟の客室が放射線状に立地されて居ます」
「広いのですね!」
中心にお食事処、大浴場、フロントが御座いますので、そんなに歩く事は無いと思われます!」
武史の身体を見てその様に説明して安心させる。

しばらくして到着して車を降りると「空気が美味しいわ!」大きな深呼吸をする麻結。
麻結の深呼吸には、これからの事と伸一との別れが込められていた。
武史も同じく深呼吸をするが、背中が伸びないのでぎこちない。
「フロントでチェックインをお願いします!」
住所とか名前を書いていると「お二人のご関係は?」フロントの一人が尋ねた。
「婚約者です!」麻結は堂々と答える。
「婚前旅行でございますね!」笑顔で尋ねて、仲居が荷物をワゴンに載せて「ご案内いたします!この先右側がお食事処でございます!何時にされますか?」
「何時からですか?」
「はい!5時半が一番早い食事時間で、今なら空いています!」
「その時間にしますか?武史さん!」笑顔で尋ねる麻結。
「それでは5時半で準備させて頂きます!それにしてもお美しいお嬢様ですね!」武史に言う仲居。
笑顔で何も言わない武史は、これからどの様に成るのだろう?ソープで教えて貰った様にすれば良いのだろうか?と考えている。
しばらく歩くと一戸建ての部屋に到着して、仲居が荷物を運び込む。
「部屋の説明をさせて頂きます!今後用事が御座いましたら内線でご連絡下さい!連絡の無い場合私共は一切参りませんので、ごゆっくりお過ごし下さい!」
「一応ベッドルームでございますが、布団も準備していますので連絡頂ければ準備致します!」
「それなら布団一人分お願いします!」間髪を入れずに武史が言うので驚く麻結。
母が言っていた通りなの?不安が滲む。
「トイレが向こうの突き当りで、露天風呂がこの向こうでございます!」障子を左右に開けると、目の前に大きな露天風呂が湯けむりを出して、温泉特有の匂いが鼻に、、、、
「大きな露天風呂ですね!」
「本当だな!泳げる程広いですね!」
二人は露天風呂の大きさに感動していた。
布団を敷くと「それでは5時半にお待ちしています!もし大浴場に行かれるなら、洗面セットをご持参下さい!バスタオルは向こうにございます」
仲居が部屋を出て行くと、一瞬会話が止まって沈黙の時間が流れた二人。
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