大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

本気と治癒

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ナナキの『本気』というものは、義手義足の性能を限界まで引き出すことだ。
え?何?それ別にわざわざ言うことでも無くないかって?
まぁ、そうなんだけど、普通にマズイ点が二つ。
一つ、義手義足の限界をすり潰すように使うので、時間にして約五分、それが終わると義手義足がボロボロになって、ナナキは身動きすら取れなくなる点。
そしてもう一つが、そんな義手義足のスペックに、生身のナナキの肉体が耐えきれない点。
実際、今のナナキは、魔族とタイマンを張っているぐらい。それほどのパワーアップだ。
あれが自分はまだナナキに敵わないと思う要因の一つだ。
今のうちに出来るだけ多くの仲間をこの場から離れさせよう。
自分が一度に運べる人数じゃないから、近くにいる人…近接班から少し離れさせる。
それが終わると遠距離班。
先生とアーネの息を確認すると…よかった、まだ息がある!
とりあえず、《不動》の時のように先生とアーネの斬られた部分を簡単に縫っておく。
「先生、アーネ、おい、起きてくれ」
そろそろ時間がない…!
「つつ…!」
よかった!アーネが目を覚ました!
「あれ?私…?痛っ!」
「悪いけど話は後だ。みんなの傷を治しておいてくれ!」
「……待ってください。貴女の肩の傷をを先に治します」
自分の左肩、髪で縛ってあるが、それでも血がまだ流れている。
かなり酷い傷だが、多分防具が無けりゃ、骨までいってるか、最悪の場合、殆ど切断ぐらいまで行ってたかもしれない。
「自分は回復魔法が少し効きにくいから後からでいい!時間がない…ん…だ?」
自分のそんなセリフを無視して、回復魔法を使うアーネ。
しかも、既に回復し終わっていた。
「回復魔法を『圧縮』しました。これでなんとかなりましたでしょう?」
髪をほどいてみると、すこし肩が引っ張られる感覚があるけど、痛むことは全くなかった。
「助かった!あとは任せた!」
「任されましたわ。あの魔獣をなんとかして倒して、私達の敵をとってくださいまし」
あぁ、そうか、コイツらは寝てたのかぁ…。
「残念ながら違ったよ。アイツは魔族だった」
「私も行きますわ」
「馬鹿抜かせ。一瞬でやられたお前達がなにを出来る?今お前が出来ることは、今にも死にそうなコイツらを助けることだろう?」
そう言って、ナタリさん、クアイちゃん、ラウクムくん、ほかの四班のメンバーの面々を指さす。
「…ッツ!」
今何分経った?そろそろ本当にヤバい。
「じゃあ!」
アーネの顔も見ずに走る。
駆けて数十秒、ナナキと魔族の姿が見えた。
魔族の身体はボロボロ、肩で息をしながらも膝をついていない魔族と。
血まみれで手足のない、余りにもむごい姿のナナキ。
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