大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

準備と怪我

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「みんな、準備はいいか?」
ガラガラガタガタと馬車を進めながら、みんなに考えを伝えて、最終決定をしていく。
屋敷は結構近くに見えて、正直、なんで俺達が逆に襲撃を受けなかったのか不思議で仕方がない。
「まず、一刻も早くアーネを発見、救出するために、また班を二つに割る。メンバー分けは…俺とそれ以外だ」
「おいレィア、アンタは死にたいのか?」
リーザが代表してみんなの言葉を言った。
「相手はあの魔族。いくら数が一人だと想定されても、こっちが一人で突っ込むのは馬鹿の所業だ。せめて私がついて…」
「魔族がどれだけ強いかなんて、身に染みてわかってるさ」
自分でも驚くぐらい低い声が出た。
「だから、この班割りなんだよ」
「ど、どういうことだい?」
「仮に、俺と誰か一人、残りの三人の班割りだと、確実に三人班の所が戦力不足になるだろう。そうしたら、そこの班は全滅必至だ。だが、俺の所に誰もつけなければ、最悪なんとか生き残れる可能性が生まれるからな」
「けどその場合アンタが!」
「俺なら大丈夫だ。俺は既に一回、一人で魔族を撃退しているし、今回も一人でなんとか切り抜けられるだろう」
その言葉に嘘はない。間違いがない訳では無いが。
それがわかったのだろう。その場を見ていなかったクアイちゃんやラウクムくんも、皆が息を呑むのが肌でわかった。
「それは…本当に?」
「あぁ、嘘じゃない。俺の三十近い戦技アーツを全力で使えば、何とか勝てたし、俺の体質と相まって、相手とは相性がいいしな」
適当にそう言っておけばバレないだろう。体質の事は…ラウクムくんが一人でうなづいてる。
が、反対意見を出したのはそのラウクムくんだった。
「レィアさん、それでも僕は反対だ」
「なぜ?」
「何故なら、レィアさんは全力で戦える身体じゃないから、だね」
そう言ってラウクムくんは俺の右腕を指さす。
「骨折、まだ治ってないでしょ?それにユーリアさんから聞いたけど、最近睡眠不足でフラフラなんだろ?なら、どうしたって『全力で』とは言えない」
冷静にそう言うラウクムくん。
「…ふむ」
なら、一芝居打つか。
「腕ならこの通り…」
そう言い、左手に銀剣を持ち、軽く、けれど軽すぎないように振り下ろす。
剣が振られた先には、俺の右腕が。
そのまま振られ、俺の皮膚、筋肉を伝い、骨へと衝撃が抜ける…が、俺の顔は一切歪んだりしない。
「治った。ついでに、睡眠不足ってのはユーリアの勘違いだ」
「…そんな、なんで」
実際は全く治っていない。
タネを明かすなら、表情筋を真顔のまま、一切動かさないようにコントロールしただけ。
激痛は普通に腕から発され、脳へと飛び込み、とびきりの警鐘を鳴らしたが、全く表情に出さない。
「という訳で、俺一人と四人班でいいな?」
その答えは、全員のやや呆れ顔が答えとして物語ってくれた。
「そうか、ではとりあえず、これを持っていてくれ」
ユーリアが俺に手渡したのは、一本の小瓶。
中には青と紫が入り交じったような色の液体が入っており、魔力を視ると、膨大な魔力が込められていた。
耳長種エルフの秘薬…万能薬エリクサーだ。聞いた事はないか?」
聞いたことはある。存在しない、夢物語の薬だと。
「私の手元には一本しかなくてな…お前が持っていてくれ。中身をかけるか、飲ませるかすると怪我と魔力が治る。それこそ、腕が千切れてようと繋げてしまえる程の効果だ。…まぁ、飲ませた方が交換は高いがな」
そういいながら俺に万能薬エリクサー押し付ける。
と、同時に衝撃。
理由?簡単だろ。
単にスレイプニルを屋敷の無駄にデカい門へ、ぶつけて無理矢理破っただけだ。
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